最近のお気に入り
(バックナンバー11)
CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。
=音楽関係
=書籍関係
=映像関係
genuine/Fayray
Fayrayとしては通算3枚目、自作自演のスタイルになってからは2枚目にあたる
アルバムであるのだが、これが実に出来が良い。彼女が単なる美人歌手ではなく、
ソングライターとしてもサウンドクリエーターとしても、そしてシンガーとしても素晴らしい
センスの持ち主であることを証明する力作といっていいだろう。
オープニングの「Walk on」のアーシーな雰囲気にまず驚かされる。この曲が一曲目
に置かれているだけでアルバムの印象がかなり変わってくる。全体的にはシングルにも
なったミディアムなポップソングが中心のアルバムなのだが、もっとアメリカン・ロック的
な感触を感じさせたりするのだから、アルバムにおける曲順は大事なのだ。生かすも
殺すも曲順次第。そんな事を改めて感じた。
その他、ドラムのみの伴奏でブルースっぽい曲を歌ってみたり、10分を越える組曲風
の曲があったり、様々な試みがなされていて飽きさせない作りになっている。バラードに
しても決して感傷的になっておらず、これは無駄な音を極力省いたアレンジにも依る所
が大きいと思う。佐橋佳幸という強者がバックアップしているせいだろう。良い曲を用意
し、アルバムのコンセプトもしっかりしていて、尚かつこれ以上ないプロデューサーの
人選と、Fayray仲々やるもんだ。
余談ながら、僕の中ではFayrayとhitomiが何故かダブってしまう。共に大物プロデュー
サーのバックアップを受けてデビューしたものの、同ファミリーの人にはセールス面で
水を空けられ、そのせいか早くから自作志向に向かい、今ではすっかり自立して自分の
音楽を追求している、そんな所が妙に似ているように思うのは僕だけだろうか。しかも、
二人共モデルか女優かというルックスを誇る所も共通しているし(笑)。
ま、とにかく、Fayrayはこのアルバムでミュージシャンとしてさらにステップアップした。
今後の発展に期待してます。
最後にあまり関係ないけど、Fayrayの公式サイトを覗いてみたら、ディスコグラフィー
からデビュー時の浅倉大介プロデュースのCDが削除されていた。やはり、色々ややこし
い事情があるのだろうか?興味のある人は是非アクセスしてみては。URLは
http://www.fayray.netです。
NOTE 2001.11.10
THE VERY BEST OF JETHRO TULL
あのジェスロ・タルのリマスター・ベストなのである。デビュー以来30年、まだ現役で
頑張っているそうだ。積極的にツアーも行っており、新旧取り混ぜたセットリストは熱心
なファンに大変好評だとのこと。一時代を築いたベテランバンドが、時流に流されたり
懐メロバンドに成り下がってしまったりせずに、こうして活動を続けているというのは
ファンでなくても実に喜ばしいことである。
実は、僕はこれまでジェスロ・タルの音楽を聴いたことがなく(かなり前から興味は
持っていたが、機会がなかった)、このベスト盤が初めてである。で、聴いてみて驚いた。
実に素晴らしいのだ。流行りの音ではないが、古い曲も最近の曲も違和感なく聴けて
ちっとも古臭くない。ブルース・バンドとして出発しながらも、多彩な音楽性でジャンル
分け不能なジェスロ・タル独特の音を確立したのだが、クラシカルでもありトラッド風あり
ハードな曲もあるしプログレッシブな展開を見せたりもする。もちろん、初期の曲は
かなりブルース臭が強い。ジャズ的要素の強いインスト曲もある。これだけ色々な事を
やってみせたバンドは、そうないのではないだろうか。しかも、どれも企画倒れに
終わったりせず、完成された音楽として提示されているのがとにかく凄い。前述したよう
にタイプの異なる曲でも、並べて聴いても違和感ない訳だし。褒めてばっかりだけど、
本当に素晴らしいのだから仕方がない(笑)。
今まで聴いた事なかったのに、ベスト盤一枚ですっかりジェスロ・タルにハマってしまった
僕としては、今後彼らのオリジナル・アルバムを片っ端から聴いていくつもりである。
欧米での人気ぶりに比べて、日本では今いちだったらしいが、決して難解な音楽では
ないし、きっと聴けば聴くほど彼らの虜になってしまうのだろう。それにしても、こういう事
があると、昔のバンド(特に70年代の)はほんとに凄かったんだな、と改めて思う。
NOTE 2001.11.7
THE VERY BEST OF PRINCE
考えてみると、殿下も立派な20年選手である。このベスト盤は彼が妙ちきりんな
シンボルマークに改名する前のヒット曲を17曲収録したもの。初のTOP40ヒットと
なった1979年の「ウォナ・ビー・ユア・ラバー」に始まり、「1999」「パープル・レイン」
「KISS」などなど、プリンスが正に80年代を象徴する存在であった頃の懐かしい曲が
楽しめるアルバムだ。ファンでなくても、買っておいて損はないだろう。
前述の「ウォナ・ビー・ユア・ラバー」が初めてTOP40に入ってきた時の事は今でも
覚えている。仲々良い曲だとは思ったが、まさか後々こんなスーパースターになるとは
思ってもみなかった。ビデオクリップをうまく利用して次々とヒットを飛ばし、マドンナと
共に80年代を代表するミュージシャンになってしまった訳で、名声も得たが失ったもの
も多かったのだろう。90年代に入ってからの凡人には理解し難い行動を見ていると、
時代に流されまい、自分を見失うまい、と必死になっているような気がして、気の毒な気
もする。天才にはやはり天才なりの悩みがあるのだろう。
ま、そんな事を思いながら聴いていると、珠玉のヒット曲たちがややもの悲しく聞こえたり
もする。決してプリンス自身はそんなこと意図していないだろうが、天才と呼ばれた男が
身を削るようにして生み出した曲には、やはりそれなりのドラマが潜んでいるものなのだ
ろう。う〜ん、奥が深い(笑)
プリンス、決してフェイバリットではないが、凄いヤツだ。
NOTE 2001.10.31
A KNIGHT’S TALE(OST)
この秋公開の映画(邦題は『ROCK YOU!』)のサントラ盤である。有名アーティスト
の既発表曲や新曲を集めた、近頃のサントラらしい内容だが、これが仲々楽しめる。
映画は見ていないのでここでは触れないが、サントラ収録曲の目玉は何と言っても
元テイク・ザットのロビー・ウィリアムスが歌うクイーンの「伝説のチャンピオン」だろう。
ファンとして、この曲はフレディ以外には歌えない曲だと思っているが、ここでのロビー・
ウィリアムスは仲々の熱演である。ハスキーでフレディとは声質も節回しも違うので、
却って良いのかもしれない。惜しむらくはバックのサウンドで、ブライアンとロジャーが
参加しているようだが、かなり本家風の音になってしまっていてコピーっぽい感じ。歌が
フレディとは違う雰囲気なだけに、バックもクイーン絡みではなく全く異なるアレンジに
してしまった方が良かったと思うのだが。
その他の収録曲もよろしい。トレインという新進バンドによるツェッペリンの「ランブル・
オン」のカバー、サード・アイ・ブラインドの新曲、そしてバックマン・ターナー・オーバー
ドライブ、シン・リジィ、レア・アース、ウォー、デビッド・ボウイなどの昔の曲が聴ける
のが嬉しい。特にBTOなんて、今は知らない人の方が多いだけに、感激だ。音質的にも
旧曲と新録が大差なく聴けるのも良い。入門者向けとは言い難い選曲だが、若い人にも
是非聴いて欲しいと思う。
80年代以降、既製曲を映画に使いそれをサントラ盤として発売するのがすっかり主流
となり、かつて映画(サントラ)ファンだった者としてはやや不満があるが、反面一度に
色々な曲が聴けるコンピレーションと同じと考えればお得であろう。サントラだけに、
コンセプトに基づいて選曲されているので、一応の統一感もあり支離滅裂な感じでは
ないし。昔のヒット曲で、現在は入手困難な曲も聴けたりする事もあり、オールド・ファン
からすると楽しみもある。ま、あんまりうるさい事を言わず、素直に楽しもう(笑)
NOTE 2001.10.14
SONGS FROM THE WEST COAST/ELTON JOHN
1997年の『ビッグ・ピクチャー』以来、4年振りのエルトンのオリジナル・アルバムで
ある。この間彼は遊んでいた訳ではなく、ピリー・ジョエルとツアーをし(日本にも来た)、
ミュージカル『アイーダ』をティム・ライスと共に手掛け、映画『ハリウッド・ミューズ』や
『エル・ドラド』のサントラを担当し、マジソン・スクエア・ガーデンでメモリアル・コンサート
を行い(ライブ盤が出た)、とかなり精力的に活動していたのである。だからあまり久々
という感じはない。しかし、待ちに待った新作には違いないのだ。
非常に待たされた感があるのは、その『ビッグ・ピクチャー』以降のエルトンの作品に
少なからず不満があったからだろう。どこか彼らしくないものを感じていたのだ。『ビッグ・
ピクチャー』も『アイーダ』も決して悪くはないのだが、単に良い曲を作る人、みたいに
なってしまっていて、エルトンが持ち続けてきた“ロック魂”のようなものが無くなっている
ように思えて仕方なかった。彼はメランコリックなバラードを作り歌うだけの人ではない
のだ。エルトンらしい新作を聴きたい、というのが僕だけなく、全てのファンの総意だった
のではないだろうか。
去年の『エル・ドラド』に久々エルトンらしさを感じ、期待していた所へこの新作である。
はっきり言って、かなり“らしい”作りだ。これは嬉しい。確かに、過去の傑作群と比較
してしまうと少々物足りなさも感じるが、『エル・ドラド』で起用したパトリック・レナードを
プロデューサーに迎え、今のエルトンが聴ける。ピアノを中心に据えたアレンジもいい。
バラードというかゆったりした曲が多いけど、ブルースもやったりしてる。そして、その
どれもがエルトンらしいメロディの佳曲揃いだ。エルトン・ジョンはまだまだ健在であり、
第一線で十分通用することをアピールしている。まだ彼は過去の大物なんかではない
のだ。
この新作について言いたい山ほどあるが(笑)、とにかく聴き応えのある傑作だとだけ
言っておく。まだそんなに聴いてないのだが、聴けば聴くほど味わい深い作品だろう。
このアルバムを引っさげての来月の来日公演が楽しみだ。
NOTE 2001.10.1
上々颱風9 〜心の花〜
前作から約一年ぶりの上々颱風の新作である。今回は、歌を聴かせる曲が多く、
ちょっと大人しめの内容であるが、その歌たちが珠玉のメロディ揃いで(特にタイトル
曲)やはり素晴らしい出来なのである。個人的には、前作に見られたようなバンド
サウンドを強調した曲をもっと聴きたい気もするが、それでもこのアルバムは良い出来
なので許す。
しかし、前作もそうだったが、日本発ワールドミュージックという古臭い言葉がピッタリ
当てはまる内容だ。単純なエイトビートはなく、土着っぽいリズムがカッコいい。ロッド・
スチュワートでお馴染みの「Sailing」のカバーもまた良い。「けもの道」でなんと演歌
まで登場するのには驚いた。しかも、違和感なし!「本気節」のラストのプログレ的展開
も意外。とにかく、飽きさせません(笑)
この素晴らしいアルバムを、少しでも多くの人に聴いて欲しいと願うのみである。
NOTE 2001.9.27
transition/山崎まさよし
久しぶりに山崎まさよしのCDを買ったのだが、相変わらず飄々とした語り口が
たまらない。アコースティック・ギターの弾き語りとはいえ、明らかにフォークとも
カントリーとも異なる、正にブルースとしか言いようのないサウンドもいい。彼のように、
ブルースを完全に血肉化し、尚かつ外人にはマネできない“日本語の歌”を作り上げて
しまうミュージシャンが出現してしまった事自体驚異であり、しかも売れているというのが
また凄い。なんだかんだ言っても、日本の音楽市場は健全ではないかと思える。しかも、
山崎まさよしの音楽にはよくありがちな洋楽コンプレックスのようなものが全く感じられ
ない。内から自然に湧き出てきたという雰囲気が感じられる。これもまた、凄い事だ。
全然本作の内容について触れていないが(笑)、基本は今までと変わらず、ブルースを
ベースに、ポップな曲、ファンキーな曲と縦横無尽だ。大衆音楽の根本にはブルースが
ある、という事実を改めて感じる。と言っても、難しく考えることはなく、何気に聴いて
十分楽しめる音楽だ。歌詞も面白いしね。某誌で見たのだが、休暇を取ってニュー
ヨークでのんびりしていたんだけど、折角来たんだから何か録音していこう、ってんで
自費で現地のミュージシャンを調達してセッションした音源が、このアルバムのベースに
なっているらしい。遊び半分だったせいか、リラックスした雰囲気が漂っているのも
よろしい。ま、とにかく、いいアルバムです。
NOTE 2001.9.7
禍都/柴田よしき
以前ここでも紹介したことのある、柴田よしきの『炎都』に続く伝奇シリーズの第二弾。
前作では、1000年の時を経て甦った魑魅魍魎たちと人間たちの戦いが京都を舞台に
繰り広げられたのだが、本作ではなんと太古の時代に地球を支配していた“黒き神々”
(要するに宇宙生命体だな)が復活し、先住民族でもある魑魅魍魎と人間が今度は
協力して“黒き神々”に立ち向かう、というストーリーだ。書いた本人も言う通り「荒唐
無稽で大風呂敷広げまくり(笑)」である。ま、とにかく、これが無茶苦茶面白いのである
から、文句は言うまい。非現実的な物語に没頭するのも時にはいいでしょう(笑)
ユーモアたっぷりの登場人物たちとその会話もとても楽しい。一度読み出したら止まら
ない、正に寝食を忘れてしまう一冊である。老若男女全ての人にお薦めしたい、
エンターテインメント文芸の傑作。とにかく、読んでみてくれ〜(笑)
NOTE 2001.9.4
THE SWEETHEART COLLECTION/FRANKE & THE KNOCKOUTS
今を去ること20年前、デビュー曲「スイートハート」を全米TOP10に送り込み、彗星の
如く登場したのがこのフランキー&ザ・ノックアウツである。続く「君はマイ・ガール」も
TOP40ヒットにした彼らは、アメリカン・ロックの新星として将来を大いに期待された
のだが、翌年セカンド・アルバムからのシングル「ウィズアウト・ユー」をTOP40に
チャートインさせたのを最後に、表舞台から姿を消してしまった。
結局、熱心なチャート・ファン以外は名前すら知らないで終わってしまった彼らの曲を
まさかCDで聴ける日が来ようとは、夢にも思わなかった。しかも、これ、ベスト盤なので
ある。ブートレグでも個人が勝手に編集したのでもないオフィシャルなCDなのだ。この
アルバムの存在を知り、ついに日本のレコード屋で発見した時には感動のあまり涙が
出た(笑) 「生きてて良かった」と思うのは、こんな時だ(爆) ろーずさんに感謝。
で、はっきり言って誰も知らないバンドであるので、内容についてウダウダ言うのは
止めておく。80年代、フォリナーやジャーニーといった“産業ロック”の成功を受けて
続々と登場したポスト産業組にもやや通じる、キャッチーな曲作りとタイトな演奏、そして
ボーカルのフランキー・プリバイトのソウルフルな歌いっぷりが魅力のバンドである。
ちょっとでも興味ある人は、是非聴いてみて下さい(笑)
フランキー・プリバイトは後に映画『ダーティ・ダンシング』のサントラに「ハングリー・
アイズ」「タイム・オブ・マイ・ライフ」の2曲を提供し、大ヒットさせた。その2曲のノック
アウツ・バージョンが収録されているのが、このベスト盤の目玉であろう。とにかく、
僕などにとっては涙なくしては聴けないアルバムなのである(笑)
最後になるが、このCDをリイシューしたのはRazor & Tieという会社で、どこかで
聞いたことあると思ったら、デビッド・キャシディの編集盤も出していた(持ってます)。
マニアなネタばかりで、すみません(爆)
NOTE 2001.8.31
花散る頃の殺人 女刑事音道貴子/乃南アサ
直木賞を受賞した乃南アサの代表作『凍える牙』の成功の大きな要因の一つは、
音道貴子という魅力的なキャラクターを創造した事だろう。警視庁機動捜査隊所属の
女刑事、バツイチ、長身の美人、趣味はバイク、という見事にカッコいいのだが庶民的
でもある主人公によって、物語がより一層面白くなった事は間違いない。作者本人も
そこいらは分かっていたとみえて、音道貴子を主人公にした短篇集を出したりなんかして
いて、それが本書である。
事件云々よりも、音道貴子の日常、身の回りの出来事などが細かに描写されている。
読者はより一層彼女を身近に感じる事が出来る訳だ。でも、確かに魅力的な主人公
だが、小説を離れてキャラクターが一人歩きしてしまうような強烈なタイプではなく、物語
に溶け込んでいるのがいい。当然、作者本人もそこは気を使ったろうし。であるので、
主人公のキャラクターだけに頼った展開になっておらず、読み物として大変質が高い
ものになっている訳である。そこいらはさすが、乃南アサである。
所で、『凍える牙』が最近テレビドラマ化され、NHK−BSで放送された。残念ながら
僕は見る事が出来なかったが、主人公の音道貴子を天海祐希が演じたそうで、個人的
には今いちイメージじゃないな、という気がする。僕のイメージだと財前直見あたりかな
(笑)
NOTE 2001.8.21