最近のお気に入り
(バックナンバー33)
CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。
=音楽関係
=書籍関係
=映像関係
でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相/福田ますみ
実に気分の悪くなる本である。僕にしては珍しくノンフィクションなのだが、なんというか、読んでいて
腹が立ってしょうがなかった。不勉強にも知らなかったのだが、2003年に福岡市の小学校で、生徒
をいじめてPTSDに追い込んだ教師が六ヶ月の停職処分を受ける、という事件が起こっており、全国
初の“教師によるいじめ”として認定され、この教師は「殺人教師」と呼ばれ、ワイドショーでも頻繁に
取り上げられていたらしい。所が、この教師によるいじめ事件は、実はでっちあげであった事がその
後の裁判で明らかになったのだそうな。その事件の顛末を追ったのが本書である。
で、何に腹が立ったのかというと、全てにである(笑) ここに書かれている事が真実なのかどうかは
分からない。が、地裁で「軽い体罰の事実はあったが、PTSDなどを引き起こすようないじめは認め
られない」として、原告の訴えを却下しているのだから、いじめがでっちあげられたのは事実と言って
いいのだろう。裁判所が「体罰があった」と認定したのは、それより以前に福岡市教育委員会がいじめ
の事実を認めて被害児童側に謝罪し、教師を停職処分にしてしまったからであって、実際には原告
の100%敗訴である。しかし、腹が立つのだ。我が子が教師にいじめられている、と怒鳴り込んで
くる親、保護者と波風を立てたくないばかりに、調査をしようともせず、親の主張を全面的に受け入れる
学校(=校長)、事実無根であるなら反論するべきなのに、生来の気の弱さから何も主張できない
当の教師、親の主張と教育委員会の処分のみを信じ、裏付け取材をすることもなく「殺人教師」と
大々的に書きたてるマスコミ、親の言い分を鵜呑みにして、500人もの大弁護団を組織する人権
弁護士...こういった、事件に関わり、本書に登場する全ての人間に腹が立つ。こういう、レベルの
低い奴らばかりだから、日本の教育も報道も腐っていくのである。世も末だ。当事者一人一人が、
常識と良識を備えた人間ばかりであれば、いや、この中の半分でも、そういう人間であったなら、
こんなアホらしい事件は起きなかったであろう。本書を読み終えた後、ネットで書評を拾って読んで
みると、マスコミによるペンの暴力の恐ろしさを感じた人が多かったようだが、それ以前の問題という
気がしないでもない。ま、とにかく、精神衛生上よろしくない本である(笑)
それはそうと、福岡ローカルで終わるかと思われたこの事件は、週刊文春の記者が取り上げた事に
より、全国に知られるところとなったらしい。この後、文春は訴えられたのだろうか? 裁判でも原告
敗訴という結果が出たくらいだから、教師側から訴えられたら間違いなく文春の負けだったと思うの
だが。本書では触れられてないが、非常に気になる(笑)
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NOTE 2007.11.20
QUEEN ROCK MONTREAL
クイーンの1981年のライブ音源がCDとDVDで発売された。タイトル通り、カナダのモントリオール
で1981年11月24日・25日に行われたコンサートから収録したもので、かつて『ウィー・ウィル・
ロック・ユー』のタイトルで出ていたライブ・ビデオと同内容らしい。今回発売されるにあたっての邦題
は『伝説の証』、これ以上はありません、って感じ(笑)
以前に出た『クイーン・オン・ファイア』と同じく、ファンの間では評判だったステージの完全収録という
事で、当然ながら悪かろうはずがない。クイーンの場合、商品化されるライブは、ほとんどが80年代
のもので、何故70年代の音源を出してくれないのか、と僕は昔から不満だったが、考えてみると、
1979年のジャズ・ツアーあたりから、クイーンのライブに対する取り組み方が変わってきたような
気もする。80年代に入るとスタジアム級の巨大ライブが当たり前になる、というのを見越していた
かのように、フレディの圧倒的なパフォーマンスを前面に出し、ノリと迫力で乗り切るステージにシフト
して行ったのである。確かに、クイーン初のライブ盤『ライブ・キラーズ』を聴いた時、それまでラジオ等で
断片的に聴いていたライブとは明らかに違うので、意外というか、驚いた記憶がある。いきなりロック・
バンドに立ち返ったかのような。デビューしてから数年のクイーンは、なんだかんだ言っても、レコード
の緻密な音を再現する事は出来ず、ライブよりレコード聴いてる方が面白い、なんて言われていたし、
実は僕もそう思っていた(笑) しかし、そこを逆手に取り、ライブで再現可能な曲(つまり、シンプル
でノリのいい曲ってことね)を演奏し、或いはスタジオ版とは全く違う形に解体して披露し、レコード
とは一味違うクイーンを見せるようになったのが、1979年あたりからではないのか、なんて思う訳だ。
作風も変わってきていたし、ライブ・パフォーマンスを重視することにより、クイーンは80年代に確固
たる地位を築き上げたのである。であれば、発売されるライブ作品が80年代のものに集中してしまう
のは仕方ない。自信なさげで、さほど評価も高くなかった70年代のライブを、積極的に世に出そう
なんて、少なくともブライアンは考えてないのだろう(笑)
という訳で、正に脂が乗り切っていた、絶好調のクイーン及びフレディの素晴らしいパフォーマンスが
楽しめるライブ盤である。CDだけでも十分(笑) 思えば、1980年頃に、とある雑誌の特集で“ロック
はこれからどうなる?”みたいなのを読んだ記憶があるが、その中で渋谷陽一がコンサートのエンタ
テインメント化を予言し、「上手いだけでは、客を満足させるのは難しい」とした上で、「技術もあり、
ライブ向きのレパートリーが多く、何より圧倒的なボーカリストのいるクイーンこそ、そのライブ・パフォ
ーマンスで80年代も生き残っていくだろう」と書いていた事があった。何たる慧眼! 渋谷陽一って、
やっぱ只者ではない(笑)
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NOTE 2007.11.15
水底の森(全2巻)/柴田よしき
久々に柴田よしきの小説を読んだ。ま、体裁としてはミステリーだ。都内の安アパートから、顔を潰された
死体が発見される所から物語は始まる。ここに住んでいた夫婦の夫も2〜3日後他殺体で発見され、
容疑は行方不明になっている妻にかかる。この行方不明の女・風子の不幸な生い立ちと、彼女を
追う刑事の心情とが交錯しながら、物語は進む。行く先々で聞き込みを続けるうちに明らかになる
風子の過去。彼女に何故か執着する刑事。そして二人はめぐり逢い、共に逃避行に出る...ミステ
リー仕立てとはいえ、ラスト二人がどうなったのか、よく分からないし、本当に真犯人はこいつかよ、
みたいな部分もあるので、論理的なミステリーを好む人には不向きかもしれない。なんとなく消化不良
気味に終わるのも確かだし。が、不幸ながらも、流れるままに生きてきた風子が、なんだか悲しくて、
つい感情移入してしまうのだ。そんな、世間からはぐれてしまった風子と刑事の愛の逃避行、なんて
雰囲気の小説と言う方がふさわしいかも。現在と過去(それも風子と刑事の)を行ったり来たりする
構成になっているが、決して読んでいて混乱する事はなく、一気に読めてしまうのでお薦めだ。厳密
にはミステリーとは言い難いかもしれないが、決して退屈する事はない。おそらく、読み始めると夜も
寝られなくなるであろう(笑) それだけ面白く、読み応え十分な小説だと言っておく(笑)
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NOTE 2007.11.3
GREAT FREAKERS BEST FENCE OF DEFENSE 1987−2007
北島健二・西村麻聡・山田亘の3人によるフェンス・オブ・ディフェンス(以下FOD)がデビューしてから、
もう20年だそうだ。20年...友人から「最近デビューしたFODっていいよ」と聴かされて、こっちも
気に入ってしまったのが、もう20年前なのか...なんか、つい昨日の事みたいな気がするけど(苦笑)
という訳で、デビュー20周年を記念した集大成ベストが本作である。デビュー以来、数年の活動停止
期間はあったものの、ずっと変わらぬメンバーで活動してきたFODが、これまで発表した14枚のオリ
ジナル・アルバムから満遍なく選曲されている。ま、いくら2枚組とはいえ、14枚ものアルバム及び
アルバム未収録曲からも選曲されているので、各アルバムから1〜2曲程度しか収録されておらず、
従って選から洩れた曲も多い訳で、あれが入ってない、これもない、と多少の不満はあるものの(笑)、
そこはオリジナル・アルバムを聴いて下さいという事で(笑)、FODの20年を俯瞰するには、文句の
ない内容といえるだろう。この、浮き沈みの激しい世界で、20年同じメンバーで、しかも作品の質を
落とすことなく続けてきたことに、素直に敬意を表したい。
デビュー当初のFODは、ロックトリオの形態を取りつつ、打ち込みを絡めたモダンなハードロックを
志向していた。1stと2ndは、正にネオ・ハード・ロックとでも呼ぶべき、メロディアスでスピード感に
溢れたサウンドを堪能できる。初のコンセプト・アルバムとなった3rd以降は、アルバム毎に打ち込み
を控えめにしたり逆に多用したりしながら、独自の世界を作り上げた。ここまでは、本ベストのDisc1
でたっぷり聴ける。基本的にはシンプルなロック・バンドでありながら、実力派ミュージシャンの集合体
であるだけに、演奏はスリリングで申し分ないし、斬新なアイデアと洗練されたアレンジそして質の
高い楽曲群は、今でも輝きを失わない。個人的には、このDisc1をつい何度も聴いてしまうのだね(笑)
ただ、彼らもある時期から徐々にサウンドが変化し始める。本ベストのDisc2がその時期にあたるの
だが、なんか僕には彼らに迷いが生じたのでは、と思えてならない。急にB’zみたいな事をやって
みたり、ヒップホップ寄りのサウンドになったり、デジタル・ロックみたいな方向に走ってみたり...
一時期はアルバムを作らず、アニメやゲームとタイアップしたシングルのリリース中心の活動をして
いた事もあった。これらのタイアップ曲も、出来は悪くないのだが、FODがやる必然性が感じられない、
ごくフツーのJ−POPって感じで、一体どうしてしまったんだろう、なんて思ってる矢先に活動停止...
そして復活。やっぱり、彼らの歩んできた道も決して平坦ではなかったのだなぁ、という事を、この
ベスト盤を聴いて改めて感じた。ライナーを読むと、ボーカルが弱いからボーカリストを入れよう、
なんて屈辱的な提案をされた、なんて事も書いてあり、やっぱり苦労してたんだ(笑)
活動再開後のFODは、それなりに吹っ切れたアルバムを2枚発表しているが、個人的には悪くは
ないけど、やはり昔の方が好きだな、というのが正直な所である。でも、様々な困難を乗り越え、
結束も新たに活動を続ける中年ロック・バンドFODを、やはり応援せずにはいられない。中年の星
として、これからも頑張って下さい(笑)
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NOTE 2007.10.20
PHOTOGRAPH:THE VERY BEST OF RINGO
ブログにも書いたけど、リンゴ・スターの新編集のベスト盤である。リンゴのベスト盤と言えば、30年
ほど前(笑)に、『想い出を映して』というのが出ているが、今回のベスト盤は、その『想い出を映して』
をベースに、それ以降のヒット曲を追加した内容だ。ご承知の通り、リンゴは1970年代前半には、
元同僚のジョン・レノンやジョージ・ハリスンを凌ぐヒットメーカーだった訳で、2曲の全米No.1(「想い出
のフォトグラフ」「ユア・シックスティーン」)を含む8曲のTOP10ヒットや、まだまだ元ビートルズという
神通力が通用した頃の「ロックは恋の特効薬」、そして90年代以降に発表した「ウェイト・オブ・ザ・
ワールド」「フェイディング・イン・アンド・フェイディング・アウト」等が、この新装ベスト盤では堪能できる。
カントリー好きで知られるリンゴだが、ビートルズ時代にカバーしていた「アクト・ナチュラリー」を、オリ
ジナルのバック・オウエンスとデュエットしてるテイクも収録されており、ファンならもちろん、そうでない
人にもお薦めだ。チャートマニアは必携かも(笑)
ソロ・デビュー直後の曲は、カントリー風味のが多く、素朴な味わいだし、ヒットを連発していた時代の
曲は、自作他作問わずキャッチーな名曲揃い。ヒット・チャートとは縁遠くなった90年代以降の曲も、
これまた良い曲が揃っており、どの曲もリンゴならではの気さくな雰囲気に溢れ、非常に楽しく聴ける。
自身も参加した演奏陣も、的確なサポートで大変よろしい(笑) ポップスってこうでなくては、ってな
感じ。人柄もあるのだろうが、肩の凝らない雰囲気が実にいいのだ。今まで、リンゴをちゃんと聴いた
事はなかったけど、しばらく愛聴してしまいそう(笑)
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NOTE 2007.10.13
THE BIRTH OF A DRAGON/Dr.DRAGON & ORIENTAL EXPRESS
かの有名なディスコ・ヒット「セクシー・バス・ストップ」で知られるDr.ドラゴン&オリエンタル・エクス
プレスが1976年に発表したアルバムである。「セクシー・バス・ストップ」といえば、今でもあちこちの
コンピに収録されている70’sディスコの定番曲であるが、洋楽と思っている人も意外と多いんじゃな
かろうか。実はこのオリエンタル・エクスプレスというのは、日本の音楽界を代表するヒットメーカー
筒美京平による覆面プロジェクトであり、Dr.ドラゴンというのは彼の変名だ。「セクシー・バス・ストップ」
が発表された当時は、僕も外国のグループだと思い込んでいた。なにせ、“ニッポン放送の洋楽選考
委員会が選ぶ今月のベスト10”なんてのでしっかり紹介されていたくらいで(笑)、当時のラジオの
リクエスト番組なんかでも、カーペンターズやBCR、はたまたスタイリステイックスなどと並べてかか
っていたものだから、洋楽と信じ込んでしまったのは無理もなかろう(笑) Dr.ドラゴンが筒美京平
の事だと知ったのは、もっと後になってからだったような気がする。
という訳で、当時こんなアルバムが出ていたなんて知らなかったけど、こないだまでやってたJ−POP
しりとりの影響で(笑)、筒美京平絡みのCDを検索してたら、このアルバムを見つけたので買ってみた、
という次第。なんだかんだ言っても「セクシー・バス・ストップ」は今でも好きであるし、筒美京平が
フィリーっぽい感覚のディスコ・サウンドを取り入れたヒット曲を出していたのは周知の事実であるし(笑)
なので悪かろうはずがない。で、やっぱり良かった(笑)
どの曲も、軽やかなリズムにストリングスが印象的な、親しみやすい曲ばかりだ。なんつってもフィリー
はストリングスだよね(笑) このアルバムでも、主旋律を奏でたり、バックに回ったり、ほんと変幻
自在で素晴らしい。チャカポコとリズムを刻むギターもいいし、クラビネットをかなりフューチャーしてる
のにも感激(笑) 見事なまでの、70’sイージー・リスニング・ディスコだ(なんのこっちゃ) ライナー
にもある通り、ここで筒美京平がお手本にしてるのは、MFSBやバリー・ホワイトあたりだろうけど、
そこいらと比べても全く見劣りしないレベルの作品と思う。何も知らない中学生が、洋楽だと思い込んで
しまっても仕方ないな、という感じ(笑) 踊って良し、聴いて良し。すんなりと耳に入ってくる音だけど、
かなり細部まで神経使ってるのも分かるし、決して売れっ子作曲家のお遊びなんかではない。もしか
したら、本当に彼は、オリエンタル・エクスプレスで世界に打って出ようとしてたのかも、なんて思わせる。
そういや、尺八とか琴とかいった楽器もさりげなく使って、欧米のディスコとは一味違った雰囲気も
出してるし。やっぱり、筒美京平って凄い。
ま、こういうのをバカにしてた人も、昔は多かったし今も多いのだろうけど(笑)、なんて言われても
良い物は良い。そして、自分がやっぱりあの頃のディスコが大好きなのだ、というのも再び認識した(笑)
しかし、ハードロックと並行してディスコも聴いてたなんて、一体どういう中学生だったんだろうか?(苦笑)
でも、昔のラジオは洋楽という事で一括りにして、何でも一緒に流していた。色んな物に触れる機会
も多かった訳で、やはりいい時代だったよなぁ、とまたしてもオジサンは思ってしまうのである(爆)
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NOTE 2007.9.25
GREATEST HITS/THE HUMAN LEAGUE
という訳で、今回はヒューマン・リーグである。だんだん温故知新シリーズみたいになってきた(笑)
このベスト盤は、1988年に発売されたものに追加収録した新バージョンらしい。追加されたのは、
「Don’t You Want Me」のヒットを飛ばす以前の曲とか、90年代に入ってから出たアルバムの
曲とか、「Don’t You Want Me」のリミックスとかで、いつも思うのだが、リミックスや別バージョン
は余計なので、違う曲を入れて欲しい(笑) 意外だったのは、全盛期を過ぎた90年代の曲が、80
年代のヒット曲たちと続けて聴いても、違和感を感じさせないこと。彼らは、終始一貫したポリシーの
下にレコード作りをしていたのだ、というのが分かる。逆に言えば、90年代の曲も80年代の延長で
作られている、という事なんだけど(笑) それもちょっとなぁ、という気はするものの、多くの80’s
アーティストたちと違い、打ち込み主体とはいえ、ヒューマン・リーグの音は、意外と古臭さを感じさせ
ない、つまりいつの時代にも通じる普遍性を持った音楽であるという事なので、それはそれで立派な
事だ。どの曲も非常によく出来ているし、ヒューマン・リーグは実は大した連中だったのである。今に
して気づくとは...(苦笑)
「Don’t You Want Me」が大ヒットした頃、ヒューマン・リーグは“エレクトリック・アバ”なんて
言われて、それに対してメンバーが「アバとは違うのが、分からないのだろうか」と反論してたけど、
クール(無機質)なサウンド作り、わかりやすいメロディ、独特のボーカル、そしてその普遍性と、どれ
をとっても“エレクトリック・アバ”とはよく言ったものだ、という気がする。前述したけど、打ち込みや
シンセの多用も、流行云々ではなく、ヒューマン・リーグの音楽を確立する為の必然という感じだし。
やや話が逸れるが、僕は70’sの音楽が今聴いても古臭く感じないのは、現場で鳴っている楽器の
音が、そのままにレコードに収められているからだ、と思っていて、要するにテクノロジーは日進月歩
だけど、リアルな楽器の音は昔から変わらない訳で、変わらないという事は古くならないという事で
あり、テクノロジー(録音技術等も含む)に頼る音楽は、その進歩と共に古くなっていってしまう訳で、
ここが決定的に違うのだ、と。その線でいくと、ヒューマン・リーグが駆使するシンセゃ打ち込みは、
テクノロジーではなく楽器なのだ、と思える。昔の音を出したくて、わざわざ古い楽器や機材を使う
連中もいるが、そんな事しなくても、現場の音をそのまま記録すればリアルで普遍性のある音楽が
作れる、と思う。ヒューマン・リーグは、そんな境地に立って打ち込みを使っていたのではなかろうか。
う〜む、やっぱり只者ではない。同じ80’sに活躍したエレポップ勢で、そこまで考えてた連中は
いなかったような気がする。もしかすると、アバ以上かも(笑)
と、意味不明な事を書いているが(笑)、ヒューマン・リーグは極上のポップ・ミュージックである。クセ
になりそう(笑) 「Together In Electric Dreams」というタイトルが、とっても80’sを感じさせる
けど、決して古臭くはありません。時代性を反映してるのも凄い事である。改めて見直した次第(笑)
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NOTE 2007.9.16
GREATEST HOOKS/DR.HOOK
Dr.フックである。知らない人も多いだろうな。当サイトでもお世話になっているfxhud402さんも、
お薦めのバンドだ。今回紹介するのは、そのDr.フックのベスト盤である。知らない人も多いだろう
が(くどい)、彼らは、70年代にはヒット・チャートの常連だったのだ。僕は、ラジオ関東の「全米TOP
40」を聴き始めた1977年頃以降のヒット曲、例えば「Sharing The Night Together」「When
You’re In Love With A Beautiful Woman」「Better Love Next Time」をはじめと
する数曲しか知らないけど、これらはほんとハートウォーミングな名曲だし、それ以前にも「The Cover
Of The Rolling Stone」「Only Sixteen」といったヒット曲を放っていた。立派なヒット・メーカー
だったのだよ。そういったヒット曲の数々が、このベスト盤では楽しめる。かつての実績の割には
知名度が低いと、いう点では、リトル・リバー・バンドにも通じるものがあるが、実に勿体ないことだ。
ま、若い連中に向かって、「Dr.フックなんて知らないだろう。いいバンドなんだぜ」と、悦に入る楽しみ
はあるけどね(笑)
と、偉そうな事は言ってるけど、前述したように、Dr.フックの70年代後半以降の曲しか知らない僕
にとっては、このベスト盤で年代順に彼らのヒット曲を聴く、というのは新鮮だった。デビュー当初は
“Dr.フック&メディシン・ショー”と名乗っていたそうだが、この頃はカントリーバンドみたいな音だ。
ほんわかとしたムードが堪りません。で、ある時期からバンド名も変わり、ややAOR寄りになる訳だが、
その暖かみを感じさせるサウンドは変わらず、聴いてるだけで幸せな気分になってしまうこと、請け
合いだ。確かに、刺激は少ないかもしれないし、とてつもなく凄い事をしてる訳ではないけど、でも
こんなハートウォーミングなレコードを作る連中がいたのだ、という事が素晴らしいと思う。会った事
はないけど、きっといい人たちなんだろうな(笑) しかも売れてたなんて。いい時代だったんだなぁ
(また言ってる)。
個人的には、リアルタイムで聴いた「Better Love Next Time」が一番好きだが、他の曲も負けず
劣らず良い曲ばかりである。チャート・マニアには必携アイテムだろうけど、知らない人はとにかく
聴いてみて欲しい。音楽で癒されたい(この言葉嫌いだけど^^;)と、本気で思うなら、Dr.フックを
聴くべきです。
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NOTE 2007.9.8
SPORTS/HUEY LEWIS & THE NEWS
いや、別に、80’s回帰を標榜しているのではないが(笑)、こちらも80年代を象徴する名前である。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース。1982年の初ヒット「Do You Believe In Love」以降、ヒット
チャートを賑わし続け、“東のホール&オーツ、西のヒューイ・ルイス”とまで言われたヒットメーカー
だった、あのヒューイ・ルイス&ザ・ニュースだ。80年代に活躍した多くのアーティストがそうであった
ように、彼らも90年代に入ると急に失速し、今ではすっかり昔日の面影はなくなってしまったのは
残念だが、まだ現役として頑張ってるらしい。その、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが1983年に放った
大ベストセラーが、この『Sports』なんである。って、別に説明せんでも知ってるか(笑)
ま、しかし、本作と次作の『Fore!』は、80’sアメリカン・ロック(今となっては、こういう括りが存在
したのかどうかさえ怪しいが...)を代表する名盤であろう。ほんと、あの当時、この2枚共よく聴いた
ものだ(どちらも借り物だったけど...笑)。来日公演もテレビで見たが、いかにもアメリカの、それも
シスコのバンドらしい、大らかさといなたさが魅力だった。ヒューイ・ルイスもいい声してるし、和気藹々
としたバンドのコンビネーションも気持いい。改めてCDで聴き返してみると、ロックバンドっぽいミックス
ではないような気もするのだが、そこがまた80’sって感じもする(笑) 80年代と言えば、僕はまだ
20代で、70年代ロックの幻影から抜けきれていなかったのか、当時の人気バンドたちを懐疑的に
聴いてたりしたのだが、今聴くと素直にいいと思う。あの頃から素直だったら、もしかしてもっと楽しい
青春だったかもしれない(爆)、なんて思ったりもするのだが、バナナラマの所でも言ったけど、安直
に作ってる(そのくせ金だけはかけてる)ように思えた80’sロックも、実は案外シンプルで、曲や
ボーカルの良さを一番のウリにしてたのだ、という事を今さらながら実感する。やっぱり、70年代とは
違う意味ではあるけど、いい時代であったのだ80年代は。景気も良かったし(爆) そんな時代に
活躍したヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが、まだ現役である、というのはほんと嬉しい。かつてのヒット・
アルバムも、今では入手困難らしいのが残念だが。来日したら是非見に行きたいものだ。
という訳で、肝心の『Sports』について触れてないけど(爆)、とにかく良いです。個人的には
「I Want A New Drug」が好きだったなぁ。あ、「Heart And Soul」もいい。う〜む、やっぱり
名盤だ(それだけかい...笑)
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NOTE 2007.9.6
夢を与える/綿矢りさ
皆さんご存知、史上最年少で芥川賞を受賞した現役大学生作家、綿矢りさの受賞後第一作である。
通算でも3作目だそうだ。僕は、前2作(『インストール』と『蹴りたい背中』)は読んでないので何とも
言えないが、割と面白く読めたけど、世間の注目と期待を集める受賞後第一弾としては、どうなんだろう?
アマゾンなどの書評を見る限りでは、今イチって評価みたいだけど。
内容についてはご存知の人も多いだろうけど、子供の頃から芸能界で生きてきた夕子の物語である。
何も分からず、ただ親の言うままに子供服のモデルとして芸能活動をスタートした夕子が、チーズ会社
の永世キャラクターに抜擢され、中学入学を機に大手プロダクションに移籍してさらに活動の場を
広げていく。そんな中で経験する人間関係や仕事、私生活や家庭に関わる諸問題、そして世間に
顔が売れ始めた彼女を待ち受ける恋愛スキャンダル等々の中で生き続ける夕子を描いた小説、と
言えばいいのだろうか。ストーリー展開自体は、それほど目新しいものはないし、芸能界の描写も
フツーかな、という気がするが、夕子自身がずっとフツーの女の子であり続ける所に、なんとなくホッ
とするものを感じる。ただ、それ故悲惨な結末が待っているのだが。この、タイトルにもなっている
“夢を与える”という言葉の意味を夕子が知るラストは、ショッキングといえばショッキングである。
けど、僕が綿矢りさという人の非凡さを感じたのは、もっと別の部分、小説の冒頭である。いきなり、
大人の女が登場して化粧なぞ始めるのだが、実は彼女、年下の恋人が自分と別れようとしてるのに
感づき、どうやって阻止しようかと、作戦を練りながら化粧をしているのだ。そして、まんまと恋人を
懐柔し、コンドームに穴を開けて妊娠に成功して、結婚にこぎつける。で、生まれた子供が夕子なのだ。
つまり、彼女の両親が夕子を授かるまでに、あれこれと修羅場があったのである。こういう、一見
関係ないような導入部を持ってきたこと、三十路の女の心理を巧みに描写していること、夕子の母が
恋人を巧みに自分のペースにはめていく様を分かりやすく書いていること、など実に見事なのである。
この部分だけでも読み応え十分。本編が付け足しみたいに思えるくらい(笑)
ま、そんな訳で、現役女子大生が芥川賞受賞、という話題性と、いかにも文学少女といった感じの
清楚なルックスで、一躍文学界のアイドルみたいになってしまった綿矢りさだが、本人も周囲もそれ
以上ワルノリすることもなく(テレビでタレントまがいの事をしたり、芝居や映画、絵画といった小説
以外の事にチャレンジさせたり、等々。これで潰れてしまった若手女流作家もいた)、じっくりと創作に
取り組んでいたようで、この『夢を与える』も、芥川賞作家という肩書きに恥じない出来なのでは、と
僕は思う。見た目より、淡々とした描写が特徴のようで、そこいらも良いし。この先、どんな小説を書く
のか、とても楽しみである。ま、若い女の子だけに、飽きてほっぽり出す可能性もあるけどね(笑)
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NOTE 2007.8.26