最近のお気に入り
(バックナンバー21)
CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。
=音楽関係
=書籍関係
=映像関係
道路の権力 道路公団民営化の攻防1000日/猪瀬直樹
内容はご存知の方も多いだろう。作家の猪瀬直樹が道路公団民営化に向けて動いて
いた日々の記録をまとめたものだ。いわゆるノンフィクションというか実録物。これがまた
面白い。政治やら経済やらに興味なくても面白く読めると思う。猪瀬側から見た記述では
あるが、かなり客観的に記録していると思われるし、登場するのが全て実在の人物ばかり
だから、リアリティも迫力もある。当事者同士のやりとりも面白い(笑) もちろん、勉強に
もなる(笑) テレビのニュース番組や新聞もいいけど、こうして実際に携わった人の言って
るのが一番分かりやすい。外野からああだこうだ言うのは簡単だが、やはりこうした実録
物を前にすると、真実味に欠ける。
読んでみて思ったのは、官僚というのはどうしようもない存在であるな、ということ。民営化
委員会からの資料提出の要求があっても、適当な事を言って出さないとか、わざと提出
を遅らせるとかは当たり前。しかも、委員会に提出する前にマスコミに勝手に流したり
なんてことも平気でする。また、内容について突っ込まれても理由になってない理由で
平然と受け答えして涼しい顔。猪瀬氏自身も痛感したように、一番民営化したくないのは、
国民の公僕たる官僚たちなのだ。多額の負債を抱え、毎年巨額の税金が投入されてきた
道路公団が民営化される事は、国民にとって喜ばしい事であるはずなのだが、官僚たち
は快く思わない。道路に限らず、日本に数多く存在する特殊法人の類が、どれだけ税金を
食い物にしているか、猪瀬氏は本書の中で少しづつ明らかにしていく。国の為に働いて
いるはずの人間が、国を食いつぶす事に加担しているという事実。彼が一番皆に知って
欲しいのはそれだろう。
それにしても官僚というか役人のいい加減さには呆れる。コスト意識からして無茶苦茶だ。
あんなの、うちの会社でだってまず通らない(笑) また民間に対する差別もすごい。民営
化委員会で、公団の資料をいつでも見れる様、事務局にパソコンを置く事を要求したは
いいが、そのパソコンはLANに接続されていなかったそうだ。かように民間は疎外され
“いじめ”を受ける。これじゃ日本は良くならんよ(笑) 猪瀬氏自身も“たかが作家”と相当
政治家や官僚からバッシングを受けたのも記憶に新しい。
とまあ、あれこれ言ってるけど、前述したように、ただ読んでいるだけでも十分に面白い
ので、お薦めです。でも、こんなこと言うと猪瀬氏に叱られるかも(爆)
NOTE 2004.2.9
THE VERY BEST OF SHERYL CROW
私事で恐縮だが、この度所有するCDが900枚に達した。その記念すべき900枚目が
このシェリル・クロウのベスト盤である。ついでに言うと、新星堂のポイントを、有効期限
が切れる直前だったので一気に使ったら、2548円のCDが305円で買えてしまった(笑)
ま、そんな事はどうでもよく、早いもので昨年デビュー10周年を迎えたシェリル・クロウ
の初ベストであって、シングル・ヒットを中心に新曲などを交えて17曲(アメリカ盤と日本
盤では若干曲目が違う)、「トゥモロー・ネバー・ダイ」などが含まれていないので、純然
たるベスト盤とは言い難いが、初期のアルバムからの曲が大半(1stから5曲、2ndから
4曲)を占めているのを見ると、本人にとってもその時期の方が思い入れが強いようだ。
ちなみに、新曲3曲(うち一曲は昨年彼女のホームページで公開されていた曲)はいずれ
もアーシーな仕上がりで、1stの頃を彷彿とさせる。10年という区切りの年を機に、また
そちらの方向へ向かうのだろうか。
個人的には、まだまだシェリルにはベスト盤なんぞでそのキャリアを総括して欲しくない、
なんて思っている。ま、新作までのつなぎという捉え方が適切だろう。もちろん新しいファン
の獲得をも狙っているのだろうが(笑) もし、このベスト盤を聴いてシェリルに興味を
持った方がいらしたら、是非1stの『チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ』を聴いて
欲しい。90年代アメリカン・ロックの名盤であるし、何よりも彼女の原点がある。よろしく
お願いします(って、誰に言ってんだか)
NOTE 2004.1.24
30th STREET SOUTH/南佳孝
あの南佳孝もデビューして30年だそうだ。それを記念して新たに編集された2枚組ベスト
が、この『30th STREET SOUTH』なんである。30年記念とはいえ、そのキャリア
の大半を過ごしたソニー時代の音源から選曲されていて、オールタイムベストとは言い
難いが(ソニー時代でも1991年の『どこか遠くへ』、1992年の『New Standard』の
2枚、つまりソニー最後期のアルバムからは未収)、1st『摩天楼のヒロイン』からも3曲
収録されているし、熱心なファンなら満足のいく内容だろう。ハイブリッドディスクということ
で、音も無茶苦茶いいし(ちなみに、ハイブリッドディスクとは、CD層とスーパーオーディオ
CD層を持つ二重構造のCDらしい。よく分からんが...笑)。ま、ファンでなくても買って
みて損はない(爆)
南佳孝は意外とベスト盤(編集盤)が出ているのだが、『30th STREET SOUTH』
には、これまでのベスト盤には絶対収録されなかった、いわば隠れた名曲も多数収録され、
非常に喜ばしい。実は、当サイトでもお馴染みの夏利さんが選曲に協力しており(クレジ
ットにもしっかり名前が出ている。もちろん本名でだけど...笑)、彼が僕の好みを考慮
して選曲してくれたのではないか、なんて勘繰ってしまうほど(あるわけないだろ!)、
ツボにハマった選曲が実に心地よいのである。もちろん、「スローなブギにしてくれ」
「モンロー・ウォーク」といったヒット曲もはずしてないし、ライブの定番「日付変更線」
「プールサイド」「Midnight Love Call」あたりもしっかり入ってるし、なんだかんだ
言っても決定版ベストと言っていいかも。南佳孝の足跡をたどるにも最適だし、良質な
楽曲集として聴いても素晴らしい。曲毎の参加ミュージシャンのクレジットを見ても、その
時点での旬のプレイヤーやアレンジャーを起用し、常に最先端モードの音楽を志向した
彼のこだわりも窺えるし、30年近く前の曲が全く古びていないのも驚き。世間的にはかなり
地味ながらも、30年も前からこんな素晴らしい音楽を作っていた南佳孝に、改めて脱帽
してしまうのである。
という訳だ。これを読んでいる諸君。『30th STREET SOUTH』、買いなさい(爆)
NOTE 2004.1.11
LIVE THE 1971 TOUR/GRAND FUNK RAILROAD
知ってる人は知ってるだろうが、あのマーク・ファーナが来年2月に来日し、ライブを行う
のである。そう、あのグランド・ファンク・レイルロード(以下GFR)のギタリストでありボー
カリストだ。確か1997年頃にGFRを再々結成して来日もしているが、その後ソロで
活動しているらしい(ちなみに、残りのメンバー、ドン・ブリューワーとメル・サッチャーは
違うメンバーを補充してGFRとしてツアーなどしてるそうだ。マークは怒ってるとか)。ま、
ソロでも何でもマーク・ファーナーが見れるのは嬉しい(そのGFRの再々結成の時は
行かなかったのだ)。しっかりチケット買いました(笑)ソロではあるが、GFR時代の曲も
演奏するのだろう。楽しみである。
で、その予習という訳ではないのだが、GFRのライブ盤なのだ。タイトル通り、1971年
の音源なのだが、2002年に発掘された。というか、元々発表するつもりだったのにお蔵
入りしてたらしい。当時既に出ていた2枚組のライブアルバムと同時期の音源だし、曲目
も半分くらいかぶってるのだが、なんてったって全盛期の彼らの演奏をパッケージした
ライブ盤だ。悪かろうはずがないのである。約78分に渡って繰り広げられる演奏の、
なんとテンションの高いことか!GFRはデビュー後3年間はライブに明け暮れていたそう
だが、毎回こんなテンションの高いライブを披露していたのだろうか。だとすれば凄い。
早死にしなかったのが不思議なくらいだ(笑) いやしかし、ほんと、凄い、カッコいい、
としか言いようがない。こんなすさまじくもカッコいい演奏を目の当たりにしたら、ファンで
あろうとなかろうとノックアウトされてしまうだろう。GFRといえば、雷雨の後楽園ライブと
いう伝説があるが、決して誇張ではない事が、このライブ盤を聴けば納得出来てしまう
のだ。とにかく素晴らしい。GFR万歳!!なんである(笑)
NOTE 2003.12.26
渡邊恒雄 メディアと権力/魚住昭
僕ははっきり言って渡邊恒雄(以下ナベツネ)が嫌いである。己れの絶大な権力を背景に、
我が儘放題好き放題、無理を通して道理を引っ込める、その言動だけでも軽蔑するに
値する人間だ。が、反面、世界一の発行部数を誇るとはいえ、一介の新聞社の社長に
すぎないナベツネが、何故言論界のみならずスポーツや政治の世界にまで、こうも絶大な
影響力を持つに至ったのか、その辺は実に興味がある。そういう僕にとっては、うってつけ
の本だ。ナベツネ礼賛本ではなく、かといってナベツネ攻撃本でもない、綿密な取材と
膨大な資料を元に非常に客観的にナベツネのこれまでの人生を追い、多くのライバル
を蹴落としあるいは葬り去り、政界における豊富な人脈を有効活用して権力闘争に明け
暮れながら彼が這い上がってくる様を克明に描いていて、実に読み応えがある。下手な
小説より遙かに面白い。
とはいえ、ノンフィクションとしては大変面白いけど、ナベツネのような人物が言論界の
トップに君臨する現況を思うと、やはり何かがおかしいと思わざるを得ない。文中で何度も
触れられているが、自分の意に反した記事を書く者は容赦なく潰し、時には記事そのもの
を揉み消しもする。ジャーナリズムもへったくれもあったもんじゃない。大物政治家との
癒着も問題あり。こういう人間が社長では、讀賣新聞もしれたもんだ。真の意味での新聞
とは呼べないね。ここで、ちょっと長いけど、非常に印象的な元讀賣社会部記者の証言
を引用させて頂く。
“僕はそのころ、僕等の不幸は最も優秀な経営者をボスとして頭にいただいていることだと、
いつも思ってた。正力さんは天才的事業家だけど新聞をチラシ広告と同じくらいにしか
考えていなかった。務台さんも『販売の神様』であってジャーナリストじゃない。その後を
受けた渡邊さんもジャーナリストというより政界の人間ですよね。だから、讀賣でジャー
ナリストであろうとすると必ず上とぶつかることになる”
ナベツネというより、讀賣の持って生まれた体質に問題があるのかもしれない。ナベツネ
が組織を作るのではなく、組織がナベツネを生み出したという事か。どっちにしても、
おぞましい(笑)
ま、とにかく、読んでみてナベツネという人は凄いと思った。同じサラリーマンでも、僕
なんかとてもじゃないが真似出来ない(笑) けど、人間として尊敬する気にはなれないな。
色々と言いたい事はあるけど、この辺にしときます。きりがないもんで(爆)
NOTE 2003.12.24
REMIXED & REVISITED/MADONNA
偶然店で見かけて買った。考えてみると、マドンナのリミックス物って結構出ているはず
なので、こんな明快なタイトルで、他のと区別つくのだろうか、なんて余計な心配をして
しまうが、とにかくマドンナのリミックスEP(とクレジットにはある)なんである。収録されて
いるのは、最新アルバム『アメリカン・ライフ』からの曲のリミックスが4曲、1994年の
『ベッドタイム・ストーリーズ』のアウトテイクが1曲、そしてMTV VMAでのパフォーマンス
と「イントゥー・ザ・グルーブ」のリミックスで、計7曲。MTVでのパフォーマンスは、クリス
ティーナ・アギレラ、ブリトニー・スピアーズ、ミッシー・エリオットという小娘(爆)たちとの
共演で「ライク・ア・バージン」と「ハリウッド」をメドレーで歌っているもの。「イントゥー〜」
のリミックスはこれまたミッシー・エリオットをフューチャーしている。この2曲は話題性は
文句なしだけど、ご愛敬って程度のレベル。やはり、白眉は未発表の「ユア・オネスティ」
だろうか。10年近く前のアウトテイクを何故今頃、という気はするけど、実に良い曲で
発表されなかったのが不思議なくらい。サウンドも曲も本編に入っていても全く違和感
なかっただろう、というレベルに達している。『アメリカン・ライフ』からのリミックスも素晴
らしい。このアルバム自体、無駄な装飾は一切削ぎ落とした音作りになっているが、こちら
のリミックス・バージョンは音が分厚くゴージャスに仕上がっており、これがまたよろしい
のだ。それぞれの曲の違う一面を引き出している、って感じ。昔からそうだけど、マドンナ
って他の人たちと違ってリミックスも面白い。何度も商売出来ておいしいなぁ(笑)
という訳で、リミックスEPとはいえ、非常にグレードの高い内容である。さすがマドンナ、
したたかと言うか商売上手と言うか...(爆)
NOTE 2003.12.13
EVERYBODY'S IN SHOW BIZ-EVERYBODY'S A STAR/THE KINKS
名盤『アーサー、もしくは大英帝国の滅亡ならびに衰退』に続いて買ってしまったキンクス
のアルバムは1972年発表、LPでは、レイ・デイビスが夢にまで見た(笑)2枚組で一枚
目がスタジオ盤、二枚目がライブ盤という構成だったそうだ。相変わらずタイトルが長い
(長いタイトルのアルバムばかり買っているという説もある...笑)。本作もコンセプト
アルバム仕立てのようだが、『アーサー〜』のようにはっきりとしたストーリーがある訳
ではなく、芸人も一般人も結局は同じなのよ、というレイ・デイビスならではの人生観が
綴られているらしい。と、伝聞ばかりですいません、初心者なもんで...(爆)
とはいえ、僕のようなキンクス初心者にも十分楽しめるアルバムだ。アメリカ音楽色
(それもかなり下世話な)が強まっている印象を受けるが、アメリカナイズされたという感じ
はせず、イギリス人らしいユーモアがたっぷり効いているって感じ。また、この頃キンクス
はアメリカでも頻繁にツアーをしており、酒を飲んでステージに上がる酔っ払いバンドと
して勇名を馳せていたらしいのだが、二枚目(CDでは後半)のライブはそんな楽しいと
いうかハチャメチャな雰囲気がたっぷり味わえる。正にキャバレーバンドのショータイム
(行った事はないが)。ライブなのに、誰でも知ってるヒット曲の類をやってないのがまた、
キンクスらしいという気がしてしまう。こういう下世話で楽しい雰囲気(だけど決して下品
でも悪ふざけでもない)というのは、やはりパブ・ロック発祥の国のバンドならではなの
だろうか。ビートルズ(特にポール・マッカートニー)にも通じる物があるし、クイーンにも
こういった要素の一部は受け継がれているように思う。なんと、ビートルズとキンクスと
クイーンが一本の線で繋がってしまうとは!ブリティッシュ・ロックの懐の深さを見る思いだ(笑)
ま、真摯なロック・ファンを自称する人からは「まじめにやれっ!」なんて、怒鳴られて
しまいそうな音楽だけど(笑)、この真面目なのか何なのかよく分かんのもキンクスの
魅力だろう。難しい事考えずに、楽しみましょう。僕もそうしてます(笑)
NOTE 2003.12.10
GREATEST HITS/RED HOT CHILI PEPPERS
日本でも人気のレッチリのベスト盤なのである。僕はレッチリと言えば、1991年の
『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』しか聴いた事がなく、アメリカならともかく何故
日本でもこんなに人気あるのか(なんたって、アルバムを出すとオリコンのTOP10に
入ってしまうのだ)、とても不思議だったけど、このベスト盤を聴いてみてなんとなく分かった
ような気もした。『グレイテスト・ヒッツ』というタイトルだから、おそらくシングル曲がメイン
なんだろうけど、結構いいメロディの曲が多いのだ。それも哀愁たっぷりでいかにも日本人
好みって感じのが(例えば「アンダー・ザ・ブリッジ」とか「カリフォルニケイション」とか
「バイ・ザ・ウェイ」とか)。前述の『ブラッド〜』では、かなり腰にくるファンキーなロック、
という印象があったけど、それだけではなかったのだね。もちろん、そういったファンキー
なロックもこのベスト盤には収録されているし(例えば「ギブ・イット・アウェイ」「フォーチュン・
フェイデッド」等)、アコースティックな感触の曲もいいし、仲々に楽しんでしまったので
あった(笑) レッチリ、見た目よりずっと才能あるバンドだな(爆)
NOTE 2003.11.26
ARTHUR OR THE DECLINE AND FALL OF THE BRITISH EMPIRE
/THE KINKS
ジェスロ・タル、プロコル・ハルムに続くブリティッシュ・バンド温故知新シリーズ(笑)と
いう訳ではないが、前々から一度は聴いてみたいと思っていたキンクスについに手を
出してしまった。で、なんだかハマりそうである。ヤバい。キンクスは活動歴が長いだけ
にアルバムの数も多く、追っかけて聴き始めると大変な事になりそうなので、今まで手を
出さずにいたのだが...(笑)
ま、それはさて置いて、この『アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡』だが、
キンクスの代表作とも言われているだけあり、非常に素晴らしいアルバムだ。ライナーに
よると、元々はテレビドラマのサントラとして企画され、アーサーという一般市民の人生に
なぞらえながらイギリス帝国の凋落を描く、という内容になっているらしい。言うならばロック
オペラだ。ロックオペラと言えば思い出すのがザ・フーの『トミー』だが、実際この『アーサー〜』
は『トミー』が発売された後にリリースされたため、二番煎じなどとメディアから総スカンを
食い、チャートインすら果たせなかった不幸なアルバムなんだそうである。思えばキンクス
も気の毒なバンドだ。ザ・フーに「ユー・リアリー・ガット・ミー」のアイデアをバクられて
「アイ・キャント・エクスプレイン」を作られ、ドアーズには「オール・オブ・ザ・デイ・オール・
オブ・ザ・ナイト」を盗作されて「ハロー・アイ・ラブ・ユー」を作られて、しかもどっちも元ネタ
より有名だったりする。本作のロックオペラというアイデアも、決してザ・フーに遅れを
とった訳ではなく、たまたま『トミー』が先に出てしまった、というだけだし。確かに、ライナー
にもあるが、この『アーサー〜』が『トミー』より先に出ていたら、その後のブリティッシュ・
ロック界の勢力地図は間違いなく変わっていただろう。それくらい、素晴らしいアルバム
であると断言できる。
ストーリーを持ったコンセプト・アルバムだけど、歌詞が分からなくてもその素晴らしさは
十分に伝わってくる。とにかく、曲がいい。じっくり聴いたのは初めてだけど、レイ・デイビス
という人、仲々凄い。ドキッとするようなメロディを書く人ではないが、歌詞や構成も含めて
独自の世界を持っていて、しかも分かりやすい。途中に全く違うパートを挿入したりしなが
らも、違和感なく聴かせてしまうなんて、ただ者ではない。寂しげに始まる曲もいつの間
にか盛り上がっていたりするアレンジも素晴らしいし。そして、コンセプト・アルバムとは
言うものの、とても楽しく聴けるというのが一番の魅力だ。どことなく上品な雰囲気を
漂わせているのもいいね。やはり英国って感じ。この辺はビートルズやプロコル・ハルム
にも通じるな。変にアメリカに色目使ってないのが潔いと思うのだよ。
初めて聴いたくせに何だが(笑)、ほんと素晴らしいアルバムである。10曲収められて
いるボーナストラックも、アルバム未収録のシングルやそのB面だったりして、完成度の
高い曲ばかり。これで1900円(税抜き)は安い(爆) 自信を持ってお薦め致します。
最後にどうでもいいことかもしれないが、近頃昔のアルバムをCD化する際、ボーナス・
トラックを収録するのが当たり前になっているが、物によっては本編よりボーナスの方が
長くなってしまっている場合もある。本編の印象がぼやけてしまう可能性もあるし、本編と
ボーナス・トラックは分けて2枚組にした方がいいと思うのだが、皆さんはどう思われます?(笑)
NOTE 2003.11.15
OFF THE WALL SPECIAL EDITION/MICHAEL JACKSON
あれ、そんな意外な顔しないで下さいよ(笑) 今年の2月に放送されたマイケルのTV
スペシャルを見て、批判的な事をゲストブックに書いたりしたけど、『Off The Wall』
や『Thriller』の頃のマイケルは結構好きだったんですよ。特にこの『Off The Wall』、
1979年の秋に発売されて「Don’t Stop ’Til You Get Enough」「Rock With
You」の2曲の全米bPヒットを出し、ベストセラーになっていたのだが、この頃僕も欲し
かったもんね(爆) 金があれば間違いなく買っていたであろう。この時期、マイケルは
確かホンダのCMに出ていたと思うのだが、スクーターの周りで仲々に華麗なステップを
決めていて、実にカッコ良かった。その頃の彼はまだ“変な人”じゃなかったのだ(爆)
で、時は流れ、あの頃とはすっかり別人となってしまったマイケルを尻目に、いつの間にか
スペシャル・エディション・シリーズが出ていた。彼のエピック移籍後の『Off The Wall』
から『Dangerous』までの4枚のアルバムをリマスターし、ボーナストラックを追加した
ものだ。しばらく前に某輸入レコード屋でみつけたのだが、何故か安売りしていたんで
買ってきた、という次第(笑)
でも久々に聴く『Off The Wall』、やっぱり素晴らしい。僕はずっとロック系ばかり
聴いていて、ソウル系はあまり興味がなかったのだが(ディスコは除く)、にもかかわらず
このアルバムに惹かれたのは、それまでのソウルとは明らかにイメージの異なる音楽
だったからだろう。マイケル・ジャクソンとクインシー・ジョーンズが手を組んで発表した
作品からブラコンという新しいジャンルが生まれた、とはよく言われるが改めて聴いてみる
と正にその通り。汗くささや暑苦しさがなく、適度にメロウでファンキーで都会的なサウンド
は実にお洒落でもある。『Off The Wall』では、まだダンサブルな雰囲気だけど、
次作ではロック系ミュージシャンとも共演し、マイケル(とクインシー)はソウルやロックと
いった垣根を取り払って新世代のブラック・ミュージックを創造していくのである。この功績
は偉大だ。近頃では、私生活での奇行ばかりが話題になるマイケルだが、やはりミュージ
シャンとして正しく評価してあけなければ、と思うのです(爆)
ボーナストラックとして、「Don’t Stop ’Til You Get Enough」「Working Day
And Night」のマイケルによるデモが収録されているが、これなんと、彼が兄弟たち
(ランディやらジャネットやら)と一緒に録音しているのである。この頃はまだ仲良かった
んだなぁ、なんてどうでもいい感傷にひたってしまったが(笑)、デモの完成度は非常に
高い。やっぱり、マイケルって大したヤツなのだね、きっと。
NOTE 2003.10.25