最近のお気に入り
(バックナンバー5)
CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。
=音楽関係
=書籍関係
=映像関係
BLACK GOLD:THE BEST OF SOUL ASYLUM
フォリナーのアンソロジーの興奮も冷めやらぬうちに、なんとソウル・アサイラムのベスト
盤が発売されてしまった。コロンビア移籍後の3枚のアルバム(『Grave Dancers
Union』『Let Your Dim Light Shine』『Candy From A Stranger』どれも
名盤!)からの曲を中心に、80年代のインディー・レーベル時やA&M在籍時の音源も
含み、尚かつアルバム未収録曲にチャリティーアルバムへの提供曲までも網羅した珠玉
の20曲入り。涙が出るほどありがたいアルバムだ。どうせここまでやるなら、編集盤
『ノー・オルタナティブ』に提供した「セクシャル・ヒーリング(御存知マービン・ゲイのカバ
ー)」も収録して欲しかったな。残念ながら未聴だが、この曲超カッコイイらしい。
ソウル・アサイラムの魅力といえば、Vo&Gのデイブ・パーナーの書く曲が素晴らしいの
はもちろんだが、とても暖かみを感じさせるサウンドもいい。田舎的土臭さと都会的洗練
が妙に同居した彼らの音を聴いていると、僕はすごく幸せな気持ちになれる。だからとい
って、今流行りの‘ヒーリングミュージック’などを連想して貰っては困る。ソウル・アサイ
ラムは今時珍しいオーソドックスで男臭いロックバンドであり、聴く者を癒すなんてことは
せず、高揚させるのだ。これぞ、古典的なロックバンドの姿である。どういうジャンルであ
れ、カッコ良くもなく、聴いてて興奮もしないロックバンドなんて、ロックじゃない!
ま、それはともかく、はっきりとルーツを感じさせないソウル・アサイラムの音楽には、70
年代のロックバンドたちと似た感触があり、その辺が僕をこのバンドに夢中にさせている
のだと思う。周期からすると、今年は新作が出るはずなのに、ベスト盤が出てしまったと
いう事で、もしかしたら解散?なんて不吉なことを考えてしまったが(なにせ前作売れな
かったし)、まだまだ続けて欲しいし、続けられるだけの才能はある。ロック不毛といわれ
、ヒップホップ系ばかりが幅をきかす現代のミュージックシーンに、数少ない真のロックバ
ンドとして鉄槌を下して欲しい、と僕は願わずにいられない。
NOTE 2000.10.12
光源/桐野夏生
面白い小説、とはどういう小説か。人によって意見は様々だろうが、僕の場合、登場人物
にとことん感情移入できる小説こそが面白い小説である。もちろん、ストーリーとかアイ
デアとか構成とかも重要なのだが、登場人物と一体になってのめり込んでいくことこそ、
小説の醍醐味である。
小説というのは面白いもので、フィクションであれ何であれ、作家の人間性というものが
色濃く出る。一人称だろうが三人称だろうが、書いた人の性格・嗜好・考え方などがにじ
み出てくるのだ。であるから、登場人物は作者の分身といって他ならないのであり、その
登場人物に感情移入出来ない場合、その作家と僕は相性が悪いのだ、と僕は思ってい
る。名前は出さないが、確かに面白いんだけど、どうものめり込めないという小説を書く
人がいて、それは僕との相性が悪い訳であり、その作家と僕はおそらく私生活でも仲良く
なれないだろう(実際には会うことすらないだろうが)。
で、この桐野夏生の直木賞受賞後長編第一作(と帯には書いてある)である『光源』、
これは面白い。とにかく登場人物の気持ちに同化して読んでいる。のめり込める小説だ
。ストーリーはある低予算の映画制作現場で展開する。プロデューサー、新人監督、カメ
ラマン、スター俳優等々それぞれの感情が場面ごとに語られ、物語は進行していく。筋自
体はそれほどすごいとは思わないが、登場人物各人の思いがダイレクトに伝わってきて
、すっかり自分もなりきっている。いや、ほんとに面白い。ある雑誌の書評によると、この
『光源』はかなり斬新な手法を用いた実験的小説なのだそうだ。そんなことは僕には分か
らないが、とにかく面白い。
桐野夏生も好きな作家の一人なので、本書以外にも色々読んでいる。一番のお薦めは
『天使に見捨てられた夜』でしょうか。
NOTE 2000.10.4
FOREIGNER ANTHOLOGY:JUKE BOX HEROES
ついにフォリナーのアンソロジーが発売となった(アメリカでは既に発売されてたらしい)
。今さらフォリナーなんて、という人も多いだろうが、かつては出せばヒット連発、ヒットメ
ーカーの名を欲しいままにしたバンドである。全シングル曲を網羅したこの2枚組アンソ
ロジーが悪かろうはずがない。非常に質の高い楽曲が多く、内容の濃い物になっている
のは至極当然のことなのである。
このCDは、直輸入盤にブックレットの日本語訳を付ける、という体裁になっているのだ
が、このブックレットに載っているミック・ジョーンズが語るバンドの歴史がまた興味深い
。長くバンドをやっていれば必ず出てくるであろう、メンバー間の確執なども詳しく語られ
ており、各人バラバラの状態でアルバムを製作したりしていたようで、その辺は妙にプロ
らしくて感心したりする。また、ミック・ジョーンズは他のメンバーの事にはほとんど触れ
ず、ルー・グラムの事ばかり喋っているので、この二人の結束の固さを改めて認識した。
なんとなく、B’zを連想してしまったのは僕だけでしょうか?(笑)
収録曲は全部で39曲と結構なボリュームである。前述のように、シングル曲は全て網羅
しているので「蒼い朝」「女たち」といった今までのベスト盤からは省かれていた曲も収録
されているのが嬉しい。『Unusual Heat』や『Mr.Moonlight』など、おそらくファン
の間では無視されているであろうアルバムからもしっかり曲か選ばれているあたり、正に
コンプリートな内容である。ミック・ジョーンズ、ルー・グラム各々のソロアルバムの曲もあ
り、熱心なファンも満足だし入門者用にも最適。初期の曲などは親しみやすい曲調と共
に幅広い音楽性を内包しており、今聴いても色褪せていない。とにかく、“買い”である。
昔のバンドが続々と脚光を浴びている今、アンソロジー発売を機にフォリナー再評価の
気運が高まることを期待したい。彼らはまだ現役なわけだし。メロディも分かりやすく、サ
ウンドもハードだし、B’zやシャム・シェイドあたりが好きな人なら、絶対フォリナーも受け
入れてもらえると思うのだが。ネットで見てても、フォリナーのファンは比較的年齢層が高
いので、もっと若いファンを増やしたいものだ。
NOTE 2000.10.1
MUSIC/MADONNA
マドンナの約2年半振りの新作、まずはジャケットに目がいく。カウボーイのような格好を
したマドンナが写っており、ブックレットの中にもそのカウボーイみたいな姿で干し草の上
に寝そべるマドンナの姿があったりして、なんか西部劇風だ。その写真のマドンナが仲々
いい表情をしており美しい。前作『レイ・オブ・ライト』のマドンナの写真も大層美しかった
が、マドンナの写真を見て美しいと思ったことなどなかったので、ちょっと意外である。や
はり母になると女は変わるのだ。ちなみに、今回のウェスタン・スタイル、ロンドンのゲイ
ピープルの間で注目のアイテムということである。
マドンナはデビュー以来、ダンス系を中心に自分の音楽に流行を素早く取り込み、常に
最先端を歩んできた。音楽だけでなく、その歌詞、ファッション、ビデオクリップをはじめと
するビジュアル、時には自らの言動などをも巻き込んでトータルなマドンナのイメージを
作ってきた訳で、そういう意味では純音楽人ではない。しかし、その時点で最も旬なプロ
デューサーと組んで作ってきたその音楽は、非常に質が高く、ただ流行に敏感などという
だけでない、その時の空気を読む能力というのはもっと評価されてもいい。今回の
『MUSIC』ではミルウェイズと組み、ダンスナンバーに新境地を開いたような感がある。
とにかく、40を過ぎ、2児の母になっても相変わらずカッコいい人なのだ。
それにしても、マドンナの活動は精力的だ。90年代も、2年に一度のペースでオリジナ
ルアルバムを作り、合間にシングルを出し、サントラなどに新曲を提供し、映画に出演し
、子供を生み、と休む間もなく活動し続けている。マドンナのようなアーティストの場合、
常に世間にその姿を見せ続けなければならないのではあるが、やはり本人のあふれ出
るアイデアがそうさせるのだと思いたい。今後もその活動ペースを維持して、ファンを楽
しませて下さい(笑)。
NOTE 2000.9.24
探偵の秋あるいは猥の悲劇/岩崎正吾
以前ここでも「探偵の冬あるいはシャーロック・ホームズの絶望」を紹介した岩崎正吾の
作品である。「探偵の冬〜」の前作にあたるそうだ。そして、これがまた面白いのである。
あっという間に読んでしまった。
シャーロック・ホームズ物と同じく、本歌取りというやつで、この「探偵の秋〜」の本歌は
エラリー・クイーンだそうだ。告白すると、僕はエラリー・クイーンを全く読んだことがない
のだが、本歌を知らなくても十分面白い。知ってれば、もっと楽しめるのだろうけど。
地方の旧家で資産家の老人が自殺し、残された遺書がとんでもない内容で、遺産を狙う
骨肉たちがあれあれと策略をめぐらす中で、殺人事件が起こる、というのがあらすじ。本
格推理にはありがちなシチュエーションだが、この岩崎正吾の場合僕が感心してしまうの
は、登場人物が大勢いる割には人間関係などがすっきりと頭に入ってくること、昨今の新
本格と称する作家たちにありがちな蘊蓄を並べ立ててページを消費することを一切しな
いことである。大した力量を持つ作家だと思う。人物造形とかも見事で、飽きさせない。と
にかく、ややこしく混乱しやすい題材をここまで読みやすくまとめ上げるなんて、昨今の
新本格の連中には到底真似出来ないだろう。おそらく、世間には知られていない人だと
思うが、恐るべき作家だと思う。
という訳で、またこの人の本を探して読もうと思う。けど、その前に本歌のエラリー・クイ
ーンの『Yの悲劇』を買ってきた。本歌が読みたくなる、ということはそれだけこの作品が
魅力的だということだ。
NOTE 2000.9.21
神鳥−イビス/篠田節子
唐突だが、これ、すごい小説だと思う。明治時代に描かれた幻の鳥・朱鷺の絵に魅せら
れた“落ち目の流行作家(男)とワンパターンに陥ったイラストレーター(女)”が、その絵
が描かれた背景に迫ろうと調査を続けるうちに、その裏に隠された秘密に気づき始める
。そして二人はこの世のものとは思えない恐怖の体験をする、という言ってみればホラー
小説である。絵にかくされた秘密とは? 恐怖の体験とは? という核心に触れる部分に
ついては、もちろん言及しないが、とにかく本当に怖い。また、その怖さが恐怖の体験後
も二人を蝕んでいくのである。一応、最後は希望を提示して終わるのだが、こういうホラ
ーもあるのかと改めて知らされた気がする。とにかく、すごい。
篠田節子の作品は時々思い出したように買ったりするのだが、仲々面白い。「神鳥」もそ
うだが、専門的な知識をあちこちにちりばめながら一気に読ませる技量は、さすが直木
賞作家。今までに読んだ中では、時ならぬ日本脳炎の発生にパニックになるベッドタウン
を描いた「夏の災厄」がベスト。お薦めです。
NOTE 2000.9.19
GREATEST HITS/HEART
早いもので、ハートもデビューしてから25年近くになる。立派な大ベテランだ。アンとナン
シーのウィルソン姉妹(デビュー当時は美人姉妹ということで、音楽誌のグラビアを賑わ
せていたものだが...)を中心に結成され、カナダのインディーレーベルからデビュー、
評判を呼んでメジャーのエピックと契約、人気バンドとなるもその後様々な紆余曲折が
あり(音楽面での行き詰まりもあったが、大半はバンド内の男女関係のもつれが原因らし
い)、80年代に入ってからキャピトルに移籍、大ヒットを飛ばし名実ともにアメリカを代表
するバンドとなった。そして今でも現役である。ここに紹介する「グレイテスト・ヒッツ」は
ハートのエピック在籍時代、つまり70年代のヒット曲を集めたものだ。最近、同じハート
のタイトルも同じアルバムが発売されたが、こちらはキャピトル時代のヒット曲を編集した
ものである。
個人的好みだが、ハートはやっぱり70年代の頃の方が良い。80年代にベストセラーを
連発したハートは、要するに産業ロックバンドであり、外部のソングライターの曲を演奏
するだけのバンドだった。シカゴ、スターシップらと同じ転向組だ。別に悪くはないのだが
、アン・ウィルソンのボーカルがなければその他大勢のバンドたちと大差ない。それに
比べ、70年代ハートのなんとカッコいいことか。迫力たっぷりのアンのボーカルはもちろ
ん、歌以外の部分での聴かせ所もたっぷりで、バンドとしての魅力に溢れている。時折
アコースティックな展開を見せたりするのもハートならではの個性が感じられる。技術的
には特筆すべきものはないと思うが、オリジナリティは申し分なし。女性ボーカルがいる
バンドは是非コピーしてみては如何だろう。そんな気にさせるだけのカッコ良さは十分だ
。それだけに、唯一の新曲として収録されているダイアン・ウォーレン作のバラードはい
かにも80年代的コテコテサウンド、という感じで場違いだ。入れない方がよかったと思う
。
決して今まで高い評価を受け続けてきたバンドではないが、それでもこれだけの物を
作っていたという所に70年代ロックの奥深さを感じる。80年代のベストと聴き比べてみ
るのも面白いかも。
NOTE 2000.9.12
上々颱風 8
先日、店頭ライブを見た上々颱風の3年振りとなる新作。去年メジャーとの契約が切れ、
レーベルを発足させての第一弾だそうだ。そしてこれが、素晴らしい内容である。ほとん
ど上々颱風を聴いたことなかったのに、一気に愛聴盤になってしまった。
音的には、民族音楽っぽいリズムに歌謡曲風のメロディが乗っている、という感じでまさ
しく日本のバンドならではのスタイルである。ボーカルが2人いるのだが、沖縄音楽特有
のあのハモリが随所で聴かれ、エキゾチックなような妙に慣れ親しんだような、不思議な
感覚にとらわれそのまま最後までアルバムを聴いてしまう。8ビートのロックに慣れた耳
には、むしろ斬新にすら聞こえる。いや、とにかく素晴らしい、カッコいい。
こういう風に書くと、難しそうに聞こえるが、上々颱風の音楽は決して難解ではない。曲も
親しみやすく演奏力も高く、しかも年齢・性別・人種など関係なく幅広い範囲の人に受け
入れられる懐の深さがあるように思う。前述の文章はちょっと評論家ぶって、カッコつけ
て書いてみただけです。ほんと、聴きやすくていいですよ。自信をもってお薦めします。
僕などにはいかにも沖縄って感じのする「ハラホロの涙」なんて名曲だ。また、アース、
ウィンド&ファイアの曲を日本語でカバーした「FANTASY」なんて、クレジット見るまで
あの曲だとは気づかなかったくらい上々颱風の色になっている。
う〜ん、とにかくいい。何度も言います。名盤です。
NOTE 2000.9.9
THERE IS NOTHING LEFT TO LOSE/FOO FIGHTERS
『ミッション・インポッシブル2』のサントラでブライアン・メイと共演していたので、フー・
ファイターズに興味を持って聴いてみたらこれが仲々良い。中心人物のデイブ・グロール
という人はあのニルバーナのドラマーだった訳だが、ここではギターとボーカルを担当し
ている。結構器用な人なのだな。まあ、ニルバーナにはあの伝説のカリスマ、カート・コバ
ーンがいたのだからギターなんてやらして貰えなかったのだろうけど。
ま、当然のことながらニルバーナのイメージとは違い(といっても、僕はニルバーナはろく
に聴いた事ないのだが)、80年代から90年代にかけてのイギリスのギターポップバンド
のような雰囲気がフー・ファイターズには感じられる。アメリカのバンドとは思えないような
音だ。テイブ・グロール一人によるギターもボーカルも変幻自在ですごくいいし、曲もカッ
コいい。思わずコピーしたくなるようなバンドサウンドもよろしい。今後要チェックのバンド
になりそう。意外な収穫だった。
NOTE 2000.9.2
tears/Fayray
これを見ている人の中には、僕の事を個人的に知っている人も多いだろう。そういう人達
なら御存知だが、僕は美人に弱い(笑)。で、正統派美人歌手であるFayrayのことは2
年前にデビューした頃から気になっていた。皆さん御存知の通り、彼女は浅倉大介のプ
ロデュースでデビューした訳だが、今年に入ってからセルフプロデュースで作品を出して
いる。去年出た1stアルバムでも、自作曲を収録したり自らピアノを弾いたりしており、シ
ンガーソングライター志向の強い人だったのである。ここで紹介する「tears」もカップリ
ング曲含め、Fayrayの自作である。
大変オーソドックスなバラードである。新しさが何も感じられない、と言う人もいるだろう
が、良いメロディを無駄のないアレンジで聴かせており、やたら奇を衒ったりしない創作
姿勢には共感が持てる。こういう正統派タイプは昨今のJ−POPにおいては仲々苦戦を
強いられると思うのだが、この曲は結構売れているようで喜ばしい。今後もこのスタンス
で活動していって欲しいものだ。若い娘たちの教祖になんてならなくてもいいから。
しかし、Fayrayって妙な芸名だよな。最初聞いた時、中国の人かと思った。美人だけに
最近は女優業も忙しいようだが、本業でも頑張って欲しい。
NOTE 2000.8.31