最近のお気に入り
(バックナンバー27)
CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。
=音楽関係
=書籍関係
=映像関係
さいえんす?/東野圭吾
東野圭吾続きですいません(笑) こちらは雑誌に連載されたエッセイをまとめたもので
文庫オリジナル、去年の暮れ出たらしい。全然知らなくて、ふと店頭で見つけて衝動買い
してしまった(笑) 東野圭吾自身が理工系出身ということで、こういうタイトルがついた
のだと思われるが、社会・時事問題から野球・血液型に至るまで幅広く語られており、
彼の深い見識と論理的な思考に感嘆してしまう。それでいて、肩の凝らない読み物になって
いるのがすごい。自分のブログもこうありたいな、とつい憧れてしまうのである(爆)
中味についてちょっと触れると、数学という学問の意義と必要性について語っているエッセイ
があるが、日本では数学の地位が低く軽視されている、という一文を見て意外に思った。
僕は文系だけど(だからこそ)、数学の出来る人は昔から尊敬してたけどな。いや、僕だって
数学は決して嫌いではなかった。出来なかった(成績が悪かった)だけだ。理系に進む
なら工学部より数学科にしたであろう。そっち方面がダメなので文系に進んだのだが(笑)
エッセイにあるように、数学の好きな人を変人扱いなんてしないし、数学出来ないのがフツー
なんて感覚もない。でも、科学者には企業のスポンサーがつく場合はあるが数学者には
ない、というのを読んだりすると、そんなものなのか、と思う。考えさせられます(笑)
とこれだけですいません。あとは読んで下さい(爆)
NOTE 2006.1.8
容疑者Xの献身/東野圭吾
またしても凄いとしか言いようのない大傑作である。東野圭吾って人はどれだけ傑作を
モノにすれば気が済むのか。去年出版され、各方面て大絶賛を浴び、年末の各社ベスト
テン企画で軒並み一位を独占した、文字通り2005年ぶっちぎりの話題作であり傑作。
とにかく凄い。素晴らしい。遅れて読んだ僕であるが、読み終わった時に涙してしまった。
別に感動的なフィナーレとか悲しい結末というのではない。映画でも音楽でも小説でも
そうだけど、あまりに素晴らしい作品に接すると、感動のあまり目頭が熱くなってしまうって
経験はありませんか? 滅多にないけど、この『容疑者Xの献身』は大げさでなく、そういう
作品だ。この小説を読み終えた時ほど、本を読まない人或いは読むけどこの作品に感動
出来ない人を、心底気の毒に思った事はない。こういう素晴らしい小説を読む為に人は
生きているのだ、と言いたくなってしまうくらい、凄い小説なんである。東野圭吾といえば、
僕はかつて『分身』『天空の蜂』『白夜行』といった小説を読んで感動のあまり涙したけど、
一人の作家に何度もやられてしまうなんて、ほんと凄いことだ。生涯の傑作と呼んでも
いいような小説を、一人で何作も書いているなんて...
内容についてはご存知の方も多いと思う。高校教師をしている天才数学者が、アパート
の隣室に住む母娘の犯した殺人の隠蔽工作を買って出る、という話だ。彼は死体を偽造し
母娘のアリバイも完璧に構築して、警察の追求を逃れるべく綿密な計画を立てる。そこに
立ちはだかるのが、彼の大学時代の旧友である物理学者である。この男も天才なのだ
(東野作品に何度も登場している)。冒頭で殺人事件があった、という事しか読者には
明らかにされず、警察だけでなく読者もそのトリックに翻弄されていく。東野圭吾自身が
「自分が考えた生涯最高のトリックです」と言うだけあって、明かされていく過程も含めて
実に見事なのであるが、人はここまで自分を犠牲にしても他人に尽くせるものなのか、
という重い命題も心に響いてくる。やや意表をつくラストも涙を誘う。感動させてやろうとか、
涙を流させてやろうとか、そういうセコい了見は全くなく、見事なまでのプロットとトリック
そしてプロ作家としてのテクニックで、最後まで読ませてしまうのが、いつもの事ながら
素晴らしい。とにかく買って読んで下さい。こんな凄い小説を堪能できるのなら、1600円
(税別)は安いもんです。いや、安すぎる(笑)
NOTE 2006.1.4
COUNTRY BOUQUET−DISCO PARTY/PERCY FAITH
今となっては信じられないが(あ、また使ってしまった)、かつて日本ではイージー・リスニ
ングという音楽ジャンルが大人気だった。このイージー・リスニングというのは決して死語
ではなく、タワー、HMVといった量販店に行くと隅の方にコーナーが作ってあったりするし、
アマゾンでもイージー・リスニングというカテゴリーがちゃんとある。ただ、昔(30年くらい
前かな...)ほど人気がない、というだけ。で、イージー・リスニングとは何か、よく知らない
若者の為に説明しておくと(笑)、主にオーケストラで演奏されるインストを指し、クラシック
とは違い、誰もが知ってる映画の主題歌とかヒット曲とかを、リズムセクションも加えた
オーケストラ用にアレンジして聴かせる音楽のことを言う。ムードミュージックなんて呼ば
れる事もあり、その呼び名からも想像出来るように、ソフトで上品で邪魔にならないのが
特徴。なので、同じオーケストラでもラテンやサンバ或いはジャズあたりはイージー・リス
ニングとは言わない。気楽に聴けなければならないのだ。今でも喫茶店やデパートなどで
BGMに使われる事が多いので、イージー・リスニングという言葉は知らなくても、ほとんど
の人がどこかで耳にしているはずである。
で、前置きが長くなってしまったが、そのイージー・リスニングの代表格と言えるのが
ポール・モーリアであり、今回紹介するパーシー・フェイスである。どちらも作・編曲・指揮
をこなすバンドリーダーで、その名を冠したオーケストラを率いてレコーディングやコンサ
ート活動をしていた。特にパーシー・フェイスは1950年代から活動しており、1960年
には「夏の日の恋」を10週連続でビルボードのNo.1に送り込んでいる重鎮だったのだ
(1976年没)。彼のサウンドの特徴は流麗なストリングスで、そのストリングスが主旋律
を華麗に歌いあげるスタイルで長い事やってきたが、70年代に入る頃から、電子楽器の
導入、リズムの多様化、ロック・ソウル系に接近する等々の試みを行い、ディスコ・サウ
ンドも取り入れるなどして新たなサウンドを模索し始めた。その集大成と言ってもいい
のが1975年の『Disco Party』なのである。今回紹介するCDは、その『Disco Party』
と、チャーリー・リッチ、アン・マレー等カントリー系歌手の曲を集めた、やはり1975年の
『Country Bouquet』の2in1であるが、昔ながらのスタイルで聴かせる『Country
Bouquet』はともかく、後半の『Disco Party』は実に良い。踊る為のレコードという
感じではなく、あくまで聴くものだが、ダンサブルな曲調に絡むストリングスが心地よく、
フィリー調やファンク調もあったりして、大変上質なインスト・ミュージックになっている。
当時としても決して斬新な音楽ではなかったし、刺激が少ないので退屈に感じる人も多い
と思うが、こういった音楽にこそ編曲者のセンスが息づいている訳で、やっぱりバカには
出来ないのだ。パーシー・フェイスはイージー・リスニングの人たちの中では、ほとんどの
作品がCD化されており、比較的入手しやすいので有り難い。某タワーレコードにたくさん
置いてあるのを発見したので、何枚か買おうと思っている。皆さんもたまには、こういう
音楽に触れてみるのもいいんではないかな(笑)
いかん、長くなってしまった(爆)イージー・リスニングについては、自身の思い入れもあるし、
改めてどこかで書かせて貰うことにしよう(自爆)
NOTE 2005.12.26
SWEET FANNY ADAMS/SWEET
今では信じられないだろうが(最近こういうフレーズ使う事が多い-_-#)、かつてスイート
は凄い人気だったのだ。1975年から76年にかけて、ラジオで「Fox On The Run」
が流れなかった日はないと言っていい。それくらい人気だったのである。76年には来日
公演も行って、やはり大盛況だった。大げさでなく、クイーンと人気を二分していたのだよ。
そのスイートの1974年のアルバムがこれ。UKオリジナル盤の9曲に「Ballroom Blitz
(ロックンロールに恋狂い、の邦題でお馴染みだね)」「Blockbuster」といったシングル
曲6曲をボーナストラックとして収録した全15曲。古臭い言葉で恐縮だが、正にゴキゲンな
一枚なのである(笑)
彼らは60年代末期に結成されたが泣かず飛ばずで、チン=チャップマンのプロデューサ
ー・コンビが手掛けるようになってから売れたのは有名な話。時まさにグラム・ロック全盛期、
ゲイリー・グリッターやスレイドと並んでグラムの代表格となるが、ブーム終焉後はセルフ・
プロデュースの道を歩んでいく。この『Sweet Fanny Adams』はその過渡期に出た
アルバムで、プロデュースこそフィル・ウェインマンだけど、オリジナル盤に収められた
9曲中6曲までが彼らのオリジナルだ。ワイルドでスピーディーなハードロックを聴かせる
「Set Me Free」「Sweet FA」といったオリジナル曲と、ポップなブギ・ロックンロール
感覚に溢れたチン=チャップマン作品とが違和感なく同居して、実に小気味よく爽快な
ロック・アルバムなんである。ちょっと垢抜けない雰囲気はあるけど(笑)またそこがスイート
らしくて良いのだ。これだけ分かりやすくてスカッとするハードロックなんて、今じゃ聴けな
いよ。キッスも真っ青のキャッチーさだ。日本でウケたのも納得。スイートは次作から、
ついに「Fox On The Run」の大ヒットを出し、黄金期を築くのだが、その前祝いと
言えるような本作、スイートの魅力たっぷり、尚かつアイドル的バンドから本格派へ変貌
していく彼らのしたたかさも窺い知る事の出来る好盤である。70代ロック好きを自称する
なら絶対聴け!(笑)
NOTE 2005.12.21
CAPTAIN FANTASTIC AND THE BROWN DIRT COWBOY
DELUXE EDITION/ELTON JOHN
個人的にはエルトンの最高傑作と信じる1975年のアルバムのデラックス・エディション
が発売された。発表から30年(もう終わるけど)を記念してのリリースだ。快挙である。
このアルバムに関しては、当サイトの「名盤100選」でも取り上げているし、うだうだと書く
事は控えたいと思うが、楽曲・アレンジ・演奏・歌唱・アイデア・構成・録音・アートワーク
どれをとっても最高のレベルにあり、正に完璧と呼ぶべきアルバムなのである。僕にとって
は名盤中の名盤、生涯で5枚、と言われたら、間違いなく選んでしまうであろうアルバム
であり、もう何百回となく聴いたような気がするのだが、いつ聴いてもあまりの素晴らしさ
に涙してしまうという、奇跡のようなアルバムなのだ(結局うだうだと書いてる)。
ま、そんな名作の2枚組デラックス・エディションな訳だが、白眉は何といってもDisc2に
収められたライブ・テイクであろう。アルバムのリリース直後の1975年6月21日のウェン
ブリー・スタジアムでのライブなのだが、なんと出たばかりの本作の全曲を演奏している
のだ!しかも、アルバムと同じ曲順で!(本当にこの曲順で演奏されたのかどうかは不明
だけど) 驚くべき事に、出たばかりだというのに、どの曲もライブらしいアレンジとノリで、
スタジオ・テイクとはまた違った雰囲気になっている。バンドのメンバーのうち2人を除いて
は本作のレコーディングに参加していないのに、短期間でここまでやってしまうとは。これ
は凄い事だ。メンバーたちも凄いけど、それだけの演奏をさせてしまう魔力がこのアルバム
の曲にある、という事ではないか、とも思う。ほんとに素晴らしい。30年を経ても色褪せない
楽曲の魅力。ヒット曲が多いエルトンからすると、地味な曲ばかりと思えてしまうのもまた、
このアルバムの凄さを物語っている。どんな言葉を使っても語り尽くせない、底知れぬ魅力
がこのアルバムにはあるのだ。何を言っても虚しいので、もう止めよう(笑) 結局素晴らしい
としか言いようがないのだから。
つー訳で、今夜もまたこのアルバムを聴いて涙するのである(笑)
NOTE 2005.12.14
CONFESSIONS ON A DANCE FLOOR/MADONNA
マドンナ2年振りの新作はノンストップ・ディスコ・アルバムである。といって、あのマドンナ
が70年代や80年代のディスコに回帰するはずもなく、正しく21世紀の現在のディスコ
なのである(最近ディスコ行ってないから分からないけど)。シングルカットされた一曲目
の「ハング・アップ」では、アバの「ギミー・ギミー・ギミー」がサンプリングされているが、
これが懐かしさを誘うかというとそうではなく、マドンナが描き出す21世紀のディスコと
妙にマッチしている。よく考えてみると、アバの曲やサウンドには無機質というかクールな
感触があり、それがデジタルなビートととても相性がいいのだ(そういえば、一世を風靡
したユーロ・ビートもどこなくアバっぽかった)。最先端には鼻が利くマドンナのこと、そんな
事にはとうに気づいていたのだろう。ま、この事を含めマドンナの面目躍如と言えるアル
バムだ。音の感触こそ違え、いつの時代にもディスコに共通する淫靡な雰囲気はたっぷりで、
そこに近頃のマドンナの特徴でもある哀愁漂うメロディが絡んでくると、聴いたような音
でもマドンナのオンリー・ワンな世界となる。加えてジャケットも素晴らしい。う〜む、47歳
にはとても見えないなぁ(笑) 大したもんだ。やっぱりマドンナは凄い。
NOTE 2005.11.29
BAD COMPANY IN CONCERT:MERCHANTS OF COOL
先月のクイーン(ブライアン、ロジャー)との来日公演でのポール・ロジャースは、ほんと
素晴らしかった。実際に会場で彼の歌を聴いた人たちの大半は、その素晴らしさにノック
アウトされてしまったようで、これを機にポール・ロジャース人気が再燃する事に期待したい
ものだ。
さて、そのポール・ロジャースといえば、何と言ってもバッド・カンパニーなんだが(笑)、
ライブ盤が出ていたとは知らなかった。しかも、これ2002年の録音ということで、つい
最近じゃん!(爆) バドカンは、1999年に2枚組のアンソロジーを出しているが、その時
オリジナルメンバーが久々に集まって新曲をレコーディングし(このアンソロジーに収録
されている)、ツアーも行ったそうだが、その再編も一時的なもので、その後の動向は
知らなかったけど、しっかりとバドカンとして活動していたのだ。なんと喜ばしいことか。
このライブでは、残念ながらオリジナルメンバーはポール・ロジャースとサイモン・カーク
だけだが、曲は当然のことながら往年のバドカンの名曲ばかりだし(何故か「オール・
ライト・ナウ」もやってるのが可笑しい)、なんといってもポール・ロジャースの衰えを微塵も
感じさせない歌いっぷりが素晴らしく、アマゾンのレビューで「何も知らずに聴いたら、
70年代の発掘音源だと勘違いするだろう」と言ってる人がいたが、正にその通り!ほんと、
あの当時と全然変わってないのだ、ポール・ロジャースは。すごい。サイモン・カークも
若々しいプレイで感激だし、ギターとベースの若手がとても落ち着いたプレイ故、却って
ベテランみたいに聞こえてしまうくらい(笑) ポールとサイモンの若さが余計に際立って
しまうのだ。20年ばかしタイムスリップした気分(だんだん言ってる事が無茶苦茶になって
きた...) 「バーニング・スカイ」で始まるオープニングもカッコいいし、「キャント・ゲット・
イナフ」「ムービン・オン」といったノリのいい曲に混じって、「レディ・フォー・ラブ」をじっくり
と聴かせるのもニクい。ビートルズの曲を歌い込む「ロックンロール・ファンタジー」も楽しく
ていいし、実に素晴らしいライブ盤である。演奏自体もノリノリで、ポール・ロジャースも
気持ち良さそうに歌っている。若手も実力派のようだし。ミックスのせいか、ベースが貧弱
に聞こえるのが難点だが、大したこっちゃない(笑) また、最後に収められたスタジオ
録音の新曲が、これまた良い出来なのだ。少なくとも、前述のアンソロジーに入ってた
新曲よりは数段良い。今後のバドカン及びポール・ロジャースの活動に、大きな期待が
持てる内容なんである(その後、クイーンと合体しちゃったけど...爆)
ま、とにかく、文句なしのライブ盤であるので、昔からのバドカンやポール・ロジャースの
ファンも、クイーンのライブで初めてポール・ロジャースを見て圧倒された人も、迷わず
“買い”である。いや、しかし、ほんと、ポール・ロジャースっていいな。素晴らしい。正に
英国ロック界が生んだ最高のシンガーである。みんなもそう思うでしょ?(爆)
NOTE 2005.11.8
A BIGGER BANG/THE ROLLING STONES
今さら・・・という感じがなきにしもあらずだが(笑)、ローリング・ストーンズ8年振りの
新譜である。で、これも今さらだが、実に良いのだ。あちこちのメディアで語り尽くされて
いるので、うだうだ書くのは止めるが(笑)、とにかく良い。カッコいい。8年前の前作
『ブリッジス・トゥー・バビロン』はヒップホップ系の(当時の)旬のプロデューサー達と作り
上げた、ストーンズ(というかミック・ジャガー)の優れた時代感覚溢れる傑作だったが、
本作はキース・リチャードのギターをメインとしたバンドサウンドに立ち返り、若々しくも
ふてぶてしい演奏を聴かせる。70年代前半つまり『メイン・ストリートのならず者』を思い
起こさせるという声もあるが、自分たちの黄金のパターンはしっかりと踏襲し、尚かつ
新しい感覚で聴かせるなぞ、ストーンズならではの芸当だろう。今回は特にゲスト等は
なく、プロデューサーのドン・ウォズと共にあくまでストーンズ主体で作られていて、そこいら
にまた40年以上も第一線で活動してきた自信と余裕を感じてしまうのだ。ほんと、凄い
バンドである。ベテランは死なず。ここまでやられたら、若造どももひれ伏すしかなかろうて。
のっけから“らしい”リフが炸裂する「ラフ・ジャスティス」をはじめ、収録曲も粒揃いで
文句なし。新たなスタンダードが本作からも何曲か生まれるのだろう。どの曲がお薦め
かなんて絞りきれないほど、素晴らしい曲が並んでいる。「ストーンズなんて今さら...」
なんて人もいるだろうけど、是非聴いて下さい。ほんと、いいです。まだまだストーンズは
“伝説”にはならんぞ(笑)
NOTE 2005.10.19
WILDFLOWER/SHERYL CROW
なんと、最近結婚したというシェリル・クロウ(別に驚くことはあるまい)の、スタジオ録音作
としては3年半振りの新譜である。新婚というせいでもなかろうが、これまでのアルバム
とは随分と雰囲気が違う。というのも(ここからはライナーの受け売り)、彼女は当初2種
類のアルバムを同時リリースしようと考えていたそうで、それはポップなものとアーティス
ティックなものの2種類なのだが、結局アーティスティックな方が先に世に出る事になった
らしい。それが本作であり、ポップな方は来年出るそうだ。雰囲気が違うのは、そこいら
の事情に依る。
ま、つまり、これまでのシェリルの特徴だった、やや下世話なキャッチーさがかなり薄れて
いるのだ。“女一人ストーンズ”みたいな曲もない。ほとんどの曲が、アコギを中心とした
シンプルなプロダクション(オーケストラが入ったりもするけど)で、シェリルのボーカルも
大人しい感じ。派手なアレンジの曲もあるけど、全体的になんとなく内省的な雰囲気が
漂っていて、ちょっと拍子抜けする人もいるだろう。このアルバムでのシェリルはロッカー
ではなく、シンガーソングライターのようだ。考えてみると、これまでのシェリルのアルバム
にも、キャッチーな曲に混じってこういった内省的な雰囲気の曲は必ず収録されていて、
それがアルバムのアクセントになっていた。また、それらの曲は、彼女のポリティカルな
思想が投影された曲が多く、単なるロッカーではない彼女の別の一面を伝えていた訳で、
そういった異なる要素が混じり合う事で、深みのあるアルバムとなっていたのである。
今回の『ワイルドフラワー』は、そんな彼女の“別の一面”をアルバム一枚に拡大したもの
だと言ってよかろう。正に、シェリルのアーティスティックな作品集だ。やや物足りない感
もあるけど、味わい深いアルバムと思う。時間をかけてじっくりと聴くべし。
NOTE 2005.10.2
RETURN OF THE CHAMPIONS/QUEEN + PAUL RODGERS
巷では話題騒然(笑) 突如合体してツアーを開始したクイーン(ブライアン、ロジャー)と
ポール・ロジャースが、10月から11月にかけて来日公演を行うのである(何故、大阪
公演がないのだ...まだ言ってる...苦笑)。スタジアム級の4会場でのチケットも
快調に売れているようで、喜ばしい限り(噂では、追加公演もあるとかないとか)。そんな
彼らの、今年5月のシェフィールドでのライブ盤が来日記念盤として発売された。イヤでも、
約一ヶ月後に迫った来日公演に向けて、盛り上がってしまう内容ではあるのだが...
今回の再結成(?)に関しては、ポール・ロジャースはフレディの代役という見方をする
ファンが多いと思うが、僕個人としては、それはポール・ロジャースに対して大変失礼で
ある、と思っている。しかしながら、このライブ盤を聴いてみると、それも仕方ないのか、
という気もしてしまう。もちろん、ポール・ロジャースはポール・ロジャースであって、その
実力と個性を十二分に発揮し、クイーンの曲に全く新しい生命を吹き込んでいると言える
だろう。しかし、曲目といいショーの構成といい、ここで聴かれるのは誰がどう見ても
“クイーンのライブ”でしかない。ポール・ロジャース関連の曲は、全27曲のうち5曲だけだ。
ポール・ロジャースは、やはりクイーンのライブを再現する為に呼ばれたのか。本人は
それでいいのか。クイーンもポール・ロジャースも大好きな僕としては、かなり複雑な心境で、
このライブ盤を聴いているのである(笑)
とはいえ、本当に素晴らしいライブ盤と思う。臨場感たっぷり、気合と熱気のこもった
演奏もGood。途中にブライアンやロジャーが歌う曲を挟んだショーの構成もいいし、
久々にロジャーがドラムソロを披露しているのも嬉しい。バンドのノリも素晴らしく、
クイーン的な音ではあるけど、ポール・ロジャースと全く違和感がないし、またフリーや
バドカンの曲も意外といい雰囲気で聴かせる。ブライアン、ロジャー、ポール・ロジャース、
そしてサポート3名との相性は抜群ではなかろうか。やはり、これは“新生クイーン”では
なく、新しいバンドの誕生と捉えたい。是非、このメンバーで新曲を発表して欲しいものだ。
と熱望してしまうほど、素晴らしい演奏を披露している。
クイーン・ファンにとっては、「ボヘミアン・ラプソディ」でフレディを登場させるという、やや
反則気味(笑)な演出もあり、大満足であろう。このライブ盤を聴いて、来日公演への
期待は高まる一方だが、反面手の内が分かってしまった感もあるので、ちょっと残念(笑)
来日公演直後に出してくれても良かったのになぁ、と一瞬思ってしまいました(爆)
NOTE 2005.9.19