最近のお気に入り
(バックナンバー39)

CD、小説、映画など流行に関係なく、また新旧を問わず
最近気に入ったものを紹介します。

MUSIC=音楽関係 BOOKS=書籍関係 MOVIE=映像関係



 CAN’T SLOW DOWN/FOREIGNER
     2009年という年は、フォリナー・ファンにとって記憶に残る年になるだろう。なにしろ、7月のルー・
     グラム・バンドの新作に続いて、本家フォリナーの新作まで発売されたのだから。片や20年ぶり、
     片や15年ぶりのオリジナル・アルバムである。これは奇跡と言ってもいいのでは?(笑) ま、とにかく、
     フォリナーの新作なのてある。内容がどうのこうの言う前に、まずは発売された事を素直に喜びたい。
     それにしても、待たされたものだ。前作『Mr.ムーンライト』の後、ツアー中心に活動は続けていたものの、
     例のルー・グラムの脳腫瘍の手術やら脱退やら、バンドとして存続できるのかどうか、が心配された
     時期もあった。ルーに代わる新たなボーカリストを入れて活動再開、というニュースを聞いてからも
     随分経つ。その新しいボーカリスト、ケリー・ハンセンを擁しての来日公演が行なわれてからも、既に
     2年が過ぎている。その間、何種類かのベスト盤や現体制でのライブCD&DVDは発売されていたから、
     現況はそれなりに把握できていたけど、やはり聴きたかったのは新作だった。2年前の来日公演で、
     現フォリナーの見事なパフォーマンスを目の当たりにしただけに、このメンバーでの新作を切望して
     いた訳だ。そう思っていたのは、僕だけではあるまい。そして、ついに手にした新作『Can’t Slow
     Down』、そんなファンの期待を裏切る事のない内容になっているのが、また感動的なのである。
     生きてて良かった(爆)
     詳しい録音時期等のクレジットがないのだが、この『Can’t Slow Down』に収められた13曲のうち、
     10曲は現メンバー(ミック・ジョーンズ、ケリー・ハンセン、ジェフ・ピルソン、トム・ギンベル、マイケル・
     ブルーステイン、ブライアン・ティッチー)によるもの。去年出たベスト盤『No End In Sight』にも
     収録された「Too Late」や、初お目見え(と思う)「Lonely」の2曲はメンバーが違っており、随分前から
     レコーディング活動はしていたらしい。そして残る一曲、これがなんと1st収録曲「Fool For You
     Anyway」のリメイクであり、ミック、ケリー以外のメンバーは全然違っている。ついでに言うと、プロデュー
     サーも違う。こうして新作が出るまでに、やはり色々とあったようだ(笑)
     と、内容には触れてないが(笑)、前出した通り、なかなかよろしい。全体的には、ハードな印象の曲
     が並び、若々しさが前面に出ているように思う。ただ、さすがだと思うのは、ハードな曲もあればポップ
     な曲もあり、バラード系もあり哀メロ系もありで、相変わらず確かなソングライティングとケリー・ハン
     センの実力が窺えるところ。曲作りは、ミック、ケリーに加え、本作のプロデューサーでもあるマーティ・
     フレデリクセンの3人が中心となっており、全盛期以上に売れ筋で固めているのは、やはりフレデリクセン
     の意向だろうか、という気がする。つーか、前述した「Fool For You Anyway」のリメイクが、他と
     は違った雰囲気で、この曲やはり80’s以降の産業系とは異なる感触があるのだ。こういう曲がもっと
     収録されていれば、よりバラエティに富んだ内容になったのだろう。その辺は、ちと惜しいかな(笑) 
     あと、どの曲も、あっさりと終わってしまうのも、ちと物足りない。減点ポイントがあるとすれば、そこいら
     かも(笑)
     とはいえ、フォリナーの新作、これはこれで十分の出来栄えだ。アメリカでは、ウォルマートのみの販売
     という事で、もしかして自主レーベルから出してるのか、なんて思ったけど、ちゃんとアトランティック
     からのリリースであるのでホッとした(笑) 聞くところによると、ビルボードのアルバム・チャートでも
     初登場で30位内に入るという健闘ぶりらしいし、フォリナー人気はまだ健在という事で、出来れば日本盤
     出て欲しいな。あ、新作とセットになっている、過去のヒット曲のリミックスCDについては、特に触れないで
     おくので、あしからず(爆)
     http://www.amazon.co.jp/

NOTE 2009.11.14



 BOOKSプリズン・トリック/遠藤武文
     第55回江戸川乱歩賞受賞作である。作者の遠藤武文にとって、この『プリズン・トリック』は生まれて
     初めて書いた小説だという事で、なんと、初めて書いた小説で江戸川乱歩賞を獲ってしまったことに
     なる。これは凄い事だ。ラッキーな星の下に生まれているのかもしれない。
     ま、確かに、初めての小説というのが頷ける。なんというか、全体に荒っぽいのだ。文章にせよ構成
     にせよ。ただ、交通刑務所という特殊な環境での完全犯罪、というテーマに挑んだ心意気と、全編に
     漲る勢いのようなものに引きずられて、一気に読んでしまった。未完の大器という感じか。今後、どう
     なるかは分からないけど(笑)
     しかし、既にあちこちの書評でも話題になっているように、ラストの一行が問題である。この一行で、
     全ての真相が根底から崩れてしまう。これは計算なのか、それとも気まぐれか。どっちにしても、かなり
     大胆である。遠藤武文という人、やはり只者ではないのかも。大化けするかもしれない。
     http://www.amazon.co.jp/

NOTE 2009.11.2



 LIVE AT THE APOLLO WITH DAVID RUFFIN & EDDIE KENDRICK
   /DARYL HALL & JOHN OATES

     ホール&オーツ全盛の1985年に突如出たライブ・アルバムである。アポロ・シアターの新装こけら落としに
     登場した彼らが、かつてテンプテーションズのリード・シンガーとして活躍した、デビッド・ラフィンとエディ・
     ケンドリック(ス)をゲストに招いて、懐かしのテンプスの名曲で共演した時のライブだ。アポロ・シアター
     と言えば、ブラック・ミュージックの殿堂であり、ミュージシャンにとってもファンにとっても聖地であり、
     大物たちによるライブ盤も多数制作されてきた、という事くらいは、僕でも知ってた訳で、幼少の頃から
     ブラック・ミュージックにどっぷり浸かってきたホール&オーツの二人にとっては、ここで演奏出来ると
     いうだけでも天にも昇る心地だったであろうに、加えて憧れの名シンガーとの共演まで実現したのだから、
     感激の極みだったろう。ホール&オーツ及びラフィン&ケンドリック(ス)による「Apollo Medley:
     Get Ready〜Ain’t Too Proud To Beg〜The Way You Do The Things You Do
     〜My Girl」の熱い演奏を聴いてると、彼らの想いが伝わってくる気がする。しかし、このライブ・アルバム
     が凄いのは、元テンプスの二人が参加してない曲のテンションも非常に高いことだ。丁度、ポール・ヤング
     によるカバー・バージョンが大ヒットしていた時期でもあり、「Everytime You Go Away」も収められて
     いるが、ここでのダリル・ホールは文字通り熱唱。後半のヒット曲連発も、観客も巻き込んで怒涛の盛り上がり
     を見せる。長年一緒にやってるだけあって、バンドとの一体感も素晴らしい。同じコードやパターンを
     反復しながら、巧みなボーカルで観客を引き込み、徐々に盛り上げていくホール&オーツは、ほんと
     大したもの。「I Can’t Go For That」って、ライブだとほんとカッコいい。普段は目立たないジョン・
     オーツだって「Posession Obsession」で、円熟のボーカルを披露する。そして、ラストは「Adult
     Education」。この曲って、かなりヒップホップ風なのね。改めて気づいた(笑)
     という訳で、全盛期の勢いも感じさせるライブ盤、ホール&オーツのキャリアの中では、おまけみたい
     なもんかもしれないが(笑)、内容は素晴らしいので、強くお薦めします。
     
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NOTE 2009.10.21



 ALL ’N ALL/EARTH,WIND & FIRE
     70年代半ばから洋楽を聴き始め、ヒットチャート好きでもあった僕からすると、アース、ウィンド&ファイア
     (以下EWF)の全盛期は、間違いなく70年代後半から80年代初頭にかけての時期なのであり、
     中でも1977年に発表された『All ’N All』すなわち『太陽神』は、EWFのキャリアの頂点に位置する
     名盤なのである。まぁ、異論はあると思うけど(笑)
     という訳で、その名盤『太陽神』を、30数年ぶり(笑)に聴いてみたのである。きっかけは、こんなもの
     を見つけたこと。要するに、ソニー・グループ所属のアーティストのアルバム5枚をセットにして、廉価
     で販売してるシリーズなのだが、EWFの5枚というのが、『暗黒への挑戦』『灼熱の饗宴』『魂』『太陽神』
     『黙示録』と、正に全盛期のアルバムばかりであり、これは凄い、安いし買わねば、なんて思ったのだが、
     やはりEWFといえば邦題も魅力な訳で(笑)、日本盤を買うことにしたという次第。他も順に買って
     いこうかと(笑)。でも、『黙示録』は、別にいいかな(笑)
     と、前置きが長くなったが『太陽神』である。やはり、良いなぁ。初めて聴いて、すっかりノックアウト
     された若き日を思い出す(爆)。当時、EWFは既に人気グループであり、ヒットチャートの常連でもあった。
     切れのいいホーン・セクション、思わず身体が動き出すノリの良いリズム、ファルセットも交えた迫力
     あるボーカル&コーラス、つい一緒に口ずさんでしまうキャッチーなメロディ等々、といった特徴ある
     EWFサウンドは、日本の洋楽ファン(ソウル系にあまり詳しくない人も含む)にも十分受け入れられて
     いたし、あの渋谷陽一も、その頃EWFが気に入ってる、と自分の番組で喋ったりしていたくらいだ。
     この『太陽神』は、そんなEWFの特色を余すところなく、しかも高いレベルで提示したアルバムである。
     とにかく、楽曲が全て素晴らしい。日本で大ヒットし、洋楽ファンだけでなく、広く一般にもEWFの名を
     知らしめた「宇宙のファンタジー」も収録しているけど、アフリカっぽい「太陽の戦士」や高速の「銀河の
     覇者」「マジック・マインド」といったファンク・チューンや、ゆったりとした「ラブズ・ホリデー」、フィリップ・
     ベイリーによるアコースティックな雰囲気の「聖なる愛の歌」、ラストを飾る感動的な「ビー・エバー・
     ワンダフル」などのバラード系も、名曲揃いで素晴らしい。フュージョンぽいインストの「ランニン」も
     よろしい。どの曲にも、全盛期ならではの勢いを感じる。間奏曲が3曲入ってるのも、コンセプト・アル
     バムぽくて良い。かつて、ドリカムの中村正人が、「マービンやEWFみたいに、曲としてカウントされ
     ない間奏曲、というのを自分たちのアルバムに入れてみたかった」なんて言ってたけど、それはこの
     『太陽神』を指しているのは間違いなく(マービンのは『アイ・ウォント・ユー』だろうね)、当時のEWF
     の幅広い人気と影響力を物語っている。ま、とにかく、楽曲も演奏も構成も、完璧なまでに素晴らしい
     アルバム、それがこの『太陽神』なのだ。
     後に、某誌で、60年代から70年代にかけて、黒人たちが自らのアイデンティティを確立すべく、様々
     な試みを行った結果、新世代のブラック・ミュージックが台頭してきたが、社会的にも認知されてくると、
     徐々にその精神性を失い、単なるポップ・ミュージックのひとつとなってしまったが、EWFも例外では
     なく、デビューから『暗黒への挑戦』あたりまでは、意欲的な作品を発表し続けるものの、それ以降は
     ピラミッドなどの神秘的なイメージ戦略に頼る、ただの箱物になってしまった、と書かれているのを見た
     事があるが、売れ始めるとケチをつけるのは、特定の世代にはよく見られる傾向であり、『太陽神』が
     名盤であるのは間違いない。そしてそれは、30年以上経った今でも変わらないのである。
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NOTE 2009.10.10



 KANSAS
     ブログネタにもしたが、先月カンサスのコピバンのライブを見た。とても素晴らしい演奏に感激し、
     今さらながらカンサスを聴いてみたくなって、購入したのがこのアルバム。カンサスのデビュー・
     アルバムで、邦題はズバリ『カンサス・ファースト・アルバム』。これが予想以上に素晴らしい出来なん
     である。ネット上のレビューでも言われているが、デビュー作にして既にカンサスのゆるぎない個性が
     確立されている。なんという完成度の高さ。聞く所によると、カンサスも下積み長かったらしいが、
     その間ずっと暖め続けてきたアイデアを一気に放出したという感じなんだろうなぁ。ポッと出では、
     こんなアルバムは作れまい。ほんと今さらだけど(笑)、カンサスって凄いバンドなんだなぁ、と認識を
     新たにした。他のアルバムも、順次聴いていこうと思う。
     とはいえ、さすがの僕も全くカンサスを聴いた事がなかった訳ではなく(笑)、確かに70年代後半の
     全盛期の頃の曲しか知らなかったけど、10数年前に2枚組のボックス・セットを買って、一通り聴いて
     みてはいたのである。そのボックス・セット、原題は『KANSAS』、1stと同じなんだけど(笑)、『伝承』
     という邦題で、オリジナル・メンバー期の音源が収められていた。1stから『オーディオ・ビジョンズ』まで
     かな。で、そのDisc1には、3作目までの曲が収録されていたが、意図的なのかどうなのか、長尺曲
     ばかり10曲しか収録されていなかった。初期の曲を初めて聴く者にとって、いきなり大作ばかりだと
     ツラい(苦笑)。結局、4作目以降の曲が収められたDisc2ばかり聴くようになってしまい、それ以上
     突っ込んでカンサスを聴く事はなかった。
     と、そういう経験をしているからではなかろうが(笑)、カンサスはやはり編集盤ではなく、オリジナル・
     アルバムから聴くべきだ。この『カンサス・ファースト・アルバム』にしても、長い曲ばかりではない。
     スリリングに展開する「キャン・アイ・テル・ユー」、J・J・ケイルの曲をカンサス流にカバーした「ブリン
     ギング・イット・バック」、バラード・タイプの「寂しき風」、明るくポップな「巡礼者」など、聴きやすい曲も
     あってバラエティに富んでいるし、その流れの中では、「栄光への旅路」「母体崩壊」といった大曲も、
     抵抗なく聴ける。決して、長い曲ばかりで煙に巻くバンドではない。アメリカのバンドだけあり、良くも
     悪くも難解さはなく、エンタテインメント性十分なのだ。メロディも曲構成も分かりやすく、コーラス主体
     なのも親しみやすくていい。ロジャー・ディーンのようにファンタジックではないが、格調高いジャケット・
     デザインもよろしい。カンサスって、凄いバンドだったのだ、実は。今さらだけど(笑)
     と、こうしてカンサスの素晴らしい1stを聴いていて、ふと思ったのだが、彼らは一体どのあたりの
     バンドの影響を受けているのだろう? ヨーロッパのプログレの影響は確実にあるだろうが、これと
     いうのが思い浮かばない。一部でディープ・パープルを彷彿とさせたりはするが。デビューした時点で
     唯一無比の音になっているのだ。なんと奥が深いバンドであろうか。恐るべし、カンサス。
     
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NOTE 2009.9.22



 DESTINY/THE JACKSONS
     ジャクソン5ではありません(笑) ジャクソンズです。
     マイケルを中心に人気を博したジャクソン5が、モータウンからCBSに移籍したのを機にジャクソンズ
     と改名、移籍後3作目にして、初のセルフ・プロデュース作となったのが、この『デスティニー』である。
     1978年発表。で、その一年後、マイケルはソロの名盤『オフ・ザ・ウォール』をリリースし、大ヒットを
     記録。70年代から80年代にかけて、マイケルはジャクソンズとソロの両方で活動しており、正に
     殺人的な忙しさだったのではないかと思われるが、言い換えれば、彼の創作意欲が絶頂にあったと
     いう事でもある。20歳前後の頃のマイケルは絶好調だった。
     と、そんな好調さが窺えるアルバムだ。個人的には、なんといっても「シェイク・ユア・ボディ」である。
     1979年にヒットした。当時も好きだったけど、今聴いても素晴らしい曲だ。タンサブルなビートが延々
     と続き、同じフレーズが何度も繰り返され、その反復がなんとも言えない心地良さを生むという、後の
     「スタート・サムシング」にも通じるグルーヴィな名曲だ。一見単調な曲を、ここまで飽きさせずに聴かせる
     マイケルは、やはり凄い。一応、グループのアルバムであるので、マイケル一人を褒めそやすのは
     不公平かもしれないが、主導権は間違いなくマイケルが握ってたと思うので、まぁよしとしましょう(笑)。
     アルバム全体としては、ディスコ色が強く、どの曲もキャッチーでダンサブル。バラード系もあるが、
     さらりと流していてよろしい(笑) 最近TOTOのメンバーになったグレッグ・フィレンゲスが、アレンジ・
     演奏面で多大な貢献をしている。コアなR&Bファンには、そっぽを向かれたかもしれないが、白人に
     も受け入れられるのみならず、ポップスのメインストリームともなり得るブラック・ミュージックを確立して
     いくマイケルが、最初に世に問うた傑作と言っていいだろう。『スリラー』の大成功も、全てはここから
     始まったと言っても過言ではない。これからマイケルを追悼するなら『デスティニー』もお忘れなく(笑)
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NOTE 2009.9.16



 大吟醸/中島みゆき
     中島みゆきと言えば、今さら説明の必要もない、ユーミンと並ぶニューミュージック界の2大巨頭である。
     デビューしてから30年以上の長きに渡り、トップの座に君臨してきた女帝であり、70年代・80年代・
     90年代・2000年代と、4つの年代(Decade)でそれぞれNo.1ヒットを出す、という前人未到の記録
     を持つ大御所なのである。にもかかわらず、僕は中島みゆきの曲って、ほとんど知らない。スタンダード化
     したヒット曲を数曲知ってる程度。このベスト・アルバム『大吟醸』が、うれし恥ずかし中島みゆき初体験だ。
     何故、今、中島みゆきを聴こうという気になったのか。きっかけはこれである。
     という訳で、この『大吟醸』、うだうだ説明する必要はなかろうが、中島みゆきのシングル曲を中心に
     編集されたベスト・アルバムだ。2002年に出たそうで、記憶に新しい大ヒット「地上の星」は含まれて
     いないけど、3ディケイドのそれぞれのNo.1「わかれうた」「悪女」「空と君のあいだに」をはじめとする
     ヒット曲、「ルージュ」「慟哭」といった他人への提供曲のセルフカバー、そしてファンの間で人気の
     高い隠れ名曲など、全14曲。改めて聴くと、これがなかなかよろしい。なんというか、会社の同僚
     (女性含む)たちとカラオケに行ったような気分になるが(笑)、初期の曲も比較的最近の曲も、
     作風こそやや違うが違和感なく聴けてしまう所に、中島みゆきのぶれの無さを感じる。核となる部分
     に変化はなく、けれども長年聴く者を飽きさせることなく作品を発表し続けてきた、その創作意欲と
     いうかパワーには脱帽だ。やはり凄い人なのである。今さらだけど(笑)。
     個人的には、「わかれうた」「ひとり上手」といった、フォークの雰囲気が残る曲が好きだ。もっと、どろどろ
     とした怨念が滲み出てる曲と思ったけど、今聴いてみると、案外淡々としている。この時期のアルバム
     も聴いてみたいもの。
     中島みゆきは、昔から今に至るまで、非常に高い評価を受けている。シングルもアルバムも出せば
     ベストセラーだし、いわゆるライブとは一味違う“夜会”というイベントも大人気で、チケットが手に入ら
     ない、とすら言われてきた。ある意味、不思議でもある。己の感情の趣くままに曲を作っているような
     感もあって、そういう人の場合は、熱心なファンはいても、万人にウケる事はあまりないと思うのだが、
     反面、他人に提供した曲がヒットするケースも多く(「あばよ」「しあわせ芝居」「この空を飛べたら」
     「すずめ」等々)、実は優れたヒットメイカーでもある訳で、実際、この『大吟醸』の曲たちも、所々に
     印象的なメロディや言葉が散りばめられていて、つい何度もリピートしたくなる魅力があり、ヒット曲が
     多い所以はそこなんだろうけど、でも、決して職人が作った“売れ筋”ではない。自分自身を作品の
     核としながらも、大衆を虜にしてしまう作品の力、それこそが中島みゆきの真骨頂であるのだろう。
     やはり凄い人だ。今さらだけど(笑)
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NOTE 2009.9.10



 THRILLER/MICHAEL JACKSON
     マイケル・ジャクソンが謎の急死を遂げてから一ヶ月とちょっと、一時よりマイケル関連のニュースを
     目にする機会は減ったものの、その死が与えた衝撃は、まだ尾を引いている。音楽ファンはともかく、
     洋楽なんて聴かない一般の人たちまでが、マイケルを話題にするとは思わなかった。彼は、我々が
     予想していた以上にスーパースターだったのだ。改めて、その存在の大きさに感嘆した次第である。
     合掌。
     と、そんなある日、某タワー・レコードでマイケルの『スリラー』が1000円で売られているのを見かけた。
     マイケル関連の商品は品薄状態と聞いていたが、そうでもないのか? ま、1000円だし(笑)、久々に
     『スリラー』聴きたいな、と思っていた矢先でもあったので、買ってきた。個々のヒット曲はともかく、
     アルバムとして聴くのは20数年ぶり。あの頃は、カセットに録ってよく聴いてたものだ。で、久々に
     聴いてみると、やはり良い。9曲中7曲がシングル・カットされ、全てがビルボードのシングル・チャート
     のTOP10に入る(うち、No.1は2曲)という、とてつもない記録を作ったモンスター・アルバムであるのは
     周知の事実だが、シングルにならなかった2曲、すなわち「ベイビー・ビー・マイン」「レディ・イン・マイ・ライフ」
     の2曲が、いかにもブラコンといった作りで実に良い。個人的には、シングル曲よりも好きだったりする(笑) 
     この『スリラー』の底知れぬ凄さは、実はここにあると言ってもいい。シングルになろうとなるまいと、
     とにかく収録曲のひとつひとつに無駄がない。楽曲としてのクォリティも高いし、アイデアもアレンジも完璧。
     曲ごとのコンセプトも明快。80’sの新しいブラック・ミュージックとしてのブラコンを創造し、黒人層だけ
     でなく白人層にもウケる曲をシングル・カットしていった戦略が成功したのも、これだけ優れた楽曲が
     揃ったからこそ。正に、奇跡の9曲である。このうち、ロッド・テンパートンの曲が3曲、マイケル自身の
     オリジナルが4曲、となっており、クインシー・ジョーンズお抱えヒットメーカーのテンパートンを差し置いて、
     マイケルの曲が半分を占めていて、しかも全てシングルになった、というのは、間違いなくマイケル自身
     の成長を意味するのであり、彼が新世代のブラック・ミュージックを象徴する存在となったのは当然
     であった。
     ま、とにかく、今聴いても凄いアルバムである。マイケル、やっぱ只者ではなかった。再び合掌。
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NOTE 2009.8.9



 THE LOU GRAMM BAND
     ルー・グラムが帰ってきた! いや、帰ってきた、というのは正しくないかもしれない。例の、良性の
     脳腫瘍除去出術の後、後遺症と闘いながら、ルー・グラムは活動を続けていたからだ。数年前に
     フォリナーを辞め、自身のバンドを率いてライブ活動をしている、とは聞いてたし、実際YouTubeで
     その映像を見たこともある。確かに、外見は変わってしまったし、声も往年の艶はない。けど、間違い
     なくルー・グラムの声であり歌であり、何よりも元気でステージに立つ姿を見て、涙が出るほど嬉しく
     なってしまった。ちなみに、そのライブ映像はこちらです。ソロのヒット曲を貼っておいたけど、他にも
     たくさんあるので、是非お楽しみ下さい(笑)
     と、元気な姿を確認できれば、新作を聴きたくなるのが人情というもの。で、今年になって、ついに
     出たのである。ルー・グラムの新作が。バンド名義だけど、1989年の『ロング・ハード・ルック』以来の、
     ルー・グラムとしての新作なのである。これが喜ばずにいられるか! しかも、有り難いことに日本盤
     も発売されるとということなので、ずっと発売日を指折り数えて待っていたのだ(笑) 新作というだけ
     でも嬉しいのに、日本盤まで出るなんて...正に感激の極み。近年、これほど誰かの新作を楽しみ
     に待ったことがあったろうか...(涙)
     という訳で、ルー・グラムの新作なんである。出るだけでも有り難いのだから、内容についてはあーだ
     こーだ言うんじゃない、と言いたい所だが、それではレビューになってないので(笑)、簡単に解説すると、
     予想以上にハードで骨太な作りだ。80年代のフォリナーに近い感じもある。曲もいい。ハードに攻める
     曲が多く、安易にバラード系に走らないところに、ルーのロッカーとしての男気を感じる。「シングル・
     ビジョン」なんてタイトルの曲があるのも、笑えたりして(笑) カバーを2曲やってて、ビリー・プレストン
     とパーラメントの曲で、どちらもブラック系の曲だけど、あくまでルーはロックしてる感じなのもいい
     (関係ないけど、そのパーラメントの「アイ・ワナ・テスティファイ」、クイーンのロジャー・テイラーもカバー
     してます。笑)。グラム3兄弟を含むバンドとの相性も良いようだ。フォリナーの頃のイメージはあまり
     ないけど、声にしても歌い回しにしても、ルー・グラムなのは間違いない。正直、ここまでやってくれる
     とは思わなかった。つい、“ルー・グラムが帰ってきた”と言いたくなってしまう気持ちも、分かって
     貰えるかと(笑)
     と、こんな素晴らしい新作を聴いてしまうと、やはり次に期待してしまうのは来日公演だ。フォリナーと
     は別でいいので(笑)、来てくれないかな。しかし、ミック・ジョーンズがこのアルバムを聴いたら、
     “オレも負けてられない”なんて、気合の入ったフォリナーの新作を出すかもしれない。そんな相乗効果
     にも期待しつつ、『ルー・グラム・バンド』この夏最大のお薦めです。よろしく!
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NOTE 2009.7.28



 BOOKS日本を貶めた10人の売国政治家/小林よしのり編
     本書にもあるが、近頃売国なんて言葉を使わなくなった。売国という言葉の意味或いは売国という行為に、
     政治家も国民も鈍感になっているのだろう。国益を損なう行為を売国と呼ぶ訳だが、本人たちも自分の
     している事が売国に値する、なんて想像もしていないのに違いない。本書に登場する政治家たち及び
     その言動を見てみれば、それは明らかだ。売国行為を国の為、と信じているだけに始末が悪い。
     という訳で、『ゴーマズム宣言』でお馴染みの小林よしのりが、気骨のジャーナリストたちに、売国政治家に
     関するアンケートを実施し、その結果をまとめたのが本書である。おそらく、想像通りの名前が並んでいる
     ことと思う(笑) ほとんどが自民党というのは意外だったけど(笑)
     話は逸れるが、物事には3つの側面しかないという。“yours”“mine”“truth”の3つである。当事者
     それぞれ解釈が違い、それぞれに己の正しさを主張するから、議論は平行線をたどることも多く、
     “truth”を受け入れられないこともある。いわゆる歴史認識なんて、この最たるものであり、“truth”
     なんて、極端に言えば当事者にしか分からない。“真実”ではなく“事実”は、厳然として存在するけど、
     現在においては、歴史というのは当時の資料や文献を基に解明するしかなく、全ての資料が正しいとは
     限らない訳で、結局それぞれがそれなりの根拠に基づき、「私はこう思う」というレベルのものでしかない、
     と僕は考えている。なので、日華事変が侵略戦争だったのかどうか、南京大虐殺は本当にあったのか
     どうか、については、当事者同士で意見が食い違うのは当たり前、というスタンスだ。但し、それぞれが
     どう考えているか、というのは重要である。でも、解釈は自由。自分と考え方が違うからといって、
     否定すべきものではない。けど、自虐的な歴史観を持つ日本人が結構いるのは確かであり、悲しい
     ことに政治家にもそういう人が多い、というのも事実である。そういう考えの政治家は、贖罪意識からか、
     しばし外国に対して卑屈な謝罪をしたり、理不尽な要求を呑んだりして、結果的に日本を不利な状況に
     追い込んだりする。個人の考えはともかくとしても、それによって国益を損なうのは如何なものか。
     単に捏造みたいな事象に対して、謝罪をするなんて間違っている。少なくとも、アメリカは原爆投下
     という厳然たる史実があるにもかかわらず、公式には謝罪していない。いいか悪いかではない。外交に
     おいて、卑屈になってはいけないのだ。足元見られるからである。そのように、わざわざ余計な発言を
     して、自らを弱い立場に追い込む政治家の行為、これは正に売国と言える。考えてもみて下さい、
     高校野球の監督が、甲子園の決勝でさしたる理由もないのに、四番打者をベンチに置いたりしますか?
     そういうレベルの政治家もいるのである。我々有権者は、そこを見極めなければならない。景気対策や
     年金問題も大事だが、国を売るような政治家に国政を任せてはいけないのだ。
     てな訳で、衆議院選挙も近いことだし、あれこれと参考になるのではないだろうか。売国とは何か?
     というのを知るだけでも、いい勉強になる。どう解釈するかは、貴方次第だけどね(笑)
     
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NOTE 2009.7.26


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