私選名盤100選

011〜020


011  WHATEVER AND EVER AMEN/BEN FOLDS FIVE
       ホワットエバー・アンド・エバー・エーメン/ベン・フォールズ・ファイブ(1997)
WHATEVER AND EVER AMEN
御存知、ピアノ・ベース・ドラムというロックバンドには珍しい編成のグループ。普
通この編成だと、ジャズをやったりするものだが、彼らは間違いなくロックである。
もちろんバラードもやるが、彼らの本領はむしろアップテンポの曲で発揮される。
このアルバムは彼らのセカンドアルバムで、ファーストよりバラエティに富んだ内
容になっており、その分ファーストにあったパンキッシュともいえるノリが少なくな
ったようにも思う。が、彼らの魅力である「良い曲、パワフルな演奏」は十分楽し
める。このバンド、というかピアノ&ボーカルのベン・フォールズにビートルズや
10ccあたりと共通するポップセンスがあり、「ジャクソン・カナリー」などビートル
ズ風だったが、このアルバムの「フェア」などもイントロが10ccを連想させる。


012  RAINBOW RISING/BLACKMORE’S RAINBOW
       虹を翔ける覇者/ブラックモアズ・レインボー(1976)
RAINBOW RISING
熱心なファンの方には申し訳ないが、リッチーは初期のレインボーまでが全盛だ
ったと思う。後期レインボーや80’sパープルでのリッチーのプレイは、はっきり言
ってつまらない。異論もあるだろうが、その頃のブレイぶりとこのアルバムでのリ
ッチーを比べてみれば、その差は歴然だ。とにかく、このアルバムは素晴らしい。
シンセで始まるオープニングもカッコいいし、B面に大作2曲を並べた構成もいい
。で、ロニー・ジェイムス・ディオのボーカルと共にリッチーのギターも全開だ。コー
ジー・パウエルを含むバントもタイトな演奏を聴かせる。パープルが解散し、意気
消沈していたロック少年たちを、レインボーはガッチリと捕らえたのだ。正にリッ
チーがカリスマであった時をしっかり封じ込めた好盤である。


013  BLUE MURDER
       ブルー・マーダー(1989)
BLUE MURDER
ジョン・サイクス、カーマイン・アピス、トニー・フランクリンという錚々たるメンバー
で結成されたブルー・マーダーのファーストである。といっても、このバンド結局は
ジョン・サイクスのソロプロジェクトだったようで、この顔合わせは一回だけで終わ
った。結成時から、70年代ロックへの回帰を打ち出していた通り、非常にオーソ
ドックスかつドラマティックなハードロックが展開される。ジョン・サイクスがこんな
曲を作れるのかと驚いたりしたが、ボーカルも担当する彼の活躍ぶりには脱帽し
た。リズムセクションの2人も堂々たるもので、以降この2人は活動を共にするよ
うになる。前述したが、古典的と言ってもいい世界で、ヘビメタに慣れた耳にはさ
ぞかし新鮮であったろう。久々に大きな音で聴きたいハードロックであった。


014  FOUR/BLUES TRAVELER
       フォー/ブルース・トラベラー(1994)
FOUR
バンド名の通り、ブルースを基盤にしたロックをやっているブルース・トラベラーだ
が、バンド名の由来はブルース・ブラザーズらしい。このバンドのウリは何と言っ
ても、ボーカルのジョン・ポッパーが吹くハーモニカであろう。一部で「ハーモニカ
のバン・ヘイレン」などと評されたように、むちゃくちゃうまいのである。ソロも取る
し、ライブではオルガンみたいな音でバッキングまでやってしまう。一聴の価値あ
りです。バンド自体は名前ほどコテコテのブルースをやっている訳ではなく、この
アルバムからのヒット「ラン・アラウンド」「ザ・フック」にも顕著なように、屈託なく聴
けるのが持ち味。久々のオーソドックスなアメリカンロック、ていう感じか。過酷な
ツアーの末、このアルバムのヒットで一躍人気バンドになったのはめでたい。


015  STRANGER IN TOWN
     /BOB SEGER & THE SILVER BULLET BAND
       見知らぬ街/ボブ・シガー&ザ・シルバー・ブリット・バンド(1978)
STRANGER IN TOWN
僕にとっては、正にボイス・オブ・アメリカである。ボブ・シガーの歌を聴いていると
草原とか大きな湖とか渓流とかを想像してしまう。ビデオクリップのせいもあるの
だろうが、そんな大いなるアメリカを感じさせるミュージシャンである。このアルバ
ムは「ナイト・ムーブス」でようやく売れた彼が、その勢いも冷めやらぬ時に出した
物で、今回はさすがにすぐベストセラーとなり、押しも押されぬ人気スターとして
の地位を確立した。この人はまだ現役で出せばヒットするのだが、アルバムを重
ねても、そう変化のある訳ではない。そのボブ・シガー節とでも言うべきパターンを
確立したのがこのアルバムと言っていいだろう。ロックンロールであれバラードで
あれ、スケールのデカさを感じさせる歌と演奏はいつ聴いても素晴らしい。


016  BOSTON
       幻想飛行/ボストン(1976)
BOSTON
正に衝撃と呼ぶにふさわしいデビューであった。このファーストアルバムでボスト
ン、というかトム・ショルツはバンドの音のみならずイメージまでも決定づけてしま
ったのである。そう考えると、2枚目以降のボストンはデビューアルバムの二番
煎じでしかないのかもしれない。しかし、よく出来たアルバムである。妙にぶっとい
ギターの音も当時は新鮮だったし、ウェストコースト風のコーラスといい、どの曲の
バックにも入っているアコースティックギターといい、ショルツ自ら弾くオルガンによ
って導かれるプログレ風展開といい、どれをとっても驚きだった。考えてみれば、
それまで色々なバンドがやっていた事をひとつにしてみせただけ、と言えなくもな
いのだが、単なるコピーでないオリジナリティが既に出来上がっていたのだった。


017  STATION TO STATION/DAVID BOWIE
       ステーション・トゥー・ステーション/デビッド・ボウイ(1976)
STATION TO STATION
ボウイといえば、『ジギー・スターダスト』だろう。しかし、僕個人は70年代中期の
プラスティックソウル路線も結構好きである。これは、そのプラスティックソウル路
線の締めくくりと言えるアルバムだ。ソウルというよりファンクに接近したような感
じはあるが、ディスコっぽい「ゴールデン・イヤーズ」など今聴いても面白い。ステ
ージでのハイライトとなったタイトル曲や「ステイ」などもカッコいい。本当にソング
ライターとしては、素晴らしい人だと思う。前述の『ジギー〜』にしても、コンセプト
の斬新さはもちろんだが、そういうイメージの曲を書けるボウイの才能あってこそ
、グラムにとどまらず、後生に残る傑作となったのではないだろうか。そういう人
だからコンセプト無しの80年代でも、楽曲で勝負出来たのだ、と僕は思う。


018  SINGLES 1969−1973/CARPENTERS
       シングルス1969−1973/カーペンターズ(1973)
SINGLES 1969−1973
カーペンターズは決して、明るく健全なだけのポップスではない。彼らの曲を聴い
てみるとよく分かるが、音自体にどことなく陰影がある。その陰影を演出するのが
カレンのボーカルである。この不世出のボーカリストは、決して暗くならずに楽曲
の中にある影の部分を巧みに表現した。故に、明るい曲調よりやや沈んだ曲調
の方がカレンのボーカルは生きたと思うし、僕もそういった曲、例えば「ハーティ
ング・イーチ・アザー」とか「スーパースター」とかいった曲の方が好きである。あと
このアルバムには入ってないけど、「愛は夢の中に」とか「マスカレード」とか。そう
した影というか憂いのようなものに皆惹かれるのだと思う。本当に類い希なボーカ
リストだった。そして、ポップスとは奥の深いものなのだ。


019  A FEW SMALL REPAIRS/SHAWN COLVIN
       ア・フュー・スモール・リペアーズ/ショーン・コルビン(1996)
A FEW SMALL REPAIRS
「サニー・ケイム・ホーム」でグラミーを獲るまで、この人の事は知らなかったが、
キャリアは長いらしい。で、このアルバムだがアコースティックな音なんだけど、色
彩感覚が豊かで、歌詞が分からなくてもその情景を見ているような気になってしま
う、という摩訶不思議なアルバムなのである。実際、「サニー〜」はまるで短編小
説を読んでいるような曲なのだそうだ。この曲と2曲目の「ゲット・アウト・オブ・ディ
ス・ハウス」の印象が強烈だが、メロディも分かりやすいのでとても楽しんで聴け
るし、意味深と思われるジャケットも飽きがこない。よく出来たアルバムだな、とい
う感じがする。しかし、こういう人が出て来るのだからアメリカはすごい、と思う。も
うちょっと日本でも知られてもいい人ではないか。


020  TUESDAY NIGHT MUSIC CLUB/SHERYL CROW
       チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ/シェリル・クロウ(1993)
TUESDAY NIGHT MUSIC CLUB
現在のアメリカでの女性ロックシンガー隆盛の先鞭をつけたのが、この人だという
気がする。もちろん、偉大な先達の活躍あってこそですが。ま、ともかくアメリカで
も日本でも大人気のシェリル・クロウだが、個人的にはこのファーストがアメリカ土
着のロック、という感じで一番好きだ。「ストロング・イナフ」や「ノー・ワン・セッド・
イット・ウッド・ビー・イージー」などは、酒場の片隅でギター弾きながら歌っている
絵が浮かんで来るし、「ラン・ベイビー・ラン(名曲!)」なんて3連のロッカバラッド
だし。要するに、音もジャケットもとてもアメリカっぽい物を感じさせるのだ。このア
ルバムのことを「ロードムービーのサントラみたい」と言っていた評論家がいたが
正に言い得て妙、という感じ。バーボン片手にどうぞ。


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