![]() | 御存知、ピアノ・ベース・ドラムというロックバンドには珍しい編成のグループ。普 通この編成だと、ジャズをやったりするものだが、彼らは間違いなくロックである。 もちろんバラードもやるが、彼らの本領はむしろアップテンポの曲で発揮される。 このアルバムは彼らのセカンドアルバムで、ファーストよりバラエティに富んだ内 容になっており、その分ファーストにあったパンキッシュともいえるノリが少なくな ったようにも思う。が、彼らの魅力である「良い曲、パワフルな演奏」は十分楽し める。このバンド、というかピアノ&ボーカルのベン・フォールズにビートルズや 10ccあたりと共通するポップセンスがあり、「ジャクソン・カナリー」などビートル ズ風だったが、このアルバムの「フェア」などもイントロが10ccを連想させる。 |
![]() | 熱心なファンの方には申し訳ないが、リッチーは初期のレインボーまでが全盛だ ったと思う。後期レインボーや80’sパープルでのリッチーのプレイは、はっきり言 ってつまらない。異論もあるだろうが、その頃のブレイぶりとこのアルバムでのリ ッチーを比べてみれば、その差は歴然だ。とにかく、このアルバムは素晴らしい。 シンセで始まるオープニングもカッコいいし、B面に大作2曲を並べた構成もいい 。で、ロニー・ジェイムス・ディオのボーカルと共にリッチーのギターも全開だ。コー ジー・パウエルを含むバントもタイトな演奏を聴かせる。パープルが解散し、意気 消沈していたロック少年たちを、レインボーはガッチリと捕らえたのだ。正にリッ チーがカリスマであった時をしっかり封じ込めた好盤である。 |
![]() | ジョン・サイクス、カーマイン・アピス、トニー・フランクリンという錚々たるメンバー で結成されたブルー・マーダーのファーストである。といっても、このバンド結局は ジョン・サイクスのソロプロジェクトだったようで、この顔合わせは一回だけで終わ った。結成時から、70年代ロックへの回帰を打ち出していた通り、非常にオーソ ドックスかつドラマティックなハードロックが展開される。ジョン・サイクスがこんな 曲を作れるのかと驚いたりしたが、ボーカルも担当する彼の活躍ぶりには脱帽し た。リズムセクションの2人も堂々たるもので、以降この2人は活動を共にするよ うになる。前述したが、古典的と言ってもいい世界で、ヘビメタに慣れた耳にはさ ぞかし新鮮であったろう。久々に大きな音で聴きたいハードロックであった。 |
![]() | バンド名の通り、ブルースを基盤にしたロックをやっているブルース・トラベラーだ が、バンド名の由来はブルース・ブラザーズらしい。このバンドのウリは何と言っ ても、ボーカルのジョン・ポッパーが吹くハーモニカであろう。一部で「ハーモニカ のバン・ヘイレン」などと評されたように、むちゃくちゃうまいのである。ソロも取る し、ライブではオルガンみたいな音でバッキングまでやってしまう。一聴の価値あ りです。バンド自体は名前ほどコテコテのブルースをやっている訳ではなく、この アルバムからのヒット「ラン・アラウンド」「ザ・フック」にも顕著なように、屈託なく聴 けるのが持ち味。久々のオーソドックスなアメリカンロック、ていう感じか。過酷な ツアーの末、このアルバムのヒットで一躍人気バンドになったのはめでたい。 |
![]() | 僕にとっては、正にボイス・オブ・アメリカである。ボブ・シガーの歌を聴いていると 草原とか大きな湖とか渓流とかを想像してしまう。ビデオクリップのせいもあるの だろうが、そんな大いなるアメリカを感じさせるミュージシャンである。このアルバ ムは「ナイト・ムーブス」でようやく売れた彼が、その勢いも冷めやらぬ時に出した 物で、今回はさすがにすぐベストセラーとなり、押しも押されぬ人気スターとして の地位を確立した。この人はまだ現役で出せばヒットするのだが、アルバムを重 ねても、そう変化のある訳ではない。そのボブ・シガー節とでも言うべきパターンを 確立したのがこのアルバムと言っていいだろう。ロックンロールであれバラードで あれ、スケールのデカさを感じさせる歌と演奏はいつ聴いても素晴らしい。 |
![]() | 正に衝撃と呼ぶにふさわしいデビューであった。このファーストアルバムでボスト ン、というかトム・ショルツはバンドの音のみならずイメージまでも決定づけてしま ったのである。そう考えると、2枚目以降のボストンはデビューアルバムの二番 煎じでしかないのかもしれない。しかし、よく出来たアルバムである。妙にぶっとい ギターの音も当時は新鮮だったし、ウェストコースト風のコーラスといい、どの曲の バックにも入っているアコースティックギターといい、ショルツ自ら弾くオルガンによ って導かれるプログレ風展開といい、どれをとっても驚きだった。考えてみれば、 それまで色々なバンドがやっていた事をひとつにしてみせただけ、と言えなくもな いのだが、単なるコピーでないオリジナリティが既に出来上がっていたのだった。 |
![]() | ボウイといえば、『ジギー・スターダスト』だろう。しかし、僕個人は70年代中期の プラスティックソウル路線も結構好きである。これは、そのプラスティックソウル路 線の締めくくりと言えるアルバムだ。ソウルというよりファンクに接近したような感 じはあるが、ディスコっぽい「ゴールデン・イヤーズ」など今聴いても面白い。ステ ージでのハイライトとなったタイトル曲や「ステイ」などもカッコいい。本当にソング ライターとしては、素晴らしい人だと思う。前述の『ジギー〜』にしても、コンセプト の斬新さはもちろんだが、そういうイメージの曲を書けるボウイの才能あってこそ 、グラムにとどまらず、後生に残る傑作となったのではないだろうか。そういう人 だからコンセプト無しの80年代でも、楽曲で勝負出来たのだ、と僕は思う。 |
![]() | カーペンターズは決して、明るく健全なだけのポップスではない。彼らの曲を聴い てみるとよく分かるが、音自体にどことなく陰影がある。その陰影を演出するのが カレンのボーカルである。この不世出のボーカリストは、決して暗くならずに楽曲 の中にある影の部分を巧みに表現した。故に、明るい曲調よりやや沈んだ曲調 の方がカレンのボーカルは生きたと思うし、僕もそういった曲、例えば「ハーティ ング・イーチ・アザー」とか「スーパースター」とかいった曲の方が好きである。あと このアルバムには入ってないけど、「愛は夢の中に」とか「マスカレード」とか。そう した影というか憂いのようなものに皆惹かれるのだと思う。本当に類い希なボーカ リストだった。そして、ポップスとは奥の深いものなのだ。 |
![]() | 「サニー・ケイム・ホーム」でグラミーを獲るまで、この人の事は知らなかったが、 キャリアは長いらしい。で、このアルバムだがアコースティックな音なんだけど、色 彩感覚が豊かで、歌詞が分からなくてもその情景を見ているような気になってしま う、という摩訶不思議なアルバムなのである。実際、「サニー〜」はまるで短編小 説を読んでいるような曲なのだそうだ。この曲と2曲目の「ゲット・アウト・オブ・ディ ス・ハウス」の印象が強烈だが、メロディも分かりやすいのでとても楽しんで聴け るし、意味深と思われるジャケットも飽きがこない。よく出来たアルバムだな、とい う感じがする。しかし、こういう人が出て来るのだからアメリカはすごい、と思う。も うちょっと日本でも知られてもいい人ではないか。 |
![]() | 現在のアメリカでの女性ロックシンガー隆盛の先鞭をつけたのが、この人だという 気がする。もちろん、偉大な先達の活躍あってこそですが。ま、ともかくアメリカで も日本でも大人気のシェリル・クロウだが、個人的にはこのファーストがアメリカ土 着のロック、という感じで一番好きだ。「ストロング・イナフ」や「ノー・ワン・セッド・ イット・ウッド・ビー・イージー」などは、酒場の片隅でギター弾きながら歌っている 絵が浮かんで来るし、「ラン・ベイビー・ラン(名曲!)」なんて3連のロッカバラッド だし。要するに、音もジャケットもとてもアメリカっぽい物を感じさせるのだ。このア ルバムのことを「ロードムービーのサントラみたい」と言っていた評論家がいたが 正に言い得て妙、という感じ。バーボン片手にどうぞ。 |