最近のお気に入り
(バックナンバー13)

CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。

MUSIC=音楽関係 BOOKS=書籍関係 MOVIE=映像関係



 BOOKS屍鬼(全5巻)/小野不由美
     屍鬼とは、一度死んだ人間が甦ったものである。起き上がりとも言う。屍鬼は永遠の
     生命を持ち、昼は眠り夜行動して人間を襲い、その生き血を糧として生きていく。太陽
     光線に弱く、神社仏閣の類を嫌う。破魔矢、十字架なども苦手とする。非常に高い治癒力
     を持ち、多少の傷では死ぬことはない。薬物、劇薬の類も無効だ。彼らを永眠させるには、
     心臓に杭を打つか、首を切り落とすしかない。吸血鬼に似ているが、当人たちは一緒に
     されるのを嫌うらしい。そんな屍鬼に魅入られた、今だに土葬の習慣を残す山村が、
     この小説の舞台である。
     しかし、この『屍鬼』すごい小説である。一年に何冊の単行本が出版されるのか知らないが、
     こんなすごい小説には滅多にお目にかかれるものではない。だいたい、山村を乗っ取り
     自分たちの社会を作ろうと目論む屍鬼と、それを阻止しようとする人間たちとの壮絶な闘い、
     なんて単純な図式に納まっている小説ではないのだ。前半部(文庫でいうなら最初の2巻)
     では、村人が次々に不審な死に方をすることで、じわじわと恐怖感をあおり、中盤以降
     “起き上がり”の仕業ではと疑いを抱く者と常識的に考えてあり得ないとする人の対立
     (だけど皆いいようのない不安を抱えているのだ)、そして登場する屍鬼たちの思惑、
     などを上手く絡め、終盤ではついに蜂起した村人たちが屍鬼を狩り始め、そして結末へ、
     と人間にも屍鬼にも肩入れせず、様々なテーマ(宗教、歴史、集団心理、生物の摂理等)
     を散りばめながら、単なる勧善懲悪の物語にはならずに、大長編としてまとめあげた著者
     の力量には感嘆してしまう。文庫版の宮部みゆき氏による解説には「必ず5巻まとめて
     買うこと、でないと夜中の3時に続きを求めて夜の町をさまよう羽目になる」とあるが、
     正にその通り、重い内容ではあるのだが、次を読みたくて仕方なくなってしまう、という
     エンタテインメントとしても非常に優れている。あまり世間には知られていない人だと思う
     けど、この小野不由美という人、注目であろう。
     この小説に関しては、色々言いたい事があるのだが、際限なくなってしまうのでやめておく(笑)
     とにかく言えることは、単なるホラーやミステリーではない、だけど無茶苦茶面白くて、
     しかも奥深い小説だということ。難しい事考えなくても楽しめます。大長編だけど、ちっとも
     長くない。ほんと、何度も言ってるけど“すごい”としかいいようのない小説である。

NOTE 2002.4.13



 MUSICC’MON,C’MON/SHERYL CROW
     シェリル・クロウ約3年半振りの新作である。ライナーにもあるように、この間彼女は
     休んでいた訳ではなく、ツアーをやりプロデュースやセッション・ワークに精を出し何種類
     かのオムニバス・アルバムに参加し、と結構忙しくしていたのである。おかげでこの新作
     も久々なんだけど、あまり久々という感じがしない。
     で、内容はというと、わざわざ言うまでもない。シェリル・クロウである。良いに決まって
     いるのだ(笑) さすがアメリカン・ロックを体現する女性ロッカー、ボーナストラックを
     含めて16曲、正に捨て曲なし、一気に聴いてしまいました(笑)
     多数のトリビュート・アルバムへの参加でも窺えるように、彼女が古き良き音楽、とりわけ
     ロックンロールやカントリーに造詣が深く、自身の音楽もそれらがベースになっている事
     はアルバムを聴いてみれば分かることだけど、決してマニアックにならず、どこか親しみ
     やすさを感じさせるのが、シェリル・クロウの魅力であろう。誰が言ったか少々“おミズっ
     ぽい”のである(笑) この『C’mon,C’mon』はみんなで楽しめるようなレコードを作り
     たかった(ライナーより)、と本人が言ってる通り、以前にも増して実に分かりやすくて
     屈託のないアメリカン・ロックとなっている。あまりにベタな展開の曲も2〜3あったりして、
     何だか前作がマニアックに感じられてしまうくらいだ(笑) もちろん、本人が意図した
     かどうかはともかく、それなりに仕掛けもあるので、うるさ型のリスナーも満足だろう。
     マニアも一般人も満足させる、つまり商業性と芸術性とをほどよくブレンドさせるという
     離れ業を軽々とやってのけてしまうシェリル・クロウ、やはり目が離せない。一生ついて
     いきます(爆)
     余談だが、日本のLOVE PSYCHEDELICOというユニットの音楽はシェリル・クロウ
     にかなり似ている。本人たちも影響を受けているのだろう。ただ、LOVE PSYCHEDELICO
     の場合は洋楽オタクみたいな雰囲気がするのに対し、シェリル・クロウにはそういった物
     は感じられない。やはり日本人とアメリカ人、土壌の違いは大きいのだろうか。個人的に
     は、LOVE PSYCHEDELICOはもっと日本的なものを感じさせる部分があれば、好き
     になるだろうと思う。今のままでは単なる洋楽コピーでしかない。
     関係ない話で失礼しました(笑)

NOTE 2002.4.6



 BOOKSレコスケくん/本秀康
     おそらく知らない人の方が多いだろうが、『ミュージック・マガジン』や『レコード・コレク
     ターズ』といった、ややマニアな音楽雑誌(笑)でお馴染みの愛すべきマンガのキャラク
     ターが単行本になった。まん丸い顔とまん丸い目にテンガロン・ハット、という可愛らしい
     姿は意外と色々な所で見かけるので、大抵の人は一度見れば「ああ、これか」と納得
     されるだろう。
     で、このレコスケくん、コレクターなのである。仲間のレコゾウやレコガール(これまた
     可愛い、マニアックだけど)と共に来る日も来る日も中古レコード屋を巡る毎日なのだ。
     もっとも、コレクターとはいえ、2000円以上の物は買わない主義らしく、貴重盤を安く
     手に入れることに生きがいを見いだしているタイプのようだ。レコゾウや中古レコード屋
     のオヤジにうまいこと騙されて、とんでもない代物を買わされてしまったりすることもある
     が、人が良くていいレコードを見つける事に生きがいを感じているレコスケくんには、
     やはりシンパシーを感じずにはいられない。コレクター心理ってヤツは今いち理解出来
     ないけど(笑)
     また彼は(というか作者は)ビートルズ、とりわけジョージ・ハリスンの大ファンである
     らしい。レコスケくんの部屋のレコード棚のビートルズの仕切り板があるが、実はジョージ
     のレコードしかなかったりする。2年程前にジョージ・ハリスンが自宅で賊に刺され重傷と
     いうニュースが流れ、ファンを心配させた事があったが、その知らせを聞いたレコスケ
     くんも心配で眠れぬ夜を過ごしていたりもするのだ。あの時ジョージは大事に至らずに
     済んだけど、結局去年亡くなってしまった。レコスケくんの悲しみを思うと、切なくなって
     しまうのだ。
     とまあ、マニアックだけど、キャラクターが面白いので気にならない。よろしかったら、
     書店で手に取ってみて下さい。ミュージック・マガジン社から刊行中です。

NOTE 2002.3.28



 MUSICGREATEST HITS LIVE/DARYL HALL & JOHN OATES
     今年の4月に控えた来日公演のチケットも快調に売れ、レコード・コレクターの4月号
     ではついに特集も組まれたりして、CM効果もあってか今や世間はホール&オーツ一色
     なのである(笑) 本作はタイミング良く出たライブ盤で、来日公演の予行演習にはもって
     こいだ。
     本国では去年の暮れに出たらしいのだが、このライブ盤は1982年の“プライベート・
     アイズ・ツアー”の時の音源で、どういう理由か発売が見送られオクラ入りになっていた
     ものらしい。ほぼ20年振りに陽の目を見たという訳だ。1982年と言えば、その前年
     から「キッス・オン・マイ・リスト」「プライベート・アイズ」「アイ・キャント・ゴー・フォー・
     ザット」と立て続けにbPヒットを飛ばし、正に彼らが黄金期を迎えようとしていた時期。
     その勢いと自信が全編に渡って感じられる。
     最初しばらくは地味目の曲が続き、バンドもまだ調子が出ないような雰囲気なのだが、
     中盤「リッチ・ガール」あたりから始まるヒット・パレードで、観客共々徐々にヒート・アップ
     していく様子が手に取るように分かる。結構生々しさを感じさせるライブ盤だ。「キッス・
     オン・マイ・リスト」「シーズ・ゴーン」「サラ・スマイル」といったお馴染みの曲がライブ向き
     のアレンジで演奏され、スタジオ盤とは全く違った雰囲気なのもいい。で、圧巻はやはり
     「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」、当時の最新ヒットがひと味もふた味も違ったアレ
     ンジで、正にノリノリ、ダリル・ホールも観客を煽りまくって、熱い演奏が繰り広げられる。
     バンドも非常にいいノリを醸し出しており、素晴らしいライブ・アルバムだ。来日公演で、
     これだけの演奏を聞かせてくれたら間違いなく僕は会場で昇天するだろう(爆)
     という訳で来日公演がイヤでも楽しみになってしまう内容なのである。所で、余談ながら
     この1982年にホール&オーツは来日しているのだが、その時のコンサートの模様が
     FMで放送された。僕はそれをエアチェックして聴いていたのだが、その内容がこの
     ライブ盤とほぼ同じなのである。非常に懐かしく感じられたのは言うまでもないが、冷静
     に聴いてると来日した時の方が、場数を踏んでいる分演奏がこなれている感じがした。
     あと違いがあるとすれば、来日公演では「マンイーター」「ファミリー・マン」あたりを
     やっていたこと、メンバー紹介がライブ盤ではカットされていることくらいか。とまあ、
     色々思い出してしまった訳だが、とにかく来日公演が楽しみです(笑)

NOTE 2002.3.19



 MUSICDROPS OF JUPITER/TRAIN
     近頃注目のバンドだそうだ。先に発表された2001年度グラミー賞でもこのアルバムが
     アルバム・オブ・ジ・イヤーにノミネートされていた。ヒップホップ勢に混じって大健闘だ。
     アメリカン・ロック期待の星ということで気にはなっていたのだが、こうしてCDを買って
     じっくりと聴いてみると、確かに良い。帯にも書いてある通り、歌をメインにしたバンドだ。
     最初にいい曲を書き、その曲を最大限に生かすアレンジを施し、あくまで歌を聴かせる
     事を念頭において演奏した、という制作プロセスが浮かんでくるようだ。今時珍しいくらい
     のバンドだけど、アメリカでは売れているようだし、こういうバンドが支持される土壌が
     まだあると思うと、アメリカまだまだ捨てたもんじゃない(笑)
     今時珍しいくらいのオーソドックスなロック、というとカントリーやプルースを根底に持つ
     ルーツ・ロック的なものを想像してしまうが、このトレインに関してはそんな感じではない。
     もちろんルーツには持っているのだろうけど、少なくともCDで聴ける音は混沌としていて
     はっきりとしたルーツは感じさせるものではない。ソウル・アサイラムあたりに近いかも。
     バンドの演奏も前述のように歌を聴かせることが第一で、インプロビゼーションや長い
     ギター・ソロなどは全くない。独特の雰囲気のバンド・サウンドはしっかりあるけどね。
     とまあ、どこまでもオーソドックスに歌にこだわったバンドなのだ。もちろん収録曲は
     粒よりで、彼らが仲々のソングライティングセンスの持ち主である事はよく分かる。下手
     すると曲がいいだけのバンド、なんて言われかねないのだが、このトレイン、結構評論家
     ウケもいいらしい。センセイたちも変わったもんだ(笑) やっぱりみんな、こういうのを
     聴きたいんだよ、きっと。知らず知らずのうちにターンテーブルに乗せてしまう、そんな
     アルバムです。

NOTE 2002.3.9



 MOVIEclassic albums:GOODBYE YELLOW BRICK ROAD
   /ELTON JOHN
     恥ずかしながら、初めて買ったDVDソフトである(笑)
     ご存知の方も多いと思うが、2〜3年前から“クラシック・アルバムズ”と称して、過去の
     名盤を取り上げその制作過程を振り返る、という映像シリーズが出ている。ま、“名盤の
     出来るまで”といった感じだろうか。今回のエルトンの『グッドバイ・イエロー・ブリック・
     ロード』もそのシリーズの一環である。ちなみにこのシリーズ、過去にはスティーリー・
     ダンの『AJA』、フリートウッド・マックの『噂』、ジミヘンの『エレクトリック・レディ・ランド』
     などがある。
     内容としては、1973年のエルトンの代表作『グッドパイ〜』誕生に至るまでのドキュメン
     トを、エルトン本人をはじめプロデューサーのガス・ダッジョン、バンドメンバーの
     デイヴィー・ジョンストンにナイジェル・オルソン、エンジニアのデビッド・ヘンツェル、
     エルトンの片腕バーニー・トーピン、といった関係者の証言を元に掘り下げていこう、と
     いうものだ。出す曲出す曲大ヒットで絶好調だったエルトンの70年代前半のエピソード
     が色々聞けるのがファンとしては嬉しい。その頃の映像もふんだんに見る事ができ、
     写真では見たことあるエルトンのド派手なステージ衣装も動く映像で改めて見ると感慨
     深い(笑) 残念ながら(?)“今だから明かす秘話”なんてのはなく、出演者が語る
     『思い出話集』てな感じがしなくもないが、この手のドキュメント・ビデオが好きな僕と
     しては、じっくりと見入ってしまった。
     とても興味深いのは、曲作りに関するエピソードで、バーニー=エルトン組は当時物凄い
     スピードで曲を作っていたらしい。このアルバム収録曲は2枚組にもかかわらず2週間で
     仕上げてしまったらしいし、作曲に15分、バンドの準備に20分、2回目か3回目の
     テイクでOKが出た、なんて証言が出てくると、いかにこの頃エルトン達がノッていたか
     が分かろうというもの。彼らは当時を振り返って、無我夢中だった、全てが上手くいった、
     なんて言ってるが、ロック・ポップスが大衆音楽として急成長を遂げた70年代にその
     中心にいた人たちだけに、真実味が感じられる。ほんとに凄い時代だったのだ。と、同時
     に作る側の意識とは関係ないところで、ロックは肥大していったのだな、という事が
     なんとなく窺える。気がついたら自分たちはとんでもない存在になっていた、という訳か。
     貴重な記録だ。
     あと、この手の映像作品の楽しみとして、マスターテープを再生してあれこれいじって
     みせる、というのがある。これがまたマニアックで、僕は好きです(爆)

NOTE 2002.3.6



 MUSICTHE HIT PARADE/PUFFY
     PUFFYの新作はカバーアルバムなんである。で、これが物凄く良いのだ。全曲
     オリジナル曲かと錯覚するくらい、PUFFYの個性全開、とにかく良い。
     取り上げている曲がまたよろしい。BOφWY、ブルーハーツといったロック・バンドに
     始まり、ダウン・タウン・ブギ・ウギ・バンド、シャネルズ、Winkなど多士済々、その上
     亜美と由美がそれぞれソロでトシちゃんとマッチの曲まで披露している。彼らの一番の
     有名曲を取り上げている訳ではない所にまたこだわりを感じたりもするのである。カバー
     アルバムを作る、というとやはり原曲やアーティストに対するリスペクトを表すこと、
     なんて決まり事があるようだが、PUFFYに関してはそんなの知ったこっちゃない、単に
     歌いたい曲を歌いたいように歌った、というカラオケ感覚が感じられるのがまた小気味
     良い。彼女たちの番組で冒頭ゲストと一緒に一曲歌うけど、あれをもっと拡大させて
     好き放題やりました、という感じなのだ。誰が言ったか“プロのアマチュア”PUFFY、
     さすがである。恐れ入りました(笑)
     こうなると気になるのが、このカバーアルバムの企画、選曲等は一体誰の手によるもの
     なのか、ということ。亜美と由美の二人が主導で行われたのなら、やっぱりこの二人
     大したものだ。惚れ直してしまいそう(爆)奥田民生は今回は完全にバンドの一員に成り
     きって、これまた楽しそうだし。あ、忘れてたけど、お馴染みのDr.Strange Love 
     + 奥田民生による演奏がまた素晴らしい。非常に統一感のあるカバーアルバムと
     なったのは、バンド・サウンドの貢献度大である。
     ま、とにかく、すごくいいので、是非聴いてちょ(笑)

NOTE 2002.3.2



 MUSICTHE ESSENTIAL JOURNEY
     レコード屋で偶然見かけたジャーニーの2枚組ベストである(輸入盤、日本盤は出る
     のか?)。曲目を眺めていたら欲しくなってそのままレジへ走ってしまった(笑)
     以前にも言ったと思うのだが、僕は別にジャーニーのファンではない。だが友人に
     ジャーニーのファンがいたりしたので、アルバムは一通り聴いている。それにかつては
     ヒット曲連発、正に一世を風靡したバンドである。知っている曲は多いのだ。そういう
     熱心なファンではないけど、一応ジャーニーは聴いてますという人間からすると堪えられ
     ない選曲といっていい。単純に言えば、ヒット曲中心のディスク1、渋めの選曲の
     ディスク2という事になるが、シングル曲でも「After The Fall」「Still They Ride」
     といった通常のベスト盤からは漏れてしまうような曲も入っているし、「Anytime」
     「Patiently」など70年代の曲まで収められているのが嬉しい。その上、ライブ・
     アルバムの“おまけ”で、シングルとしても発売された「The Party’s Over」まで
     聴けてしまうのだ。ほんと、これ一枚持っていれば十分という有り難い内容なのである。
     とはいえ、やはり良い。やや武骨だけどスケール感のある70年代、ジョナサン・ケインを
     迎えてアメリカン・ロック・シーンの頂点に立った80年代、再結成して円熟味を増した所
     を見せた90年代、どの時代にもそれなりの良さがあり、産業ロックなどと揶揄されたり
     もしたが、彼らが非常にクォリティの高い作品を発表し続けてきたのは確かだ。こうして
     約20年にも渡る曲が並ぶベスト盤を聴いていると、改めて第一線をキープし続けてきた
     ジャーニーの凄さを思い知る。つまらぬ理屈や意地を忘れて聴き入ってしまう魅力が
     あるのだ。売れたのは運や偶然ではない。ジャーニーを批判していた連中も、その点は
     認めざるを得ないだろう。
     ジャーニーはまだ現役だし(丁度一年前の来日公演も記憶に新しい)、このベスト盤で
     カバーされていないアルバムも何枚かあるのだが、ここに収められた曲は全てスティーブ・
     ペリー在籍時のものだ。ジャーニー=スティーブ・ペリー、ということですね。まあ、間違い
     ではない。否定する気はないです。友人でひとり、頑なにジャーニー=ニール・ショーン
     だと譲らないのもいますけど(爆)

NOTE 2002.2.15



 BOOKS鳩笛草/宮部みゆき
     平凡を絵に描いたような僕からすると、超能力なんて夢のまた夢である。なにしろ、
     その手の能力には全く縁がなく、幽霊すら見たことも感じたこともない。人の心が読め
     たり時空間を行き来したり先の事が分かったり念力で物を動かせたり...なんて
     羨ましくはあるけど、当の超能力者からすると人にはない能力を持っているだけに、
     面倒な事も多いのだろうなんて気もする。宮部みゆきのこの『鳩笛草』には超能力者が
     登場する物語が3編収められているが、そういう特殊な能力を持つ者の苦しみや悲しみ
     が伝わってくる。宮部みゆきは他にも『龍は眠る』『蒲生邸事件』といった超能力者が
     登場する小説を書いており、いずれの作品にも共通するのは物語の主題とは違うが
     超能力者ならではの悩みを描き出している点だ。
     ここでの3編のうち、パイロキネシス(念力放火能力)を持つ女性が登場する「燔祭」が
     僕にとっては一番印象的だ。年の離れた妹を通り魔に殺されてしまった青年、捜査線上
     に容疑者が浮かんでくるがその男はいけしゃあしゃあと無実を主張する。ヤツを殺して
     やりたいと思い詰める青年の前に突然現れる女性。彼女は言う、“私ならあなたの武器
     になれる”と。しかし、実際に彼女が容疑者を焼き殺そうとした時、青年は止める。彼女
     は言う、“誰かの役に立たなきゃこんな力を持って生まれてきた意味がないじゃない!”
     そして彼女は謎めいた言葉を残して青年の前から消える...青年が妹を回想する
     シーンも含め、全編やりきれない悲しみでいっぱいだ。こんな力さえなければ、普通に
     暮らせたのに...人目につかぬよう目立たぬように生きていかなくてもすんだのに...
     表題作はやや趣が違い、人の心が読める能力を持つ女性がその力を利用しようと警官
     になる話だ。ここでは、その能力が徐々に弱くなっていく事を自覚した主人公の悩みが
     描かれている。この力がなくなったら自分はどうなってしまうのか、死んでしまうのか、
     能力がなくなるだけで普通の人と同じになるだけなんて都合のいい事になるのだろうか。
     特殊な能力を持つが故の苦しみもあるが、その能力が衰えた時の悩みもあるのだ。
     こんなこと、やはり凡人には想像出来ない。宮部みゆきの尋常ならざる想像力に脱帽
     するのみだ。
     余談ながら、超能力者になりたいかと聞かれたら僕はNoと答える。そんなにいいもん
     じゃない、という気がするのだ。宝くじやダービーの当たり馬券だけ事前に読める、
     なんて都合よくはいかないよ、きっと(笑)

NOTE 2002.2.8



 MUSIChuma−rhythm/hitomi
     現在J−ガールズ・ポップの頂点に立つのは浜崎あゆみと宇多田ヒカルである事に
     異論はないが、どっこいこのhitomiも頑張っているのだ。CMなどの露出もかなり
     多いし、歌だけでなくビジュアルをも有効に使っていつの間にか確固たる地位を確立して
     しまっている。そのhitomiのニュー・アルバム、自信と勢いに溢れた傑作なんである。
     何と言っても今回は曲が良い。去年ドラマに使われた「IS IT YOU?」なんて近年稀な
     名曲だし。昨今のJ−POPの慣例に乗っ取り、収録曲は既発シングルやタイアップ曲
     が多いが、それ以外の曲の出来がまた良いのである。素っ頓狂な音と歌を聴かせる
     冒頭の「Ele pop」や、シニカルな歌詞の「Primary」といった、いわゆるアルバム・
     トラックの出来が良い為、シングル曲との落差がほとんどなく、中だるみせず一気に
     最後まで聴けてしまうのだ。しかも、ノリにノったhitomiのボーカルが素晴らしい。
     この人鼻っ柱が強い印象があるけど、意外とフェミニンに歌う技量もあり、曲毎にその
     ボーカルは表情を変え飽きさせない。意識的に無機質な感じを強調したかのような
     サウンドも、彼女のボーカルを引き立てているし。ちと褒めすぎかな(笑)だけど本当に
     素晴らしい出来なんです。
     前作『LOVE LIFE』は、自身の歌と音世界を確立した傑作であったけど、本作は曲、
     歌詞、サウンド、ルックス、ファッションなど、hitomiという歌手(タレント?)を構成する
     要素が絶妙にブレンドされ、完全無比のhitomiワールドが構築された記念碑的作品と
     して評価されるべきだろう。一見なんてことないようだけど、ここにある要素のうち、
     どれか一つでも他の人がやればhitomiのパクリだと言われてしまうに違いない。これぞ
     hitomi、というブランド・イメージが完成されてしまったのである。実に素晴らしいこと
     だ。hitomiがJ−POPの頂点に立つ日は近い?!(でも本人はその気ないだろうな)

NOTE 2002.2.4


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