最近のお気に入り
(バックナンバー23)

CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。

MUSIC=音楽関係 BOOKS=書籍関係 MOVIE=映像関係



 MUSICパパ・ヘミングウェイ/加藤和彦
     70年代から8年代にかけての加藤和彦が、当時の日本のミュージックシーンに於いて、
     いかに先鋭的な存在であったか、それはサディスティック・ミカ・バンドのアルバムと、ここ
     で紹介する“ヨーロッパ三部作”を聴けばすぐに納得して貰えるだろう。1979年の『パパ・
     ヘミングウェイ』、1980年の『うたかたのオペラ』そして、1981年の『ベル・エキセントリック』、
     この3作共、時代を先取りしたコンセプトと音楽家としての加藤和彦の才能が見事にドッキング
     した名作揃いである。作曲家として竹内まりやなどのヒット曲を手掛けながら、こんな凄い
     アルバムを毎年制作していたのだ。そんな日本のロック界が誇る名盤3部作が、デジタル・
     リマスターで再発されるなんて、これほど喜ばしい事があるだろうか(紙ジャケというのが
     気に入らないが...笑) 決して当時ベストセラーになったというのではないが、日本の
     ロック(フォークも含めて)を語る際、避けては通れない重鎮・加藤和彦の代表作である。
     この機会に是非幅広い人たちに聴いて貰いたいと思う次第なんである。今じゃ流行らない
     音楽だというのは十分承知してますけど(爆)
     当サイトの「名盤100選」でセレクトしているくらいで、個人的には『うたかたのオペラ』が
     好きだし、実際よく聴いていた。で、今回久々に3部作として聴いてみると、ソフィスティケ
     イトされた印象の『パパ・ヘミングウェイ』や、格調高いサウンドでまとめられた『ベル・エキ
     セントリック』に比べると、『うたかたのオペラ』音的には一番チープな印象。ただ、それが
     退廃的ムードを盛り上げる重要な要素となっている訳で、やはり加藤和彦、そこいらは
     計算ずくなのだろう。この3作共、日常的なテーマを歌う歌謡曲やニューミュージックとは、
     最初から一線を画していた訳で、カルトな翻訳小説を読んでいるような雰囲気なんだけど、
     根底に流れるテーマは普遍という感じで、日常と非日常のギリギリで成り立っているような
     世界がたまらないのである。そういう意味では、西洋史の講義を聞いているかのような
     『ベル・エキセントリック』は、ちょっとやりすぎって気もする。とはいえ、サウンドと歌詞が
     一体となって古き良きヨーロッパへ誘うこの3部作、音もコンセプトも、後のYMO、ゲルニカ、
     はては戸川純といった人達に与えた影響は大きいと思う(言い忘れたが、レコーディング
     にはYMOのメンバーもしっかり参加している)。曲作りの上でも私生活でも最大のパート
     ナーであった安井かずみを亡くしてしまったせいか、ここんとこパッとしない加藤和彦では
     あるが、その彼が20年も前に残した偉大な作品たちの素晴らしさを改めて実感してしまう
     のだ。何度も言うけど、やっぱり加藤和彦は凄い、うん。これを読んでる皆さん、秋の夜長
     は是非“ヨーロッパ三部作”でお過ごし下さい(笑)

NOTE 2004.10.22



 MUSICTHE BATTLE FOR EVERYTHING/FIVE FOR FIGHTING
     よく知らないけど、ジョン・オンドラジックとかいう人を中心にした3人組らしい。今年出た
     本作は2ndにあたるそうだ。店頭で見かけたジャケットとPOP(よく覚えてないけど、
     エルトン風とか何とか書いてあったような...汗)が気になって買ってみた。音的には、
     アコースティックな感触のイマドキのロックという感じかな。音がとてもクリアで良い。クレジ
     ットを見る限り、打ち込み等は使っていないようだ。曲はほとんどオンドラジックが書いて
     おり、どの曲にもそこはかとなく漂う寂寥感がなかなか。某誌の記事によると、ユニット名
     の通り、静かな怒りをぶつけている歌詞が多いらしい。確かに攻撃的な音ではないが、
     その寂寥感と淡々としたボーカルや演奏に、とても内省的な物を感じる。はっきり言うと、
     ハートを鷲掴みにされてしまったという訳でもないし、斬新な事をやっている訳でもない。
     でも、何か惹かれる物がある。ついついCDに手を伸ばし、気がつけばハマってしまう、
     そんなタイプの音楽なのかもしれない。てな事を考えつつ、この所毎日このアルバムを
     (少しづつだけど)聴いているのである。しばらくすると愛聴盤になっているかも(既に
     なってたりして...笑)

NOTE 2004.10.16



 BOOKS手紙/東野圭吾
     今や長者番付に入るベストセラー作家であり、何故か直木賞候補の常連でもある東野
     圭吾の、昨年出版されていた作品である。一年以上も経ってからやっと読んだのだが、
     久々に感動してしまった。彼にとっての新たな代表作ではなかろうか(余談だが、この
     作品も直木賞候補になっていたが見送られた。訳分からん。既に有名作家となって
     しまった東野圭吾には、もう直木賞なんて必要ないのではないか)
     内容については、ご存知の方も多いだろう。強盗殺人犯の弟になってしまった青年が、
     生き方を模索するする話だ。両親は既になく、兄に養って貰っていた彼は、兄が逮捕
     されると同時に天涯孤独となり、大学進学も諦めて生活の為に働こうとするが、殺人犯
     の弟という事が知れると周囲の人々の態度が変わる、という厳しい現実に直面する。
     それでも、通信制の大学に通ったりして精一杯生きていこうとするが、“殺人犯の弟”と
     いうレッテルは付いてまわり、夢も恋も諦めざるを得ない状況に追い込まれる。そんな
     弟の苦悩を知ってか知らずか、定期的に届く刑務所の兄からの手紙。兄を疎ましく思い
     ながらも、見捨てる事は出来ない弟。被害者の家族も苦しむが、加害者の家族もまた
     苦しまねばならない。そんな折り、兄の事を隠して就職した会社で、兄の事がバレて
     配置転換させられた彼に、その会社の社長が言う一言が非常に重い。「差別は当然
     なんだ・・・自分が罪を犯せば家族をも苦しめる事になる−全ての犯罪者にそう思い
     知らせるためにもね」...そして彼は苦渋の決断をする。その決断とは...
     以前テレビで“何故人を殺しちゃいけないのか”と若者に問われて、その場にいた大人は
     誰一人として答える事が出来なかった、という話を聞いたが、そんな愚問に答える必要
     はないと思うけど、もし答えなければならないのなら、代わりにこの『手紙』を読ませれば
     いい。そう思える程考えさせられる小説だ。やっぱり東野圭吾は凄い。
     この物語に終わりはない。“殺人犯の弟”の苦悩は生きている限り続いていくのである。

NOTE 2004.9.28



 MUSIC君にBUMP/ケツメイシ
     あちこちで耳にして非常に気になっていた曲なのだが、とある人に「これ誰の曲?」と
     聞いたらケツメイシだと教えてくれたので、すかさずレコード屋に走ってしまったのである。
     J−POPのシングルなんて久しぶりに買いましたよ(笑)
     で、まぁ、説明する必要なんてないのだが、70’sディスコのテイスト濃厚なポップソング
     なのである。タイトルにはBUMPとあるけど、実際にはBUMPとは違う。でも、実に楽しい
     曲だからいいのだ(笑) ケツメイシって名前しか知らなかったので、ずっとこういう音楽を
     やってきたのかどうか分からないけど、この「君にBUMP」も他3曲のC/W曲もディスコ
     の香りがプンプンする。R&Bやソウルじゃなくてディスコ、という所がミソなのだ。おそらく
     彼らは70年代のディスコなんてリアルタイムでは知らないと思うけど、その割には後追い
     特有のマニアックな雰囲気がないのがよろしい。所々で挿入されるライムもカッコいいし。
     歌詞にもおやじダンサーズのメンバーを起用したジャケットにも、ディスコという言葉から
     連想される少々淫靡な物が感じられてナイス。実に素晴らしい。という訳で、気がつくと
     ♪ば〜んば〜ん、きみじゃないっ〜、と口ずさんでいる今日この頃なんである(笑)

NOTE 2004.9.23



 MUSICTHE KINKS ARE THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY
   -SPECIAL DELUXE EDITION
     なんとキンクスのデビュー40周年を記念して、1968年の傑作のデラックス・エディション
     が出たのである。しかも3枚組!この頃はステレオとモノラルの両方のミックスが発売される
     のは当たり前だったそうで、今回のデラックス・エディションもDisc1はステレオミックス
     +α、Disc2はモノミックス+α、そしてDisc3は未発表テイクを含むレアトラック集、
     とマニアなら涙を流して喜ぶに違いない濃い〜内容なのである(笑)
     ま、僕の場合はこの『ビレッジ・グリーン・プリザベイション・ソサエティ』を聴くのは初めて
     なので、レアトラックのお宝度はよく分からないのだが(笑)、本編だけ聴いても非常に
     充実した作品である。あの高度成長の時代に、「古き良き物を大切に」なんて歌っていた
     キンクスの先見性もさることながら、一瞬ビージーズかっ?なんて勘違いしてしまいそうな
     田園フォーク風サウンドもまたGood。あまりにもフォーキーで多少物足りないかもしれない
     が、いつもの事ながら曲もいいし、これもキンクス(というかレイ・デイビス)のアナザー
     サイドだと思って聴けば、じわじわと効いてくるキンキーワールドなのである(笑) 
     当時は売れなかったらしいけど、今ならもっと受け入れられるのではないだろうか。コンセ
     プトもサウンドも。タイトル曲なんて知らず知らず口ずさんでしまう事請け合いだし。ほんと、
     奥の深いバンドだな、キンクスって。一度や二度聴いただけで分かったような顔してレビュー
     なんぞ書いちゃ失礼なんだよ、本当は(爆) という訳ですので、レビューはほどほどに
     して、この傑作をじっくり聴き込もうと思うのである。よろしかったら、皆さんもご一緒に
     イカガデスカー(笑)

NOTE 2004.9.3



 MUSICTHE SUN/佐野元春
     前回紹介した南佳孝に続いて、またしてもJ−POP黎明期から活躍するベテラン、佐野元春の
     久々の新作なのである。前作から約5年、その間複数のベスト盤や『Someday』『Visitors』
     といった旧作のアニバーサリー・エディションなどを出し、なんとTVCMにまで出演したりして
     いたので、そんなご無沙汰という感じではないのだが、デビュー以来在籍していたエピック
     を離れ自主レーベルを設立しての新作リリースであり、やはりかつての時代の寵児も色々
     と問題を抱えていたらしい。が、この『THE SUN』にはそんな沈んだ雰囲気はない。
     長きに渡り日本の音楽シーンに君臨してきた佐野元春ならではの余裕と自信に満ちた
     好盤だ(南佳孝の時も同じ事言ったような...苦笑)
     確かに、聴いてみるとかつての才気走った雰囲気とか疾走感みたいな物は希薄だ。しかし、
     吹っ切れたような穏やかで尚かつ力強いサウンド作りには、着実に年齢を重ねてきた者
     だけが持ち得る余裕を感じる。望むと望むまいと年をとれば若い頃と同じ事は出来ない。
     けれど、若いときには見えなかった何かが見えてくる事もある。彼もきっとそれに気づいた
     のだろう。年をとる=体力や感性の衰え、としか考えられず「自分からオジサンと言うよう
     になったらおしまいだ」なんて事をうそぶいている奴らには一生かかっても到達出来ない
     境地ではなかろうか。年をとるのもいいもんだ、みたいなポジティブな空気が全編に漂って
     いるのだ。もちろん、曲の出来もいい。作風は少し変わったかな、という感はあるが、
     これが今の佐野元春なのだ。決して過去にしがみつかず、かといって否定もせず、昔から
     続けてきた事に自信があるから、現在の自分のスタイルも正直に出せるのだろう。なんて
     素晴らしいことだろうか。
     という訳で、新たなる一歩を踏み出した佐野元春に拍手、なんである(笑) 今年から来年
     にかけてホーボー・キング・バンド(ドラムに古田たかしが復帰した!)を率いてツアーも
     するそうだ。彼がこのまま年をとってどんな音楽を作っていくのか、やっぱり佐野元春から
     は目が離せない。まだまだ彼は時代のトレンドセッターなのだ。という事を強く感じさせる
     新作である。

NOTE 2004.8.23



 MUSICROMANTICO/南佳孝
     ようやく出た南佳孝の新譜である。オリジナル・アルバムとしては1999年の
     『Purple In Pink』以来5年振り。その間、皆さんもご存知の通り、2枚のカバー
     アルバムとベスト盤しか出ていなかった訳で、オリジナルを作る気がないのか、
     それとも何か圧力でもかかっているのか(笑)非常に気を揉んでいた訳なのだが、
     こうして久々に“らしい”新作を出してくれたので、ファンとしてはひとまず安心、と
     いった所だろうか。
     内容については良いに決まっているので(笑)、くどくどとは触れないが、ボサノバの
     カバー・アルバムを出し、ライブでもボサノバを歌ってきた近年の活動振りが、
     そのまま反映されたような作りとでも言おうか、アコースティックな感触のサウンドを
     バックにゆったりとした南佳孝の歌い振りが心地よい。こういうの、人によっては
     “癒し系”の音楽と呼ぶのだろうな。こんな言葉、南佳孝には最も似合わないと
     思うけど(笑) 
     ま、その独特のボーカル、時流に流されない曲作り等々南佳孝の“ワン・アンド・
     オンリー”な世界が堪能出来る好盤である。正しく大人のミュージシャンによる
     大人の為の音楽であろう。この場合の大人の音楽とは、決してアップテンポの曲が
     少ないとか、シンプルなサウンドに徹しているとか、そういう表層的な部分を指して
     いるのではない。立ち位置からして違うのだ。長年の活動の末に掴んだ自分の
     音楽に対する揺るぎない自信と余裕、たとえ売れなくても自分の信念は曲げず
     いい音楽を作っていこうという姿勢、そういった境地から生まれるのが“大人の音楽”
     なのだ。そして、それこそが現在の南佳孝なのである。やっぱり“癒し系”なんて
     呼んで欲しくない(笑)
     とはいえ、ちっともオッサン臭い作りになっていないのが、この人の凄い所だ。今回も
     キリンジの堀込高樹と共作してるが、最近こういう下の世代の人たちと積極的に
     組んでいるのも、新しい感覚を取り入れようとしての事なのだろう。その点からすると、
     今回も盟友・松本隆との共作が一曲あるが、相変わらずこの人の詞は妙なコンプ
     レックスを感じさせてオッサン臭いので、イメージ悪くするから、もう組まない方が
     いいと思うんだけど、やっぱそれは言い過ぎでしょうか?(笑)

NOTE 2004.8.7



 MUSICGIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT/THE KINKS
     キンクス1981年発表のヒットアルバムである。全米アルバムチャート15位まで上がり
     年間チャートにもランクインしたのだから立派なベストセラーだ。この頃の彼らはロック
     オペラ路線からビートバンド路線に方向転換しており、このアルバムでもソリッドなロック
     バンドとしてのキンクスを聴くことが出来る。で、またそれがえらくカッコいいのだ。一時の
     ような、人をおちょくったような雰囲気もまったりとしたバンド演奏もないけど、この路線の
     キンクスも実にいい。さすがビートバンドの元祖。パンク以降のニューウェイブ旋風に触発
     されたのは間違いないと思うけど、キンクスが凄いのは決して“元祖”とか“老舗”とか
     “ベテランの味”とかを売り物にせず、あくまでも現役のバンドとして若い連中にも引けを
     取らない、時代を反映したサウンドを作っていること。80年代後半に復活し、第一線に
     返り咲いたエアロスミスにも通じるものがある。シード権もハンディもアドバンテージも
     なしで予選から参戦し、実力で勝ち上がってトップに立ったという感じ。ほんと、勢いと自信
     と余裕に満ちあふれている。ま、当時のロックンロールによく見られたパターンも結構
     使ってるけど、迎合したという感じはしないし、なんたってレイ・デイビスなんである。流行り
     のパターンを取り入れたって、最後には曲のクォリティがモノを言うのだ。どの曲も素晴
     らしい出来で、これはちょっと他のバンドにはマネ出来ないだろう。勢いだけではB面ラスト
     まで引っ張っていく事は無理なのだよ。その辺はやっぱりレイ・デイビスにはかなわない
     のだ。キンクス最高!ロックオペラ路線もいいけど、この時代のキンクスも実に素晴らしい。
     てな訳で、アリスタ時代のキンクスも揃えたくなってしまった(笑)しかし、まだRCA時代
     のアルバムも満足に揃っていないのに、さらに欲しいのが増えてしまうとはえらいこっちゃ。
     この先一体いくらキンクスにつぎ込む事になるのだろうか?
     余談だけど、このアルバム、ちゃんと聴いたのは初めてだが、少々思い出のあるアルバム
     でして(笑)、実は大学生の頃組んでいたバンドで、本作のオープニングを飾る「アラウンド・
     ザ・ダイアル」をコピーした事があるのです。あの頃は「ふ〜ん、これキンクスなんだ〜」
     ってな感じだったけど、仰々しい出だしから一転して疾走していく構成が非常に気持ちよくて、
     かなり楽しんで演奏していたものだ。当時のキンクス同様、我々もライブのオープニングは
     一時期この曲でした(笑)懐かしいなぁ。みんな元気にしてるかな(笑)

NOTE 2004.7.27



 BOOKS黒祠の島/小野不由美
     知る人ぞ知る作家だと思っていた小野不由美だが、いつの間にか長者番付の作家部門
     ベスト10に入る売れっ子となってしまった。やはり『十二国記』で稼いでいるのだろうか?(笑)
     で、この『黒祠の島』は宣伝文によると、著者初の本格推理だそうだ。3日で戻ると言い
     残して姿を消した女性ライターが、3日を過ぎても戻らず、友人の探偵(便利屋?)がその
     行方を追ううち、“夜叉島”なる島に渡った事をつきとめ、自分も島に渡るが彼女の足取り
     は途絶えており、手懸かりもない。そんな中、彼女が島へ渡った頃とほぼ同時期に女性
     の惨殺死体が発見されていた事を彼は知る。死体は果たして探し求める彼女なのか。
     それとも別人か。本土から孤立し古来からの因習が残る“夜叉島”で、口の固い住民を
     相手に彼の孤独な捜査が始まる。そして、恐るべき真相が...なんて書くと、どこにでも
     ありそうな本格物って感じだけど(笑)、殺人を犯した者に天誅を加える、という“馬頭さま”
     の伝承を絡めつつ、論理的に謎が解き明かされていく過程は実にスリリングで読み応え
     がある。オカルトチックな方向に流れていかないのも潔い。舞台が舞台だし、作者は
     『十二国記』の人だし、ってんで伝奇的な展開を期待する人もいるだろうが、ちゃんとした
     推理小説である。ラストの展開は意表をつかれたが、論理の破綻はないのでちっとも気に
     なりません(笑) ほんと、面白いので、自信を持ってお薦めします。くどいようですが、
     立派な推理小説ですよ(笑)

NOTE 2004.7.11



 MUSICJETHRO TULL LIVE BURSTING OUT
     ジェスロ・タルが1978年に発表した2枚組ライブ・アルバムが、デジタル・リマスターで
     再発された。はっきり言って凄い。凄すぎるぞジェスロ・タル。こんな凄いライブ・アルバム
     久しぶりに聴いた。1978年と言えば、僕が高校に入った年。当時、僕がこのライブを
     聴いていたら、衝撃・感動・興奮その他諸々で口がきけなくなっていたであろう。今でこそ、
     年もとり色々な物を聴いてきたから、口がきけなくなるまではいかないが、それでも凄い。
     僕は、本や雑誌を読んだりパソコンをいじったりしながら、CDを流す事が多いのだが、
     今回ばかりは読んでる本の内容が全く頭に入ってこなかった。このライブ盤があまりに
     凄すぎて、ながら聴きを許さないのだ。このCDは絶対に車を運転しながら聴いては
     いけない。彼女を口説く時のBGMにしてもダメだ。そんなシチュエーションで聴いたら、
     取り返しのつかない事になってしまう。
     何がどう凄いのかって、説明するのももどかしいが、演奏も構成も熱気も、何もかもが
     凄いのだ。冒頭のジェスロ・タルを紹介するアナウンスに続いて、間髪入れずに飛び出して
     くるギターとフルートの8分の刻みを聴いた瞬間から、もう息をもつかせぬ怒濤の展開だ。
     言ってる事が意味不明だけど、最初はハードな曲で押して中盤はアコースティックな曲を
     並べ、そして後半からエンディングにかけては、超絶技巧と変拍子と叙情的なメロディが
     入り乱れるプログレ大会で圧倒する、この構成も実に素晴らしい。しかし、観客もただ
     圧倒されているだけではない。各曲の決めのフレーズなんかを一緒に歌ったりして見事
     に応酬するのだ。なんと素晴らしい事か。バンドと観客が一体となって作り上げるライブ
     の醍醐味、そして、それを完璧にパッケージしたライブ・アルバム。実に素晴らしい。やっぱ、
     ジェスロ・タルって凄い。もう、この世界からは抜け出せない。と、ため息をつきつつ、
     手は知らず知らずのうちにCDに伸びているのであった。ほんと、凄いよ。

NOTE 2004.7.4


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