最近のお気に入り
(バックナンバー7)

CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。

MUSIC=音楽関係 BOOKS=書籍関係 MOVIE=映像関係



 MUSICRED DIRT GIRL/EMMYLOU HARRIS
     エミルー・ハリスって一体いくつになるのだろう。確か、グラム・パーソンズと一緒に
     活動を始めたのが70年代初頭だから、キャリアはかれこれ30年、当時20歳だったと
     して現在50歳か...しかしジャケットの彼女はとても美しく、20代とは言わないがまだ
     40歳くらいにしか見えない。昔から美人歌手として有名だったけど、その美貌がまだ
     衰えていない事には驚いた。
     という訳で、エミルー・ハリスの新作である。久々のアルバムかと思ったら、彼女は
     コンスタントに活動を続けていて、この新作は2年振りだとのこと。不勉強を恥じ入った
     次第である。
     で、これがとても素晴らしいのだ。デビュー以来ずっとカントリーのフィールドで活動して
     いた人だが、この新作で聴かれるのはアコースティック・サウンドと打ち込みによる
     暖かくて静謐な音世界。エミルー・ハリスのやや鼻にかかった美しい声が優しかったり、
     蓮っ葉に聞こえたりと変幻自在。ちょっとした節回しやハーモニーにカントリーっぽさが
     感じられ、やはり根っこにはカントリー・ロックがある人なのだと改めて思ったりする。
     フィドルやペダル・スチールが出てこなくても、ここでのエミルー・ハリスの音楽はカント
     リーであり、表層が変わっても中味は変わることはないのだ。確かに、ブックレットにある
     ‘オルタナ・カントリー’という言葉がしっくりくる。
     そのブックレットによると、エミルー・ハリスはしばらくカントリー・ミュージックの総本山
     ナッシュビルで活動していたが、数年前その閉鎖的な社会から飛び出してダニエル・
     ラノワのプロデュースでアルバムを作り、それ以降新時代のカントリー・ロックを追求し
     続けているらしい。まだまだ新しい事をやろうとする姿勢が素晴らしいではないか。次は
     そのダニエル・ラノワのプロデュースによるアルバムを探して聴いてみよう。

NOTE 2001.2.5



 MUSICFOREIGNER TRIBUTE(VA)
     フォリナーのトリビュート・アルバムが発売された。90年代前半にやたらとトリビュート・
     アルバムが出回った時があり、現在はそのブームは鎮静化したがレコード屋で見てる
     限り、HR/HMの世界では相変わらず様々なアーティストのトリビュート盤が出ている
     ようだ。このアルバムも、御多分にもれずHR/HM系ミュージシャンによるもので、
     ハートランド、ディパーチャー、チェンジ・オブ・ハート等々全然知らないバンドの人たち
     が参加している。
     で、中味の方はというと、これが意外といいのである。収録曲は「ダブル・ビジョン」
     「つめたいお前」などフォリナーの有名なヒット曲ばかりで、ほとんどが原曲のまま演奏
     されている。カバーというよりフォリナーをコピーしたアマチュア・バンドみたいで、
     大好きなフォリナーの曲を演奏出来て嬉しくて仕方がない、という雰囲気が伝わってきて
     こっちも楽しくなってきてしまうのだ。僕もバンドやってるんで少しは理解出来るけど、
     好きなアーティストの曲を演るのって本当に楽しいもんね。
     そういう訳で、フォリナーのファンなら仲々楽しめるアルバムだ。某音楽評論家が
     「トリビュート・アルバムというものは、ただ好きなアーティストの曲をカバーすれば良い
     というものではなく、そのアーティストへの敬意と共に、そこから受けた影響を現在の
     自分達がどのような形で消化し血肉化したかを表現出来ていなければならない」なんて
     事を言っていたが、そんな難しい事はどうでもいい。演ってて楽しいかどうかが一番大事
     なのだ。

NOTE 2001.1.26



 BOOKS悪意/東野圭吾
     こちらも最近文庫化されたもの。毎度のことながら、ストーリー、人物造形のみならず
     構成にまで凝っていて、さすが東野圭吾という傑作である。
     人気作家が殺され幼なじみでやはり作家の男が犯人として逮捕される。彼は容疑は
     認めるものの動機については語ろうとしない。で、東野作品でお馴染みの加賀刑事が
     調査を進めるうちに以外な事実が明らかになり、そして二重三重のどんでん返しが
     待っている、というのが大体のあらすじ。この手の小説を紹介する時の常として、詳しく
     内容について触れる事が出来ないのがもどかしいが、少しだけ触れておくと、この小説
     は犯人及び加賀刑事が書いた手記または日記を交互に見せる形で進んでいく。ここが
     ポイントなのだ。一人称や三人称の小説と違い、手記という形をとる事で仲々巧妙な
     トリックを作者は仕掛けているのである。物語の最後の方で、加賀刑事が犯人に
     向かって「あなたのトリックに我々はまんまと引っかかってしまいました」と言う場面が
     あるが、加賀刑事のみならず読者も引っかけられているのだ。ここいらの素晴らしさ
     は、やはり実際に読んでいただくしかないだろう。
     まあ、とにかく読み出したら止められなくなる事は間違いないので、徹夜覚悟で、
     出来れば休日の前の晩に読まれる事をお薦めする(笑)。

NOTE 2001.1.25



 BOOKS錆びる心/桐野夏生
     最近文庫化された桐野夏生の短篇集。人間の心に潜む闇、というか心の裏側というか、
     本人は気づかない心(性格)の中のイヤな部分をテーマにした短篇が6編、どれも秀逸
     である。
     僕が特にいいと思ったのは、恋する女性の甘美な妄想を描く「虫卵の配列」、自分の
     人生に満足していない中年男の昔の恋人との恋愛の意外な顛末「羊歯の庭」、酔うと
     豹変する男が徐々に自分の醜態を知る「ジェイソン」、夫への復讐の為夫の誕生日に
     家出することを10年かけて計画し実行する専業主婦の話「錆びる心」あたり。いずれも
     劇的なストーリー展開はないものの、巧みに意外な結末まで引っ張られてしまう素晴ら
     しい作品ばかりである。ある意味ではヘビーかもしれないが、一読をお薦めする。
     所で、冒頭に書いた文章、この文庫本の解説に書いてあることとほぼ同じである。決して
     真似したのではない。読み終わって解説を見たら、自分の感想と全く同じ事が書いて
     あったので、少し引用させて頂いた。文芸評論家の人と意見が一致するなんて、こういう
     事も珍しい(笑)。

NOTE 2001.1.11



 MUSIC4FLUSHER/スガシカオ
     スガシカオに関しては腺病質なフォーク系シンガーソングライター、という印象があった。
     それは風貌のせいかもしれないし、打ち込みを多用しレコーディングはほとんど自分
     一人で行うという話を聞いていたせいかもしれない。彼の名前が一般にも知られるよう
     になったのは、やはりSMAPの「夜空ノムコウ」からだろう。僕もその一人なのだが、
     同じSMAPがカバーしたスガシカオ作品「リンゴジュース」を聴いてブッ飛んでしまった。
     凄い曲だ、と思ったのだ。大して長くない曲の中に、情景がありドラマがあり心理描写が
     ある。この人はただ者ではない、今後要チェックだ、などと思いつつ最近になってようや
     くスガシカオのCDを買った。それがこの『4FLUSHER』である。
     やはり、ソングライターとしては大変な人だ、この人は。テーマは様々だが、ただ意味も
     なく言葉を並べたり勝手に自己完結してしまったりするのではない、歌でありながら小説
     のようでもあり、また詩でもある。音楽的にはブラックミュージックの影響が強いが、楽曲
     が独自の世界を形成してしまっている為気にはならない。難しい言葉は使わず、それで
     いて独特の雰囲気があり、聴き手がいかようにも想像できる柔軟性もあり、うまく説明
     出来ないのがもどかしいが、とにかくやたら説教されているような歌や、作り手の自己
     満足のみで終始している歌が多い中、こういう歌が作れるスガシカオは貴重な存在だ。
     癒しだの自分探しだのといった陳腐なキーワードを嘲笑うかのような悪意(痛快だ)を
     感じさせたりもする。こういう人がメジャーにならなければJ−POPに明日はない、と
     すら思えてしまう位だ。
     とにかく、憑かれたようにこのアルバムを聴きまくっている昨今なのである。

NOTE 2001.1.5



 MUSIC恋愛レボリューション21/モーニング娘。
     相変わらずだなぁ、モー娘。はというか、つんくは。こういう楽しくて下世話な感じという
     のは、他のJ−POPの連中には絶対真似出来ないだろう。なんたって、彼らは“アー
     ティスト”なのだから。これに対し、モー娘。は歌謡曲である。華やかだけど作り物めいた
     、だけど細かく計算が行き届いているサウンド、妙にポジティブ(なだけ?)な歌詞、CD
     だけでなくビジュアルも連動して初めて完成品となる世界、全てこれアイドル歌謡の
     常套手段である。しかも、ごく少数の愛好家にのみ受けているのではなく、マスを取り
     込んでしまっている所が、現在においてはすごいのだ。
     まあ、モー娘。をアイドルと呼んでいいのかどうかは意見の分かれる所だろうが、彼女
     たちの在り方がアイドル歌謡そのものである、という事は間違いなかろう。この曲も
     「LOVEマシーン」以降続いているディスコ物というか、宴会ソングというか、とにかく
     バカバカしくて良いではないか(褒めてるのだ!)。以前の青春歌謡路線もよかったが。
     編曲はダンス★マンが担当しており、この手のディスコサウンドには欠かせない、オク
     ターブで動いていくベースライン(ンボッンボッンボッンボッってやつ、分かるかなぁ?)が
     僕などにはたまらない。大人数であることを最大限に生かしたボーカルアレンジも見事。
     ということで、しばらくはこの曲で盛り上がろうと思う。大晦日のNHK紅白歌合戦も、
     モー娘。の出番だけは見るつもりだ(笑)。

NOTE 2000.12.30



 MUSICCHOCOLATE ST★RFISH AND THE HOT DOG
   FLAVORED WATER/LIMP BIZKIT
     この夏公開された『ミッション・インポッシブル:2』のテーマ曲を担当し、日本でも人気
     上昇中のバンドである。このアルバムは彼らにとって3枚目にあたるそうだ。既にアメ
     リカでは、トップバンドとのことである。
     初めてアルバムを聴いてみた訳だが、仲々いい。要するに最新型のロックバンドと
     いっていいだろう。ヘビーメタル、パンク、そしてヒップホップの要素が無理なく混在し、
     音の感触はデジタルだが、ストレートに肉体に訴えかけてくる。僕のような古いタイプの
     ロックファンには若干の抵抗を感じる部分もなくはないが、そういう人間をも理屈抜きで
     ねじ伏せてしまうパワーとカッコ良さがあり、ニュータイプとはいえロックバンドの本質と
     いうものは変わってないのだ、と実感した。おそらく、僕が中学生の時にこのバンドを
     聴いてもカッコ良い、と感じただろう。かつて、70年代のティーンエイジャーのストレス
     発散というかカタルシスの役割を果たしていたのがハードロックだったが、今のティーン
     エイジャーにとってあの頃のハードロックと同じ機能を持つのが、こういうリンプ・ビズ
     キットみたいなタイプのバンドなのだろう。ならば、当時ティーンエイジャーだった僕が
     このアルバムに爽快感を覚えるのは当然といえる訳だ。
     そういえば、長く聴いてると次第に疲れてくる所も往年のハードロックに共通している
     かな(笑)。

NOTE 2000.12.29



 MUSICLOVE LIFE/hitomi
     金メダルの高橋尚子選手効果か、暮れの紅白歌合戦にまで出場が決まってしまった
     hitomiのニューアルバム。ジャケットにばかり目がいきがちだが(笑)、どうしてどうして
     良い出来である。小室ファミリーから離れてサウンド面の模索を続けてきたが、それが
     一応の完成をみた、という感じ。デジタルな手触りのグランジ風サウンドは、うるさ型の
     ロックファンをも納得させるに十分だろう。
     hitomiの場合、デビューから5年、オリコンアルバムチャートで一位を獲ったりした事も
     あるのに、今いちメジャー感が薄かった。元モデルだという容姿、早くから自分で歌詞を
     書いていた、等々昨今のJ−POPで女性シンガーが成功する為の要素は備えている
     のにもかかわらず。あまり生々しいインサイドストーリーみたいなのがなかったからかも
     しれない。ま、それと昔からかなり洋楽寄りのサウンドで、ややマニアックに聞こえたかも
     、というのもあるが(小室ファミリー時代のhitomiの音は、今のようなグランジ風では
     なく、ブラコン風だった)。しかし、それもこの『LOVE LIFE』で払拭されるだろう。これ
     までのhitomiのアルバムの中ではベストといっていいし、世間の追い風もある。ついで
     に写真集も同時に発売されたし(笑)。渋谷の巨大ポスターも話題になった。やっと一
     人前として、認知される時が来たようだ。
     以前からいわゆる‘かわいこちゃん’歌手みたいなイメージはなく、あの生意気そうとい
     うか、鼻っ柱強そうというか(笑)、そんなルックスと蓮っ葉な感じのする歌い方が僕は
     結構気に入っていた。歌詞にしても、メッセージを発信したり、リスナーの心情を代弁し
     たりしたりとかはせず、自分の好きなように書いている、という感じもいいと思う。少し
     タイプは違うがPUFFYあたりとも通じるのではないか、この自然体は。良くも悪くもマイ
     ペースで今後も活動を続けるのだろうが、教祖だのファッションリーダーだのになったり
     せず、やや引いた位置でシニカルに歌う存在であり続けて欲しい。

NOTE 2000.12.22



 MUSICYOU’RE THE ONE/PAUL SIMON
     ポール・サイモンが帰ってきた! 純然たるオリジナルアルバムとしては10年振りだ
     そうだ。この間に手掛けたブロードウェイミュージカル『ケープマン』が失敗に終わり
     (音楽的評価は高かったらしい)、20年前の映画『ワン・トリック・ポニー』と同様、本業
     以外ではどうもうまくいかないポール・サイモンだが(ちなみに映画のタイトルにもなった
     ‘ワン・トリック・ポニー’とは一芸しか能のない子馬、という意味らしい。初回プレスに
     ついてくるブックレットに書いてあった)、この10年ぶりの新作のなんと素晴らしいこと
     か。ポール・サイモンには悪いが、本業以外での挫折がこんな素晴らしい作品を生み出
     すのなら、ミュージカルでも何でもどんどん手を出して失敗して欲しい、なんて思ってしま
     う(笑)。それぐらい素晴らしいのだ。
     静謐な雰囲気で始まる一曲目「魂の帰る場所」(余談ながらこのアルバム、日本語タイ
     トルのついている曲が多い。近年では珍しい)から既にポール・サイモン特有の優しさに
     満ちている。この包み込むような優しさがたまらない。人間の強さも弱さも知り尽くした
     上での優しさ。そして、気品に溢れた歌詞世界も健在。音の方も、かつて色々批判され
     ながらもワールドミュージック的アプローチを試みていた頃の経験が見事に生かされて
     いる、と言っていいだろう。過去のイメージはそのままに、もうすぐ60になろうという今で
     もミュージシャンとして絶え間なく成長し続けるポール・サイモンの姿がここにはある。
     おそらく、大して話題にもならないのだろうが、ワーナーもあれこれオマケをつけたりし
     てキャンペーンに励んでいるようだし、是非皆に聴いて欲しい。古くからのファンはもち
     ろん、ポール・サイモンを知らない世代にも説得力十分だ。
     ジェフ・ベックの時もそうだったが、こうしたベテランの素晴らしい作品を聴くと、音楽を
     ロックを聴き続けてきて良かったと思わずにいられない(あれ、どっかで書いたかな?)

NOTE 2000.12.18



 MUSICSPIKE/PUFFY
     テレビですっかり‘テンション低い’キャラが浸透してしまっているPUFFYだが、確かに
     そのやる気のなさそうな、だけど決してバカではないキャラクターは面白い。僕は好きで
     ある。この新作もそんなPUFFYの魅力全開、決して力は入ってないようでも、すうーっ
     といつの間にかこちらに入ってきていて、気がつくとすっかりハマっている。で、仲々
     逃れることは出来ないのだ。
     デビュー時は奥田民生の少々マニアックな音楽的実験所のような趣があったが、そう
     いった雑多な音楽性を素材として自分たちの中に取り込んでしまうあたり、やはり彼女
     たちは非凡なのである。カリスマや教祖と崇め奉られる女性アーティストの多くが、その
     作られたイメージに捕らわれ脱却できなくなって潰れていく中、来る者は拒まずと言わん
     ばかりの(一見ポリシーがないかのような)PUFFYの姿勢の方が、実はずうーっと自然
     体なのだ。全く、奥田民生にとっては正に同類、これほどやりやすい事はなかったろう。
     奥田民生の操り人形のように思っている人も多いだろうが、この『SPIKE』では全13曲
     中8曲までがPUFFYの作詞であり(亜美と由美がそれぞれ単独で書いたものも含む)、
     作られたかのようなPUFFYのイメージが、実は彼女たち自身によるものであった、
     という事に驚く人は多いだろう。彼女たちは自身をプロデュースするのに、必ずしも奥田
     民生が必要な訳ではなくなっているのである。それはもう、誰がプロデュースしようと
     ゆるぎないPUFFYの個性である。
     僕は今後もPUFFYを応援します。

NOTE 2000.12.14


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