私選名盤100選

001〜010


001  THE LEXICON OF LOVE/ABC
       ルック・オブ・ラブ/ABC(1982)
THE LEXICON OF LOVE
80年代初頭、ニューロマンティックブームの中から登場したのがこのABCであ
る。トレバー・ホーンのプロデュースのもと、このファーストアルバムは本国イギ
リスのみならず、アメリカでもヒットした。僕個人は、ニューロマンティックはビジュ
アル面でもサウンド面でも、かなりグラムロックの影響を受けている、と思ってい
るが、このABCは正にそのイメージ通りで、ルックスもさることながらファンキー
なリズムにストリングスが絡む、という派手というか華麗というか、スタイリッシュ
なサウンドが最高である。これにマーティン・フライの妖しげなボーカルがのると、
正に80年代型グラムの世界だ。音が派手めな割には、歌詞は普通のラブソング
というのもこのバンドの特徴だった。ジャケットも仰々しくて良い。


002  ROCKS/AEROSMITH
       ロックス/エアロスミス(1976)
ROCKS
エアロスミスがすごいのは、デビューして25年以上たった今でも、あの頃と変わら
ないテンションを維持していることだ。彼らほど、年の割には円熟とか成熟とかい
う言葉が似合わないバンドもないだろう。ただ、そのテンションを維持するのに昔
は酒と薬に頼り、今はジムに通って身体を鍛えている、というのが違いか。しかし
酒と薬の産物とはいえ、このアルバムにみなぎるパワーというか、ノリはすごい。
アルバムとしてみれば『闇夜のヘビィ・ロック』のほうが出来がいいのかもしれない
が、このアルバムの形容しがたい勢いにはかなわない。とにかく、「バック・イン・
ザ・サドル」にはじまり「ホーム・トゥナイト(名曲!)」で終わるまで、往復ビンタされ
っ放しのようなすさまじさは、現在でも衰えることはない。正に名盤。


003  TALES OF MYSTERY AND IMAGINATION
     /THE ALAN PARSONS PROJECT
       怪奇と幻想の物語〜エドガー・アラン・ポーの世界/アラン・パーソンズ・プロジェクト(1976)
TALES OF MYSTERY AND IMAGINATION
エンジニア、プロデューサーとして既に有名だったアラン・パーソンズが、アメリカ
の作家エドガー・アラン・ポーの作品を音にしたアルバム。レコーディンクに一年
もかけた、正に力作である。この手の企画アルバムは、ただ難解な方向へ流れ
ていってしまうことが多いのだが、このアルバムに関してはとても聴きやすく、ポ
ーの作品云々を抜きにしても楽しめる内容になっている。ハイライトはやはりB面
のほとんどを使った「アッシャー家の崩壊」だろうが、この曲以外は丁度いい長さ
でまとめられているのが聴きやすい所以だろう。曲のほとんどはアラン・パーソン
ズとエリック・ウルフソンの共作だが、アンドリュー・パウエル等参加ミュージシャン
達の力量も見逃せない。プログレ好きなら必聴。


004  THE ALLMAN BROTHERS BAND AT FILLMORE EAST
       フィルモア・イースト・ライブ/オールマン・ブラザーズ・バンド(1971)
THE ALLMAN BROTHERS BAND AT FILLMORE EAST
ロック史に燦然と輝く名盤。これを聴かずして、アメリカンロックは語れない、と言
っても過言ではないだろう。今もグレッグ・オールマンとディッキー・ベッツを中心
に活動を続けるオールマン・ブラザーズの名を全米にとどろかせたのがこのアル
バムだった。ライブで本領を発揮すると言われた彼らの魅力が100%詰まったラ
イブ盤であり、故デュアン・オールマンとディッキーの2人のギターバトルがなんと
いっても最大の聴き物であるが、ツインドラムが叩き出す複合ビート(のようなも
の)がまた素晴らしい。このリズム隊がいたからこそオールマンズは単なるブルー
ースバンドで終わらずに済んだのだ。しかし、それにしてもこの2人のギタリストは
ほんと上手い。早弾き命のヘビメタ小僧に聴かせてやりたいくらいだ。


005  HISTORY/AMERICA'S GREATEST HITS
       アメリカの歴史(1975)
HISTORY
3人組でデビューしたアメリカは、今はジェリーとダンの2人になってしまったが現
役だ。ただ、やはり彼らのキャリアのピークは「名前のない馬」でデビューしてから
5年くらいだろう。このアルバムはその時期のヒット曲を収録したベスト盤で、さわ
やかで心温まるアメリカの世界を堪能できる。彼らの特徴は、デビュー当時CSN
もどきまでと言われたそのハーモニー、そしてアコースティックなサウンドだろうと
思うのだが、今聴いても全く古くさく感じられないのは素晴らしいと思う。お薦めは
「金色の髪の少女」「ベンチュラ・ハイウェイ」あたりか。彼らは80年代に入ってか
ら「風のマジック」というヒット曲を出し、この曲は名曲なのだが後が続かなかった
のが実に残念だった。


006  BAD COMPANY
       バッド・カンパニー(1974)
BAD COMPANY
ポール・ロジャース、サイモン・カーク、ミック・ラルフス、ボズ・バレルという既に他
のバンドで有名だったミュージシャンによって結成されたのが、このバッド・カンパ
ニー。スーパーグループとして注目され、このファーストアルバムはベストセラーと
なった。このバンドの良い所は、シンプル&ストレートにロックンロールのカッコ良
さを表現していること。B級だ、などと言われはしたが、とにかくカッコ良いのだ文
句あるか。アルバムの出来としては、やはりこのファーストが一番か。ちょっと暗
めのトーンで、フリーを意識したのでは、と言われていたが、ただ明るいだけでな
いブリティッシュロックらしい雰囲気がまた渋い。ポール・ロジャースのボーカルは
天下一品なのだが、サイモン・カークのドラムも個人的にはすごく好き。


007  THE SWEETEST ILLUSION/BASIA
       スイーテスト・イリュージョン/バーシア(1994)
THE SWEETEST ILLUSION
この人についての知識はあまりなく、かつてマット・ビアンコに在籍したということし
か知らない。ブラコン風だが、ありきたりな感じはせず、ボサノバっぽい曲とアップ
テンポのファンキーな曲とのバランスが実に良い。何でも、打ち込みを一切使わ
ず、全て人力だそうで、これが打ち込みに聞こえてしまうくらい演奏がうまいのだ。
バーシアもソウルフルではなく、割に美声でバックに圧倒されることなく、気持ち良
さそうに歌っていて、ゆったりとした緊張感のようなものが漂っている。もうすぐ母
になる女性を歌った曲や、素晴らしい夫をありがとうと神に感謝する曲などもあり
充実した精神状態だったようだ。ファンキーな曲はクールに、ボサノバ風はあくま
で優しく、民族音楽っぽい味付けも少しあり、飽きさせないアルバム。


008  ABBEY ROAD/THE BEATLES
       アビー・ロード/ビートルズ(1969)
ABBEY ROAD
ビートルズを一枚、となるとこのアルバムを選んでしまう。『サージェント・ペパーズ
』はアイデアはすごいけど、それだけという感じで好きではない。このアルバムは
後半のメドレーのシンフォニックな盛り上がりもすごいのだが、曲も粒揃い。特に
ジョージの2曲が素晴らしい。リンゴの曲もいいし、ソングライターとして、4人が均
等のレベルで渡り合った最初で最後のアルバムではないか。しかし、解散直前で
メンバーもバラバラになっていたらしいが、そんな中でよくこんな質の高いアルバ
ムが作れたものだ。後期ビートルズに関しては、様々な音楽的試みのことが語ら
れることが多いが、実験もベースとなる曲の良さがあってこそ効果がある、という
ことをこのアルバムは証明している。やはり、ビートルズはすごい。


009  BLOW BY BLOW/JEFF BECK
       ブロウ・バイ・ブロウ/ジェフ・ベック(1975)
BLOW BY BLOW
このアルバムを初めて聴いた時、正にブッ飛んだ。ギターもさることながら、ドラム
がすごかったのだ。今まで聞いたことのないドラミングで、ドラムを始めたばかり
だった僕には、ひたすら衝撃的だった。しかしドラムばかりではなく、演奏はとに
かく凄い。フュージョン風アプローチのインストアルバムだが、ロックギタリストとし
て人気だったジェフ・ベックがこういうアルバムを作ったことは、ファンからすると賛
否両論だったと思うが、後のフュージョンプームの先駆けとなったことは間違いな
いだろう。ジェフ・ベック・グループ時代からその先見性は非凡な物があったが、
そういう点ではベックの面目躍如といった所か。ただ、このアルバムと次作『ワイ
ヤード』の成功で、インスト屋みたいになってしまったのは残念な気がする。


010  MAIN COURSE/BEE GEES
       メイン・コース/ビー・ジーズ(1975)
MAIN COURSE
ビージーズといえば、やはり『小さな恋のメロディ』と『サタデイ・ナイト・フィーバー』
ということになるのだろうな。その間に発表されたこのアルバムは、過小評価され
ているが、実は名盤なのである。前作からアリフ・マーディンをプロデューサーに
迎えて、R&Bの要素を取り入れた作風に変わってきたが、それがこのアルバム
で完成したといっていい。ビージーズならではのメロディとダンサブルな曲調が結
びつき、極上のポップミュージックに仕上がっている。「ジャイブ・トーキン」が全米
一位となった他、「ブロードウェイの夜」「ファニー(名曲!)」と次々とシングルヒッ
トが出て、ビージーズは一線に返り咲いた。このアルバムの音楽的、商業的両面
の成功が後の『〜フィーバー』の成功の布石となる。


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