最近のお気に入り
(バックナンバー3)
CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。
=音楽関係
=書籍関係
=映像関係
PRIDE & GLORY
あのオジー・オズボーンと一緒にやっていたザック・ワイルドが組んでいた3人組だそうだ
。実はこれ、当サイトからもリンクさせて貰っている、とあるサイトオーナーさんお薦めの
バンドなのである。ザックがやってるんだからメタル系かと思いきや、実にアメリカらしい
音のデカいロックバンド、という印象。サザンロック風なエッセンスもたっぷりで、この手
の音が好きな僕にはすっかりツボだった。
前に紹介したバジー・フェイトンとはニュアンスが異なるが、やはり豪快でルーツ的なもの
もたっぷり取り入れたアメリカンロックである。レーナード・スキナードあたりが好きな人
だったら間違いなく気に入るはず。去年再発されたらしいので、店で見かけたら是非手に
取ってみて欲しい。
しかし、久々の再発ということで、ザック・ワイルドによる解説付なのだが、開口一番
「ハロー、日本のヘビメタ愛好家の諸君、元気かい?」っていうのには参った(笑)。
NOTE 2000.6.22
BUZZ FEITEN WHIRLIES
近頃名前を聞かなかったバジー・フェイトンだが、ワーリーズなるバンドを結成してアル
バムを出した。バジー・フェイトンといえば、かつてはニール・ラーセンとの活動で知られ
、フル・ムーンやラーセン=フェイトン・バンドなどでAOR風の音楽をやっていた。特に
1980年に出たラーセン=フェイトン・バンドとしてのファーストアルバムは、フュージョン
系AORの傑作である。
という訳で、フュージョン系の印象が強い人なのだが、このアルバムで聴けるのはブルー
スやカントリーに根ざしたやや泥臭いアメリカンロック。意外かもしれないが、これがとに
かくカッコいい。全曲、バジー・フェイトン作のオリジナルというのも大したもんだ。ま、考
えてみれば、バシー・フェイトンのプロとしてのデビューはブルースバンドだったはずで、
そう思えば意外でも何でもないのだろう。もう少し曲がキャッチーだったらとか、アレンジ
に色気が欲しいとか、という部分もあるが、こういう音のバンドは最近お目にかかれない
だけに、とても新鮮に感じる。アメリカンロック好きなら、是非聴いて欲しい作品だ。
NOTE 2000.6.16
紫蘭の花嫁/乃南アサ
最近読んだ乃南アサの長編は、随分前に出たもので、彼女が直木賞を受賞した前後に
本屋で見かけた覚えがある。で、中味はというと、昔僕が乃南アサに対してミステリー
作家というイメージを持っていたが、正にこの『紫蘭の花嫁』はミステリー仕立てだ。
理由は分からないがある男からひたすら逃げ続ける女(ここが一種のトリックで、実は
彼女は逃げているのではない)と、ラブホテルでの連続女性殺人事件を捜査する刑事
部長の物語が交互に語られ、所々殺人犯と思われる男の独白が挿入される、という
構成。この男の独白がポイントで、読み進むにつれだんだん独白の内容が具体的に
なってくる。そして最後にすべての謎が明らかになり、事件は一応の解決をみる(意外な
ラストあり)と、割にありがちな感じではあるのだが、筆力もあり構成も確かな作家に
かかれば、非常に面白いものになる、という好例といってもいい。奇抜なアイデアや奇想
天外なトリックがなくても、十分に面白いミステリーは成立する。一読をお薦めします。
NOTE 2000.6.15
嘘をもうひとつだけ/東野圭吾
近頃、かなり名前が浸透してきた感のある東野圭吾の新刊は短篇集である。短編向き
の題材を短編らしく仕上げていて、やはりこの人の書く物にはずれはない。どの話も
殺人(未遂)事件が起こり、それを東野作品によく登場する加賀という刑事が捜査する、
という内容だ。ただ、物語は加賀刑事の側からではなく、事件の当事者側からの視点で
語られる。ちょっとした手がかりから、加賀刑事が解決の糸口を見つけ、犯人を追いつ
めていくのだが、クールに物語が進行していくのが読みやすくて良い。犯人にも刑事にも
感情移入しなくて済むからだ。読者を最後まで引っ張っていかなければならない長編なら
別だが、短編の場合はその必要はあまりない。さすがは東野圭吾、そこいらの使い分け
は見事である。毎度のことながら、推理そのものも論理的で計算されているし、つまりは
東野圭吾、文句のつけようがない作家である。
NOTE 2000.6.10
TWO AGAINST NATURE/STEELY DAN
最近、洋楽といえば古いのばかり聴いているが、これは新作。それもスティーリー・ダン
なんと20年振りの。そうか、『ガウチョ』から20年も経ってしまったのか、年取ったなぁ。
その20年がスティーリー・ダンの2人にとって長かったのか短かったのかは分からない。
ただ、この新作はいい。前述の『ガウチョ』と続けて聴いても、抵抗なく聴けるのではない
か。相変わらずロックともジャズとも言い難い、不可思議だけどカッコ良いサウンドも
健在だし、いきなり妙な展開をみせる曲作りも変わっていない。しかも、変わっていない
んだけど、録音技術のせいか今の空気が感じられる所がやはり只者ではない。かといっ
て、決して流行りの音でもないのだ。こんな芸当が出来るのも、やはりスティーリー・ダン
ならでは。伊達に20年過ごした訳ではないようだ。
かつての大物の超久しぶりの新譜、というと過去の作品の縮小再生産になりがちだが、
このアルバムに限ってはそんな心配は全くない。昔ファンだったという人だけでなく、
スティーリー・ダンを知らない若い人達にも十分満足して貰える内容である。
NOTE 2000.5.29
RAINBOW ON STAGE
なんでいきなりこういうCDを買ってしまったかというと、バンドで「キル・ザ・キング」を
やろうという事になって、レンタルに行ったら置いてなかったので買ってしまったという訳
なのである。しかし、やはりこの頃のレインボーは最高だ。20年の月日を経て、改めて
感じ入ってしまった。
仰々しいオープニングに導かれて始まる「キル・ザ・キング」が実にカッコ良い。これ以上
ない最高のスタート、正につかみはバッチリ。続くメドレーや「虹をつかもう」も言うこと
なし。この「虹をつかもう」や「ミストリーテッド」など長い演奏がちっともだれていないの
はさすが。リッチーもロニーもコージーもとにかく素晴らしい。老いも若きもハードロック
好きを自称するなら必聴の名盤である。自信をもってお薦めします。リッチーもこの頃
が最高だよ。
NOTE 2000.5.28
考えるヒット3/近田春夫
4年程前から週刊文春に連載中の同名コラムを単行本化したもので、もう3冊目に
なる。独自の批評眼を持つ近田春夫が、流行りのJ−POPを分析してみせるのだが、
これがありきたりでなく、非常に面白い。このコラムを読むために文春を買っても損は
しないくらいだ。
昔から非常にまともで、尚かつ個性的な活動をしてきた人だが、古今東西のポップスに
精通し、大衆音楽という物を知りつくしているだけに、単なる好き嫌いだけでなく、かなり
理論的に分析して見せるので、評論としても質の高い物になっていると思う。また、僕の
ような若輩者からすると、眼から鱗のような言葉もあり、知っていたはずの曲が違った魅
力を伴って聞こえてきたりする。「ビジュアル系の音楽とは、女性のための音楽(ロック)
である」という一言には、なるほどと思いました。
音楽は感覚で楽しめれば良いので、こんな理屈っぽいのは嫌いだ、という人もいるだろう
が、最近の音楽誌がアーティストベッタリでヨイショ記事または広告宣伝記事ばかりに
なり、ジャーナリズムの意味を忘れている現在、このような辛口の評論(誹謗中傷では
ない)が果たす役割は大きい。業界の人達にも読まれているらしいし、もちろん一般人が
読んでも面白い本です。間違いなく、耳慣れたヒット曲の印象が変わります。
NOTE 2000.5.27
STRAIGHT FROM THE HEART/PATRICE RUSHEN
ここ数年クラブで大ウケだというパトリース・ラッシェン。このアルバムはヒット曲「フォー
ゲット・ミー・ノッツ(わすれな草)」をフィーチャーした1982年の作品で、邦題は『ハート
泥棒』。きちんと聴いたのは初めてだ。
前述の「フォーゲット・ミー・ノッツ(わすれな草)」は当時全米23位まで上がるヒットとな
ったので、この曲だけは僕も知っていた。心地よいリズムに印象的なリフレインが乗る洒
落た曲だったけど、このアルバム全体もそんな印象だ。とにかく、心地よい。基本的には
同じリズムの繰り返しなのだが、人力によるリズムは同じようでも表情を変え、飽きるこ
となくのめり込んでいってしまう。グルーブとは反復が生み出すもの、と近田春夫が言っ
ていたがまさしくその通り、踊って良し、じっくり聴いても楽しめる極上のディスコであり、
ポップスである。一聴してオシャレな音だけど、単なるブラコンとは明らかに異なり主義主
張がしっかりと感じられ、センスの良い音楽とは正にこういうのを言うのである。
コアなロックファンは無理かもしれないが、R&Bファンもポップスファンもきっと楽しめる
だろう。時代を超えても色褪せない、エバーグリーンな名盤である。
NOTE 2000.5.12
名古屋学/岩中祥史
僕はかつて名古屋に住んでいた。義務教育は神奈川県で終えたので、一応神奈川出身
となっているが、実は3才から13才までの10年間を名古屋で過ごしたのである。名古屋
を離れて20年以上経った今でも、自分の中に名古屋人としてのアイデンティティを発見
することがある。そんな僕が、ふと本屋で見かけたこの本を見逃すはずはないのである。
本書は、「社会学」「歴史・地理学」「経済学」「経営学」「言語学」「栄養学」の6項目に
分かれて名古屋を論じる構成になっており、どれも非常にためになるのだが、僕が特に
興味深く読んだのは、「言語学」の章で、「知らなんだ」「めっちゃんこ」「ぬかしとる」とい
った今でも自分が日常的に使っている言葉が実は名古屋弁であった、ということを今さら
ながら知って、驚いてしまった。こんなに名古屋に影響されていたとは。
本書にもよく出てくるが、名古屋及び名古屋人は誤解されている。曰く、名古屋圏から出
たがらないので井の中の蛙だとか、ケチで遊びに金を使わない面白味のない奴らだとか
、とにかく田舎者だとか、散々な言われようである。田舎者だなんて、本当は地方出身者
の集まりにすぎない東京人なんかには言われたくないよな。そういった誤解について、著
者の岩中祥史という人は、そういう面は確かにあると認めつつ、名古屋人は本当は堅実
で人情に厚いのだよ、と細かいデータや事例を示しながら説明する。説得力があってとて
も分かりやすい、そして何より名古屋への愛情に裏打ちされている。名古屋に興味ある
人もない人も、名古屋人であってもなくても一読をお薦めする。
僕は今でも中日ドラゴンズのファンであり、味噌煮込みうどんが大好物である。
NOTE 2000.5.10
STEPPENWOLF
もしかすると、僕が一番最初にロックの洗礼を受けたのは、映画『イージー・ライダー』
だったかもしれない。昔、TVで映画を見まくっていた時期があり、その時に『イージー・
ライダー』を見た。はっきり言って、映画自体はちっとも面白くなかったが、全編に流れる
ロックはとても新鮮だった。クイーンやディープ・パープルと出会い、ロックに目覚める
のはそれから約一年ほど後のこと、思えば『イージー・ライダー』を見た時点で僕はウィ
ルスに感染していたのだろう。
その『イージー・ライダー』の中で、最も印象的に流れていたのが、ステッペンウルフの
「ワイルドで行こう」であり、それが収録されているのがこのデビューアルバムである。
正直ステッペンウルフの曲は『イージー・ライダー』絡みの「ワイルドで行こう」と「プッシャ
ー」しか聴いたことがなく(どちらもこのアルバムに収録)、ちゃんと聴いたのは初めてで
ある。ライナーにも書いてある通り、正に時代の音、ブルース、ロックンロールをベースに
したハードロック(「フーチー・クーチー・マン」なども演っている!)で、後半にはサイケな
曲が並んでいる。あまり長続きしなかったようだが、愛すべきB級バンドといった印象。
「ワイルドで行こう」だけが突出している訳ではなく、アルバムとしてのバランスもいいし、
ファズ(ディストーションではない)のきいたギターもカッコいい。ロックの原点、ここに
あり。
NOTE 2000.4.30