最近のお気に入り
(バックナンバー28)
CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。
=音楽関係
=書籍関係
=映像関係
グレイヴディッガー/高野和明
最初に言ってしまうが、これは面白い。とにかく面白い。何が何でも面白い。コイツの書評(笑)は
いつも「面白い」だけではないか、とおっしゃる方も多いとは思うが、面白いんだから仕方がない。
これほど文句なく面白い小説には滅多にお目にかれない、というくらい面白い。嘘だと思うなら
読んでみなさい。えっ?とっくに読んだ?これはどうも失礼しました(爆)
小悪党・八神俊彦は、これまでの悪行を悔い改めるべく骨髄ドナーとなり、白血病患者に骨髄を提供
する日を目前にして、殺人事件に遭遇し、警察と犯人グループの両方から追われる羽目になる。ここ
で捕まる訳にはいかない、何故なら俺の骨髄を待っている患者がいるからだ、と彼は追手をかわし
つつ病院へ向かう。と、時を同じくして次々と起こる殺人事件。被害者たちに共通点はない。だけど、
皆実に奇っ怪な殺され方をする。警察があれこれ調べるうちに、事件は意外な展開を見せていく。
事件の背後に見え隠れする巨大な国家権力。真実に近づいたベテラン刑事は、事件が闇に葬り
去られる事を恐れ単独行動に出る。そして、知らず知らずのうちに事件の鍵を握る存在となった八神
にコンタクトを取る。一方、相変わらず見えない敵に阻まれ、病院に辿りつけない八神は、少しづつ
真実に気づき始める。そして、ついに巨悪との対決が。犯人は誰だ。何故、一見何の繋がりもない
人たちを次々と殺していくのか。背後に誰がいるのか。グレイブディッガーとは何者だ。何故、八神は
追われるのか。しかも、追手たちは彼にトドメを刺さないのは何故だ。とにかく、謎が謎を呼び、手に
汗握る展開は、小説が終わるまで読者を捕らえて離さない。この本を手に取った貴方は、きっと
寝不足になるでしょう(爆) と、なんだかんだ訳分からん言ってるけど、とにかく面白いのだ。
読め!(爆)
と、相変わらずレビューになってないけど、八神の逃走劇もスリリングだし、次々と謎が解き明かされ
ていく過程も実に爽快だ。公安部vs刑事部なんていう警察内部の権力抗争も興味深く書かれている。
第三種永久死体・中世暗黒時代・謎のカルト集団等々の、いかにもスリラーな単語も実に効果的。
とにかく面白い。それしか言いようがない。読み応え十分。図書館で借りてもいいから、とにかく
読め!(爆)
NOTE 2006.4.17
SOLITARY ROAD/KYLE VINCENT
先月ファンの招きで来日し、大阪・京都・東京・広島の4箇所でライブを行ったカイル・ビンセントで
あるが、長年の夢だったという日本でのライブを果たすと共に、各地でのファンの人たちと交流を
持ち、彼にとってもファンにとっても、非常に有意義なツアーとなったようだ。僕も京都でカイルのライブ
を見たが、透き通るような声と印象的なメロディが素晴らしく、ついCDを買ってしまった訳で(笑)、
その京都のライブでも演奏され、個人的に一番気に入った曲「You Will Dance Again」も収録
された本作、ライブで見たイメージそのままのアルバムだ。どの曲も簡素でメロディを際立たせるよう
なアレンジで、その声の魅力と相俟って、どっぷりとカイルの世界に浸ることが出来るのは間違いない。
ほんと、とにかくメロディがいい。惚れ惚れしてしまうくらい。聞く所によると、カイルはビートルズや
エリック・カルメンに大きな影響を受けているそうだが、それが非常に納得できる内容だ。メロディが
いい、なんて言うと、バラードばかりじゃないのか、と思う人もいるだろうが、ポール・マッカートニーや
エリック・カルメンがそうであったように、スローな曲でもアップテンポでも、素晴らしいメロディを聴か
せているのだ。しかも、センチに流れないのがいい。バラード・タイプの曲でも、近頃よく耳にする
ベタベタな大甘ソングなんて全然ない。いいメロディと甘ったるいメロディを勘違いしている輩が最近
多いが、カイルは全くそういうのはないから大丈夫(笑) とてもバラエティに富んだ内容で、しかも
いいメロディ満載で、尚且つアーティストとしての主張も感じられる。素晴らしいアルバムだ。残念な
がら、あまり知られてないけど、実は才人なのだよ、カイルは。この『Solitary Road』愛聴盤に
なりそう。カイル・ビンセントというミュージシャンを知るきっかけを与えてくれたBrandaさんに深く
感謝しなければ(笑)
NOTE 2006.4.7
THIRD/SOFT MACHINE
こないだブログにも書いたソフト・マシーンである。この『3』は1970年発表、タイトル通り彼らの
3作目にあたるアルバム(日本盤ライナーによると、正規のデビュー盤発表前にお蔵入りとなった
アルバムがあるそうなので、正確には4作目か)で、ブログにもあるライブ盤と同じメンバーで
レコーディングされているのと、そのライブに入っていた曲が2曲(「フェイスリフト」「アウト−
ブラッディー−レイジャス」)収録されているので買ってみたという次第。うむ、実に素晴らしい。
発表当初は2枚組で一面に一曲づつの4曲入り、という長尺曲ばかりなのだが、前にも書いた
ように非常に聴きやすいのだ。ジャズの方法論を取り入れた演奏はスリリングだし、曲構成も
印象的なリフを配して飽きさせない。また、ボーカル入りの曲が一曲あるのだが(「6月の月」)
これがとにかく素晴らしいのだ。曲調に合わせメロディが自在に展開していく様は、正にプログレ
(笑) 出だしの歌メロとオルガンのユニゾンなんて、ゾクっとする。この曲はあまりジャズっぽく
なくて、サイケというのもヘンだし、ちょっとポップだし、やっぱプログレとしか言いようがない(笑)
ま、とにかく、素晴らしいので、ソフト・マシーンって難解なんじゃないか、という印象を持って
おられる人に特にお薦めしたい。
NOTE 2004.4.4
リアルワールド/桐野夏生
またしてもやってくれました、ってな感じの傑作である。母親を殺して逃亡する男子高校生と、彼に
関わる4人の女子高生の内面を、独白形式で綴る事で物語を進行させていく。その独白部分が
なかなか凄いのだ。外面とは異なる内面(暗部といってもいいのか)をこれでもかとえぐり出し、
徹底的にさらけ出してみせるけど、本人も(読者も)結局自分が何者なのか、分かってるようで
分かってない。でも、人間なんて皆そんなものではないのか、なんて思う。年は関係ない。ここに
登場する高校生たちも、自分の内面であれこれ考え、自分の行動に正当性を持たせようとしている
けど、それが無駄な事だというのもなんとなく察している。そんな中で、必要に応じて適当に結論を
出して、現実と折り合いをつけて生活している。大人も子供もみんなそうではないのかな。人間の
生き方に正解なんかはありゃしない。
この4人の女子高生、ひとりは隣家の男子高校生が母親を殺して逃げた事に気づき、しかも自転車
と携帯を盗まれたにもかかわらず、警察には通報しない。ひとりはその男子高校生とコンタクトを
取り、自分の自転車と携帯を与えて逃亡を助ける。ひとりは彼に接触し、行動を共にしたあげく
タクシー強盗に失敗して事故死する。最後のひとりは、仲間が殺人犯と一緒にいる場所を警察に
タレ込み、その仲間の死を知って自殺する。なんで自分がこんなことをしてるのか、誰にも答えは
分からないまま結末に向かって走り続ける。馬鹿なことをして、と大人は言うのだろうが、彼女たち
には理解出来ない。流されるまま、結果として犯罪に加担する彼女たち。でも、これが彼女たちの
現実世界なのか。RPGでもやってるような感覚もあるが、本人たちはもっと真剣な気もする。
とまぁ、何言ってるのか、自分でも分からなくなってるが(苦笑)、面白いのは確かだ。何も考えずに
読んでも、十分に面白い。こういう小説を書いてしまうのが、桐野夏生の凄いとこだ。だから、止め
られないのである(笑)
NOTE 2006.3.23
STRONGER THAN BEFORE/OLIVIA NEWTON−JOHN
先だって3年振りの来日公演を行ったオリビア(ブログのライブレポでは2年振りと書いてしまった
...汗)の、去年出た新作がこれである。なんでも、アメリカでは通販のみで限定販売されていた
らしい。日本では、大手のユニバーサルから普通に市販されるようになったのは喜ばしいことだ。
なんたって、“永遠の歌姫”オリビアの新作なのだから(笑)
先のステージでもそうだったけど、オリビアは全く年をとっていない。このアルバムも、昔からの
オリビアのイメージそのままで、70年代から80年代の諸作と並べて聴いても全然違和感がない
のではなかろうか。かなり大人っぽい雰囲気はあるけど、声も変わらないし、ほんわかした曲調も
カントリー時代を思い出させる。柔らかな感触のサウンドも昔っぽくて、要するに今風の音ではない
のだ。残念だが、こういう音楽は現代では受け入れられにくいのだろう。アメリカで限定販売された
のも、それが理由なのだろうか。とはいえ、様々な試練を乗り越えてきたオリビアが、ヒットを狙う
訳でもなく、こうして優しさだけでなく力強さも感じさせる歌を聴かせている事自体が素晴らしい。
正に大人の為の音楽と言っていいだろう。ボサノバ風にリメイクされた「ドント・ストップ・ビリービン」
もいい感じだし、全体に落ち着きと安らぎが溢れている。あまり使いたくないが(苦笑)このアルバム
を聴いて“癒される”人も多いだろうね。やっぱり、オリビアは“永遠の歌姫”なのだ。
NOTE 2006.3.16
六番目の小夜子/恩田陸
初めて読む作家である。名前では分かりづらいけど、女性だそうだ。そして、この『六番目の小夜子』
は彼女のデビュー作らしい。
まぁ、なんと言ったらいいのだろう。ホラーっぽい味付けはあるけど、高校生の生活を生き生きと
描いた青春小説という事になるかな。舞台となっているのはとある地方の進学校で、そこに伝わる
“サヨコ伝説”を軸に物語は展開される。と書くと、よくある学園ホラーかと思ってしまうが(実は僕も
そういう小説と思って買ったのだが)、確かに謎の転校生(しかも美少女)も登場するけど、やはり
短い青春の時を(すぐに終わってしまうものと何となく知りつつも)謳歌する高校生たちが描かれて
いて、彼らが本当に魅力的だ。とてもリアリティを感じる。大人ぶってるのでも冷めてるのでも悟り
切ってるのでもない、等身大の高校生という感じ。妙に今時の高校生を描こうとしてるのではない所
がまたいい。言葉遣いもちゃんとしてるし(笑) 読んでいるうちに、自分も高校生に帰りたくなって
しまう、そんな小説だ。大人も楽しめる学園小説ってとこか。まだまだ気持ちだけは若いぞ、と思って
いるオジサン(オバサン)たちに是非読んで欲しいな。この小説を楽しめる人は、きっと悔いのない
青春を送った人だと思う。ま、とにかくお薦めです(笑)
NOTE 2006.3.3
OTHER PEOPLE’S LIVES/RAY DAVIES
あのキンクスの中心人物、レイ・デイビスのソロ・アルバムが突然発売された。ま、何も知らなかった
のは僕だけかもしれないが(笑)、最近話題が途絶えていたキンクスだけに、大変喜ばしい。意外な
事に初のソロ・アルバムなんだそうな。レイ・デイビスと言えば、2〜3年前に自宅で暴漢に撃たれる、
なんて事件があったけど、今は元気でやってるみたい。日本盤ライナーによると、彼は長い事ニュー
オーリンズに住んでいたようで、去年の洪水の時はどうしてたんだろう? なんてライナーにも書いて
あり、やはり表立った活動をしていなかったので、彼の動向は日本では特に知られていなかった
ようだ。なんとなくレイ・デイビスらしい、という気もする(笑) ま、暴漢に撃たれようが、洪水に遭遇
しようが、こんなソロ・アルバムを作るくらい元気なのだ、という事を喜ぼうではないか(笑)
で、内容はというと、意外と今っぽい作風とサウンドで、ちょっと驚いてしまった。轟音ギターとレイ・
デイビスなんて似合わない感じもするけど、聴いてる限りでは決してミスマッチではない。声も昔より
枯れたかな。かつてのRCA時代を思わせるような曲もあるが、全体的にキンクスのイメージとは
随分違うと言っていい。ただ、今風の音とはいえ、若造とは格が違うな、と思わせるあたりはさすが
レイ・デイビス。相変わらず曲はいいし、流行りの音で武装していても、年輪というか貫禄を感じる
のだ。予備知識なしでこのアルバムを聴くと、レイ・デイビスとは分からなくても、ベテランではないか、
と誰もが思うだろう。風格が漂っている、という事か。若い連中より、中年と呼ばれる世代に是非
聴いて欲しいアルバムである。
NOTE 2006.3.2
模倣犯(全5巻)/宮部みゆき
久々の宮部みゆきである。出版と同時に話題となり、映画化もされたベストセラーだが、
例によって、文庫化されるのを待っていた為、今頃ようやく読んだという訳だ(笑) とある公園の
ゴミ箱から若い女性のものと思われる腕が発見される冒頭部分から、意外な展開から真犯人が
明らかにされるラストまで、犯人・犯人の家族・被害者とその家族・捜査にあたる刑事といった、
事件に直接関わる人たちの他、様々な登場人物が入り乱れてストーリーは進んでいくが、文庫に
して全5巻という大作にもかかわらず、読者を混乱させずに最後まで一気に読ませる力量は
さすが宮部みゆきと言ってよかろう。テレビをはじめとするメディアを巻き込んで世間を翻弄する
犯人像も、どことなく今風でリアリティがあるし、他の登場人物たちもそれぞれの立場で、実に重い
セリフを吐く。実に読み応えのある力作である。
ラストで犯人が明らかになる、とはいうものの、それですべてが終わる訳ではない。理不尽に娘を
殺された親にとっては、永遠に事件は解決しないのだし、犯人もすぐ罰を受ける訳ではなく、
何十年といたずらに裁判が続けられていくのだろう。宮部みゆきは、そういった現実に対して憤って
みせる訳でも、遺族の悲しみをひたすら描くわけでも、犯人の心の闇を解き明かしてみせる訳でも
ない。救いようのない世の中で起きた救いようのない事件を、登場人物たちの証言を通じて語る
だけだ。でも、そこに著者の言いようのない悲しみと怒りを感じるのである。猟奇的な犯罪が起きる
たびに、第三者がしたり顔であれこれ分析するのが、何の役に立つのだろう。若い女性を誘拐して
殺害し、メディアで自分の犯行だと公言し、世間の反応を見て楽しんでいるこの『模倣犯』の犯人たち
も、当事者でないがゆえ、ワイドショー的な興味で事件を追いかけるルポライターも大衆も、
皆結局は同じである。「劇場型犯罪」と宮部みゆきは言う。犯人が舞台監督であり、被害者も遺族も
警察もマスコミも、すべて舞台を構成する駒なのだ。救いようがない、まったく。しかも、これが
単なる著者の想像の産物でないのが、またやりきれない。そういった意味で、ある種ヘビーな小説
でもある。
NOTE 2006.2.18
NEVER FOR EVER/KATE BUSH
うれし恥ずかしケイト・ブッシュ初体験である(笑) この『魔物語』は1980年発表、
ケイトにとって3作目にあたるそうだ。ファンの間でも名作として人気の高いアルバムらしいが、
これがほんと、素晴らしいのである。確かに名盤との評価に間違いはない。
以前にも書いたけど、僕はずっとケイトを敬遠していた。あまりにもエキセントリックで、
ついて行けない気がしたのだ。非常に個性的ゆえ熱心なファンは周りにも多かったけど、
敬遠する人も結構いた。僕もその一人だった訳で、ずっと長いこと「嵐が丘」と「ローリン・ザ・ボール」
くらいしか知らなかったし、ちゃんと聴いてみようとも思わなかった。その心境に変化があったのは、
去年11月のレコード・コレクターズの記事を読んで興味を覚えたから、というのもあるが、
長い年月を経たせいなのか(笑)、必要があって久々に聴いてみた「嵐が丘」が意外とすんなり
耳に入ってきた、というのもある。あれ、なかなかいいじゃん、と素直に思ったのだ(笑)
ひたすらエキセントリック、下手すると狂気じみているのではないか、なんて勝手に思っていた
ケイトの歌世界だが、20年以上の時を経て聴いてみると、決してそんなことはなく、それどころか
イメージや情景を喚起させる緻密な音作りが素晴らしい。曲の方も、個性的だけど印象的な
リフレインもあり、とても耳に残る。そして何より、彼女の声や唱法に全く抵抗がなくなっていた(笑)
思えば、一番苦手だったのがそこだったのに。『魔物語』も全編そんな印象のアルバムで、
決して奇を衒うのではなく、自身の感性を強調しつつ正攻法で攻め、結果として高い完成度と
説得力に満ちた作りが見事と言うしかない。言うならば、芸術性と大衆性がギリギリの所で
同居しているのだ。ここいらに70年代の香りがプンプンするのである。20年以上も敬遠してた
くせに、すっかり僕はこのアルバムに魅せられてしまったのであった(笑)
今となってようやく、かつての周囲のケイト・ファンたちが、何故あれだけ彼女に夢中になって
いたのか、が理解出来たような気がする。人の心って変わるもんなんだね(笑) 昔の偏見は
捨てて色んな物を聴いてみなければ、と改めて思う今日この頃なのだった(爆) でないと、
他にも聴き逃しているようで勿体ない(自爆)
NOTE 2006.2.12
エルトン・ジョン/ジョン・オマホニー(著)橘高弓枝(訳)
おっ、エルトンのバイオ本?と思われた方もおられると思うが、これ偕成社から出ている
「世界の作曲家」という伝記シリーズのひとつで、副題は“輝き続けるポピュラー音楽の
トップスター”となっている。実は、れっきとした子供向けの伝記本なのだ。icさんに
教えて頂いて、どうしても読みたくなり早速購入した(笑) エルトンの子供向け伝記本
だなんて...(感涙) しかも、このシリーズ他にはビバルディ、バッハ、モーツァルト、
ベートーベン、シューベルト、ショパン、チャイコフスキー、ドビュッシー、ドボルザーク、
グリーグ、バーンスタイン、ジョン・レノン、ボブ・マーリー、スティング、といったライン
アップで(スティングは???だが)、こういった重鎮たちとエルトンが同列に扱われる
とは、ファンとしては素直に驚きであり、また感動モノでもある。「ロックスターが子供向け
の伝記になってどうすんだよ」とおっしゃる向きもあろうが、タイトルに注目して欲しい。
「世界の作曲家」なのだよ。エルトンがポピュラー音楽界を代表する作曲家として、
モーツァルトやベートーベンと肩を並べている所に意味がある。一時代を築いたロック
スター、ではなく作曲家として認識されているのが嬉しいのだ。この気持ち、分かって
頂けるでしょうか?(笑)
とはいえ、偉大なるメロディメーカーであるエルトンではあるが、トップスターに上り詰めて
いくのと並行して酒やクスリに溺れ、また同性愛を公言するなど、子供向け伝記の題材
としてふさわしい人とは思えなかったので、どんな風に書いてあるのだろうと、この点でも
興味津々だったが(笑)、意外とそこいらは正直に書かれている。ただ、90年代に入って
酒やクスリときっぱり縁を切った彼が、レコードの売り上げをエイズ基金に寄付するよう
になる部分がかなり強調されているので、やはりアル中から立ち直り、世のために活動
するようになった、というのが子供向けにはポイント高いのだろう(笑) あと、枚数制限か、
彼の半生がかなり簡単に語られており、仕方ない事ではあるのだが、本文では無理でも
せめて年表くらい完全な物を載せて欲しかった、という気もする。けれど、非常に読み
やすく(なんたって子供向けってことで、文字も大きいし行間も広いしルビは振ってあるし
...爆)、親切過ぎる注釈もついてるし(「オーディション」とか「R&B」とか「ザ・ビートルズ」
とかにまで注釈が...笑)、曲名等にいくつか間違いがある(原文を読んでないので
分からないが、多分訳者のミスでは)のを除けば、大変面白い読み物である。願わくば、
子供たちだけでなく、お父さんお母さんたちも、エルトンの偉大さを理解してくれたらなぁ(笑)
NOTE 2006.1.21