最近のお気に入り
(バックナンバー19)

CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。

MUSIC=音楽関係 BOOKS=書籍関係 MOVIE=映像関係



 MUSICSHINE ON BRIGHTLY/PROCOL HARUM
     仮に、これをご覧になっている方でプロコル・ハルムを知らない人はいても、「青い影」を
     知らない人はいないだろう。そう、1967年にリリースされたプロコル・ハルムのデビュー
     曲にして最大のヒット曲、音楽好きなら知らぬ人はいないであろう超有名曲、“21世紀に
     残したいロック・クラシック”なんてアンケートを取ればTOP10入りは間違いないであろう
     名曲である。そのプロコル・ハルムの1968年に発表された2ndアルバムがこれ。残念
     ながら、「青い影」は収録されていない(笑)
     僕も正直言って、プロコル・ハルムといえば「青い影」しか知らず、アルバムを聴くのは
     始めてだ。で、これが実にいいんですよ。「青い影」がそうだったように、オルガン(マシュー・
     フィッシャーという人らしい)中心のサウンドだが、バニラ・ファッジやディープ・パープル、
     ELPあたりとはひと味もふた味も違う。サイケでもハードでもなく、もちろんソロを弾きまくる
     のでもない、言うならば教会のパイプオルガンのような敬虔でおごそかな響きのオルガン
     に乗せてポップなメロディが歌われる。とても心地よい調べだ。決してクラシカルではなく、
     どこまでもポップ、だけどそのオルガンのフレーズの合間に切れ込んでくるギターは紛れ
     もなくロックのそれ(ちなみにギターは、あのロビン・トロワー)。時代背景を考えると、
     この頃のロック・バンドの大半はブルースかサイケだったと思うのだが、そのどちらにも
     流れずに独自のサウンドを作り上げていたとは大したもの。どうしても「青い影」のイメージ
     が強すぎる為、プロコル・ハルムは一発屋のように(特に日本では)思われがちだが、
     実はオリジナリティ溢れる素晴らしいバンドだったのだ。似たようなバンドが思い浮かばない、
     というのも彼らの独自性を物語っている。いや、実に素晴らしい。
     LPではおそらくB面を占めていたと思われるプログレッシブな大作「In Held ’Twas
     In I」が本作のハイライトという事になるのだろうが、個人的にはポップな曲が並ぶA面
     (前半?)が好きだ。曲は全てボーカル&ピアノのゲイリー・ブルッカー(と、詩人のキース・
     リード)によるものだが、彼のソウルフルな歌声も素晴らしい。こうして書いていると、
     実に様々な音楽的要素が散りばめられている事に気づかれると思うが、それが独特の
     オルガンの響きもあり、一本筋の通ったバンドサウンドにまとめ上げられている。何度も
     言うけど、ほんといいです(笑) やっぱり、昔の人は凄かったんだな、とつくづく感心して
     しまうのでした(爆)

NOTE 2003.7.10



 BOOKSローズガーデン/桐野夏生
     近頃ではあまりミステリーを書かなくなったみたいだけど、桐野夏生が世に知られるよう
     になったのは『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞を受賞してからだ。その『顔に降り
     かかる雨』や『天使に見捨てられた夜』に登場した村野ミロという名の女探偵が登場する
     短編を4編収めたのが本書である。
     4編中3編は、村野ミロが活躍する探偵譚であり、有能ではあるが適度にミスもする彼女
     のキャラクターが実にカッコいい。これらの短編の舞台はいずれも新宿またはその周辺
     であり、探偵という職業を通じて人間の裏の裏まで知っているはずなのに、下俗な欲望を
     捨てきれない彼女にはピッタリの街だ。街もミロも生き生きと描かれていてストーリーを
     切り離しても楽しめる。
     残る一編は、この短篇集のタイトルにもなっているのだが、ミロの亭主(確か、後に別れ
     るはず)の回想という形でミロの高校時代が描かれる、いわば異色作。ここに登場する
     ミロは、義父と淫らな関係に陥りながら、一方で高校の同級生だった後の亭主との快楽
     に溺れる、といういささかショッキングな女子高生だ。十数年後のクールな探偵振りから
     すると意外な感じはするものの、そのクールに自分や他人を見つめる萌芽はこの頃から
     あったようで、なかなかに興味深いものも感じさせる一編である。人間誰しも、心の闇と
     いうか二面性を持っているものであり、そうしたものを決して否定しないミロの姿勢(と
     同時に作者の姿勢でもある)が却って潔く感じられ、より一層彼女が魅力的に思えてくる
     のだよこれが。
     ま、そういった訳で、村野ミロのキャラクターを存分に楽しむ短篇集という事になろう。
     彼女の魅力は生みの親である桐野夏生のクールな文体による所も大きい。その桐野氏
     の最新作は、一流企業のOLでありながら夜は歌舞伎町でコールガールをしている女性
     を描いた『グロテスク』という長編だそうだが、欲望渦巻く都会でうごめく女性の姿を
     リアルにクールに語っているのだろう。こちらも興味津々、早く文庫にならないかな(爆)

NOTE 2003.7.7



 MUSICSHERYL CROW LIVE AT BUDOKAN
     タイトル通り、シェリル・クロウの去年の10月に行われた来日公演の模様を収めた
     ライブ盤である。場所はなんてったって武道館。ただ、水を差すようだが、どこにも公演
     場所のクレジットがないので、もしかしたら違う場所かも(笑) てな事を詮索しても意味
     ない訳で、去年の来日公演を見に行った人は、その時の興奮を思い出しながら聴きましょう。
     当然といえば当然だが、今の所日本のみの発売だとのことである。
     収録曲は13曲。僕はコンサートを見たけど武道館ではなかったので、セットリストが同じ
     だったのかどうかよく分からないけど、同じだったという事にすると、ほぼ当日のセット
     リスト通りに収録されている(当日のセットリストについては、僭越ながら僕のコンサートレポート
     を参照下さい)し、あまり音源に手を加えている様子もないので、当日の雰囲気は十分
     伝わってくる。「コンバンワー」「ゲンキデスカー」等々、シェリルの日本語MCも聞けるし(笑) 
     ベスト盤的選曲でもあるので、コンサートに行けなかった人にも十分楽しんで頂けるもの
     と思います。高水準のライブ盤と言っていいでしょう。ま、欲を言えば、当日演奏された
     「Leaving Las Vegas」と「Lucky Kid」あたりを是非収録して欲しかった、って
     とこかな(どうしても当日の様子を知りたい人は、くどいようですがコンサートレポート
     ご覧下さい...笑)

NOTE 2003.7.3



 MUSICEVERYTHING MUST GO/STEELY DAN
     80年代の沈黙振りが嘘のように、90年代以降精力的に活動している(少なくとも僕には
     そう見える)スティーリー・ダンの、『トゥー・アゲインスト・ネイチャー』から3年振りとなる
     新作が出た。近頃の音楽界において新作までのインターバルが3年空く、なんて事は
     すっかり普通の事になってしまったが、元々スティーリー・ダンはアルバムとアルバムの
     間隔が長かったので、3年くらい待たされるのはどうってことないのである。70年代から
     慣れっこだもんね(笑) と、のっけから訳分からん事を書いているが、この度の新作、
     実に良いのである。グラミーを受賞してしまった前作よりもずっと良い。個人的には、
     最高傑作と呼んでもいいのではないか、なんて最上級の賛辞を送りたくなってしまうのだ(笑)
     毎度毎度意味深のタイトルだけど、今回は(ライナーによると)“すべて精算しなければ”
     というような意味で、閉店在庫一掃セールの煽り文句などに使われるらしい。で、一曲目
     が“今日は閉店の日です”と歌う「ザ・ラスト・モール」。相変わらず洒落がキツい人たちだ(笑)
     音楽面では特に変わった事はしてないけど、シンプルで研ぎ澄まされたサウンドは、
     いつもの事ながら素晴らしい。70年代中期の音に近いような気がするのだけど、はっきりと
     どのアルバムに似てる、というのはなくて、なかなか尻尾を掴ませないのも相変わらず(笑)
     ややジャズ寄りって感じはするかな。クレジットによると、全曲同じバンドのメンバーで
     録音されており、入念にリハーサルもしたのだろう、フェイゲン&ベッカーの意図を十分に
     理解しているという安心感と余裕が伝わってくるような演奏振り。そのせいか、いつになく
     フェイゲンの歌もいい感じ。いやいや、今年のベスト1はこれで決まりか?(笑)
     今までと違う所と言えば、プロデューサーに盟友ゲイリー・カッツの名前がなく、ドナルド・
     フェイゲン&ウォルター・ベッカーというクレジットになっている事、そしてそのウォルター・
     ベッカーのボーカル曲が一曲収録されている事だろう。やや淡々とした曲調でいい感じの
     ボーカルを聴かせている。その「スラング・オブ・エイジズ」は5曲目に収録されており、
     LPでいうならA面ラスト、思わずニンマリしてしまう構成になっているのはさすが。ほんと、
     いくら褒めても褒め足りないくらいの、素晴らしい新作なのである。全音楽ファン必聴
     ですよ(笑)

NOTE 2003.6.28



 BOOKS『巨人の星』に必要なことはすべて人生から学んだ。あ。逆だ。
   /堀井憲一郎
     皆さんは堀井憲一郎という人をご存知だろうか。ホリイケンイチロウ、そうコンチキ号で
     太平洋をたった一人で横断した人だ。こら、それはホリエケンイチロウでしょ。それに
     ロウはいらないでしょうがロウは。全く何やってんだか。それにコンチキ号って何だよ。
     リトル・マーメイド号でしょうが、ってディズニーかよ。
     ま、とにかくご存知ない人のために説明するとライターなんだそうだ。ライター、そうかつて
     は文筆業と言ったもんだ。今でも言ってるけど。でも、何書いてるのかよく分からない。
     テレビにも出てるらしいけど。僕がよく見るのは週刊文春のコラムである。「ホリイのずん
     ずん調査」っていう連載を週一回、400回も書き続けている。データに基づき色んな物を
     調査しようというコラムだ。説明になってないな。ちなみに手元にある週刊文春平成15年
     6月12日号では、東京ディズニーランドのレストランのレジの行列が均等でない、という
     事を書いている。これでお分かりのように、こんな事を一所懸命調べて社会に貢献出来る
     のだろうか、と心配したくなるような事を一所懸命書いている人だ。面白いけどね。
     そんな(どんなだよ)ホリイ君のエッセイが本書である。タイトルだけでは内容が分かり
     づらいかもしれない。そんな事はないって。あの『巨人の星』に関するエッセイだ。『巨人の
     星』である。『巨人の星』ですよ。あー、しつこい。『巨人の星』といえば、1966年から
     1970年にかけて約4年半『少年マガジン』に3987回も連載された、梶原一騎原作・
     川崎のぼる画による不朽の名作だ。あ、不朽の名作と言ったのはホリイ君であって、
     僕ではありません。何せ、僕はマンガもアニメも含めて『巨人の星』には全く触れずに
     少年時代を過ごしたもんで、全然知らないのです。で、僕と違い少年時代を『巨人の星』
     と共に過ごしたホリイ君が、その『巨人の星』について様々な角度から検証を試み、
     ついでに自分自身の『巨人の星』にまつわる思い出や思い入れ等を書き綴ったエッセイ
     がこれなのである。はっきり言って、『巨人の星』というマンガについては、その訳分からなさ
     加減がより鮮明になってしまったが、エッセイ自体は軽妙かつ洒落た文体で非常に読み
     やすいし、内容も面白い。ごくありふれた少年時代を書いているように見えて着眼点が
     ちょっと違うのだ。超クソ真面目な人が読んだらふざけてる、なんてお叱りを受けるかも
     しれないが、ホリイ君は決して不真面目ではない。不真面目だったら、飛雄馬が巨人入団
     2年目に銀座の高級マンションへ引っ越した事について、早すぎるのでは、なんて心配
     したりしないし、一徹が壊してしまったテレビの値段なんて計算したりしないだろう。全ては
     『巨人の星』に対するホリイ君の熱い思いからきているのだ。ま、とにかく、『巨人の星』
     なんて読んだ事ない、という人にも大変面白い読み物です。ちょっと新幹線で出張なんて
     時の気分転換には最適ですよ。ただ、満員の車内での笑いすぎには注意して下さいね。
     さて最後に質問です。本文中に『巨人の星』という言葉は何回出てきたでしょうか?
     分かった方はメール下さい。あっ、賞品はもちろんないので、奉仕のつもりでひとつ。

NOTE 2003.6.21



 MOVIETHE FOREIGNER STORY : FEELS LIKE THE VERY FIRST TIME
     フォリナーの数少ない映像作品がめでたくDVD化された。巷ではレッド・ツェッペリンの
     ライブ映像がDVDとして発売され話題となっているが、“貴重度”という点ではこちらも
     ひけは取らないのである(笑)
     『ライブ・ベスト+1』という邦題なので混乱を招くが、ライブ・ビデオではなく、いわゆる
     ヒストリー物である。メンバーが登場し過去の活動歴やバンド結成のいきさつを語り、
     その合間にライブ映像が挿入される、といういたって分かりやすいものだ。ただ、そこに
     挿入されるライブ映像の大半が70年代、それもデビューから2〜3年くらいとおぼしき
     もので、これが見れるだけでもファンとしては涙・涙な訳である(邦題は正しいと言っても
     いいかな...笑) 特に、途中で脱退してしまったイアン・マクドナルド、アル・グリーンウッド、
     エド・ガリアルディの3人の演奏シーンのみならず、インタビューまで拝めるのには感激
     した。昔の映像のようで3人共若いっ!これを貴重と言わずして何と言ったらいいのか!
     フォリナー・ファンを自認する人なら、これが見れるだけでも大満足、4,410円(税込み)
     は決して高くない、家宝にすべきです。どんなに金に困っても絶対に売ってはいけません、
     バチが当たります(爆)
     編集されてはいるが、演奏シーンも貴重。「冷たいお前」のピアノをミック・ジョーンズが
     弾いてるのには驚いた、武道館で見た時はアル・グリーンウッドが弾いてたはずだけど。
     デニス・エリオットとルー・グラムによるツインドラムの映像も嬉しい、確かに僕も武道館
     で見た!なんて、いちいち初来日公演を思い出しながら楽しんでおります(笑) 
     あと面白かったのは、ミック・ジョーンズとビリー・ジョエルが並んでインタビューを受けて
     いる映像なんだけど、ビリーが「冷たいお前」が好きだ、なんて言ってピアノで弾いてみせる
     のだが、音が違うのだ。で、ミックが弾くと正しい「冷たいお前」になるのだが、ビリー曰く
     “ミックは変な和音を使うんだ”、なるほど本職のピアニストが弾くと、ああいう音には
     ならないんだ、なんて妙に感心してしまった(笑)
     などと、ファンには実に楽しい映像作品である。願わくば、ファン以外の人たちにも楽しんで
     頂けることを(爆)

NOTE 2003.6.19



 MUSICMY PRIVATE NATION/TRAIN
     前作『ドロップス・オブ・ジュピター』が大ヒットしたトレインの3枚目が出た。ライナーに
     よると、オリジナル・メンバーが一人脱退して4人組になったそうだが、さほど大きな変化
     は感じられず、相変わらず良い曲を並べて聴き応え十分なんである。マッチボックス・
     トゥエンティあたりと比較するとハッタリが足りないような気はするものの、トレインも現代
     のアメリカを代表するロック・バンドとして認知されるべきだろう。この新作を聴けば聴く
     ほど、そんな想いが強くなってしまう。
     以前にも書いたけど、とにかく曲の良さがウリのバンドなのだが、今回はアレンジにも
     ちょっと捻った所が見受けられ、自らの世界を広げていこうという意志が見える(なんたって
     ストリングス・アレンジに、あのポール・バックマスターを起用してるくらいだし)。また、
     ボーカルのパット・モナハンがプロデューサーのブレンダン・オブライエンと共作した曲が
     3曲ほど収められており、これらの曲が彼らのイメージを良い意味で裏切るような感じで、
     非常にいいアクセントになっている。彼らの場合、前作もそうだったけど、アルバムの
     後半は似たような曲が続く傾向があり、やや飽きてしまうので、こういった守備範囲の
     広い曲作りが出来るようになると、さらに優れたアルバムをモノにする事ができて、全米
     bPバンドの地位は揺るぎない物になるのではなかろうか。今でも十分にいいアルバム
     を作っているのに、将来にまだまだ希望を持たせるあたり、やはりただ者ではないと思う。
     末恐ろしい奴らだ(笑)3作目にして既にトレイン節とでも言うべき作風を確立している
     のは大したものだが、マンネリには陥らず常に新たな方向性を模索して、前進を続けて
     欲しいと思う。

NOTE 2003.6.13



 MUSICGOLDEN☆BEST 原田真二/OUR SONG〜彼の歌は君の歌〜
     原田真二のデビュー曲「てぃーんずぶるーす」が発売されたのは、1977年10月25日
     のことだそうだ。なんと、25年と半年も前...この後、彼は「キャンディ」「シャドー・ボクサー」
     と3ヶ月連続でシングルを発売し、テレビ番組にも積極的に出演、そのルックスも手伝い
     アッという間に人気者、チャーや世良公則と共に“ロック御三家”なんて呼ばれるように
     なったのだった...。
     そんな原田真二のベスト盤だ。ライナーによると、1977年のデビューから1979年まで
     の初期フォーライフ時代(ちなみに彼を発掘したのは、当時フォーライフ重役だった吉田拓郎
     だとのこと)の楽曲が収録されている。失礼ながら、正に全盛期の頃の曲ばかり...
     なんだけど、聴いてみてちょいとばかり複雑な気持ちであることも確かなのである。
     僕も当時、原田真二の出現にショックを受けた一人だ。「てぃーんずぶるーす」が大好き
     だった。あの頃、日本の音楽といえば歌謡曲かニューミュージックだったのだが、
     「てぃーんずぶるーす」はどちらでもなかった。言うならば“ポップス”だったのだ。今回、
     25年振りに原田真二の曲を聴いて改めてそう感じた。思えば、70年代の日本のロック、
     ポップスは洋楽の影響を強く受けながらも、猿真似でないオリジナリティを打ち出そうと
     悪戦苦闘しており、その結果洋楽みたいだけど洋楽でない、日本人ならではの音楽が
     生まれていた。それは非常に高く評価されるべきものだけど、そういった物をあっさり
     くつがえしたのが原田真二だったのだ。くどいようだが、彼の音楽はポップスそのもの
     としか言いようがない。70年代のミュージシャン達にみられた、猿真似は避けようとする
     いわば“洋楽コンプレックス”など微塵も感じられないし、かといって最近のJ−POPの
     連中にありがちな、後追いで学習した洋楽のおいしい所をマニアックにパクってみせる
     ような確信犯でもない。ただ、やりたい音楽を好きなように作ってみせただけ、という感じ。
     とことんポップなんだけど、ヒットを狙ったあざとさもない。全くてらいのない音楽、だけど
     そのあまりのてらいの無さ故、戸惑ってしまうというのもあるんだよね(笑)
     それにしても、やはり原田真二はすごい。このベスト盤は全18曲収録、曲もアレンジも
     ついでにオリジナリティも完璧だ。ピュアでポップで、純粋培養されたような、一種現実
     離れしてるような音楽。ソングライター、シンガーとしてのアクが感じられないので、余計に
     そんな印象を与える。こんな音楽をまだ10代の少年が作っていたのだ。正に天才という
     言葉が似つかわしい。
     彼はデビューした時からアイドルとして扱われたので、ミュージシャンとしてはまともに評価
     されなかった、とライナーにも書いてあるが、実際の所はアイドルとしてしか接しようが
     なかったのではないか。あの当時、こんな完璧で日本人離れしたポップスに正面から向き
     合える人なんて少なかっただろう、なんて思えてしまう。まともに評価されなかったのでは
     なく、出来なかったのだ。あまりに完璧すぎて。どこかにちょっとした隙でもあれば、当時も
     今も多くの人に聴いて貰えただろうに。ポップな中に破綻した物でも感じられれば、コアな
     ファンやフォロワーを獲得する事も出来ただろう。若くして完璧なポップスを作ってしまった
     所に原田真二の不幸があったと、今このベスト盤を聴いて思う。うまくいかないもんだね(笑)
     所で、このベスト盤のタイトル、どう考えてもエルトン・ジョンの「Your Song〜僕の歌
     は君の歌〜」をもじった物だと思うが、それなら「僕の歌は僕たちの歌」とすべきではない
     だろうか。ま、どうでもいいことだけど(笑)

NOTE 2003.5.27



 MUSICSHININ’ ON/GRAND FUNK
     いやぁ〜、嬉しいじゃありませんか、去年から始まったグランド・ファンクのデジタル・
     リマスター&ボーナス・トラックのリイシュー。3人組時代のアルバムに続き今年に入って
     から、70年代半ばにヒット連発だった4人組時代のアルバムがまとめて登場した。初CD化
     のアルバムもあり、ようやく彼らもまともに扱って貰えるようになったかと思うと感無量だ。
     これを機に、若い人たちがグランド・ファンクの魅力に気づいてくれれば、オジサンとしては
     こんなに嬉しい事はありません(爆)
     で、本作は1974年発表、前作『アメリカン・バンド』と並ぶグランド・ファンクの代表作で
     ありヒット作である。初の全米bPヒットを生んだ前作に引き続きトッド・ラングレンがプロ
     デュースを担当、シングル・カットされた「ロコ・モーション」が2曲目の全米bPとなった。
     正に絶頂期、イケイケだった頃のアルバムであり、当然悪かろうはずがない。収録曲全て
     が出来良くノリ良く、ほんと最高。この頃の彼らはキャッチーなハードロックがウリだった
     けど、ブラスを導入したソウルフルな曲も本作あたりから聴かれるようになり、バラエティ
     に富んだ飽きさせないアルバムになっている。デビューしてしばらくはマーク・ファーナー
     がメインだったけど、4人組になってからドン・ブリューワーがソングライターとしてもボーカ
     リストとしても頭角を現してきた事によって、バンドの音楽性が多彩になり、結果優れた
     アルバムを作りヒットを飛ばす事ができた訳だ(ライナーにもそう書いてあるし...笑)。
     長らくCD化されなかったアルバムがあることでも分かる通り、何故か評論家筋からは
     評価の低いバンドだったけど、某誌レビューにもあるように、彼らの成功が後のキッス、
     チープ・トリックらに道を拓いたと言っても過言ではない。正当な評価をファンとしては
     望みたいところだ。
     30年近い時を経て聴いてみても、グランド・ファンクってほんとカッコいい。そう、彼らは
     まだ輝き続けているのだ! “Keep it Shinin’ On!”

NOTE 2003.5.24



 MUSICBIRDLAND/THE YARDBIRDS
     最初店頭で見つけた時は昔の音源が発掘されたのかと思ったが、なんと新作。いやぁ〜、
     びっくりした(笑) 35年(!)振りだそうだ。人知れず再結成してツアーとかやってたんだ
     ろうか、なんて思いつつ手に取ってみれば、超豪華なゲストが参加しているではないの...
     ジェフ・バクスター、ジョー・サトリアーニ、スティーブ・ヴァイ、スラッシュ、スティーブ・ルカサー、
     そしてブライアン・メイ...はい、この名前を見た瞬間買う気になりました(爆)
     ライナーによると、1992年にヤードバーズがロックの殿堂入りを果たしたのを機に、
     オリジナル・メンバーのクリス・ドレヤとジム・マッカーティーの間で活動再開の話が持ち
     上がり、マッカーティーのバンドにドレヤが合流する形で1995年に再スタートを切った
     のだそうだ。そしてスティーブ・ヴァイのバックアップを受けてレコーディングを開始し、
     出来上がったのが本作という訳であり、これが予想以上に素晴らしい内容なんですよ(笑)
     アルバム自体は全15曲中、新曲が7曲、かつての代表曲が8曲という構成になっていて、
     新曲は基本的に現メンバーで演奏し、古い曲に前述のゲストが参加している。やはり、
     当時のファンからすると、「トレイン・ケプト・ア・ローリン」「シェイプス・オブ・シングス」
     「ハプニングス・テン・イヤーズ・タイム・アゴー」といった往年の名曲の再演にに心惹かれる
     であろうが(しかも豪華ゲストだし)、実は驚くべきことに(←失礼!)新曲の出来が非常に
     良いのである。90年代に入って復活したヤードバーズが、行く先々で懐メロを演奏して
     ウケを取るような活動をしている訳ではない、というのがこれら新曲を聴けば認識できる。
     昔の名前を名乗ってはいるものの、ちゃんと現在進行中の現役バンドして活動している
     のだ。このこと自体実に素晴らしい事である。頭が下がる思いだ(笑)
     スタイルとしては旧態依然としたブルース・ロックなんだけど、それがまたカッコいいし、
     曲の出来は良いしで、古臭さなんて全く感じさせない。3大ギタリストもキース・レルフも
     ポール・サミュエル・スミスもいないヤードバーズなんて...という偏見は捨てて聴くべきだ。
     新メンバーたちも実力派のようだし、とにかく現役らしい若さと勢いが感じられる。過去の
     栄光になんかすがっちゃいない。そこが一番素晴らしい。これまでヤードバーズはほとんど
     聴いた事ない僕だが、これだけカッコいいブルース・ロックを決められたら、是非生で見て
     みたいものだと思ってしまう。ほんと、大変失礼ながら意外な収穫だった(笑)
     で、最後になりましたが、このアルバムを買う動機となったブライアン・メイのプレイなん
     ですが(笑)、なかなか渋いソロを弾いていてGood。ワンコードのバッキングでのソロ
     という、割と彼が得意とするパターンなんだけど、アーミングを効果的に混ぜてカッコよく
     決めている。やや短めなのが不満なくらい(笑) 他のゲスト・プレイヤーたちも熱演だし
     (ベックもちょこっと顔出してるし)、決して損はしないアルバムですよ。

NOTE 2003.5.14


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