![]() | 例の自殺未遂事件以来、転落の一途という感のある中森明菜だが、実力は申し 分ないし、よけいなことはせずレコード制作に専念するとかして、歌手としてまだま だやれる所を見せて欲しい。で、このアルバムだが、彼女が歌手として人気の絶 頂にあった時期に出たもので、その内容にはファンならずとも驚いただろう。とに かくボーカルが聞こえない(聞き取れない)レコードだったのだから。また、サウン ドも打ち込みによるヨーロッパ的ムードを漂わせた退廃的且つ官能的なもので、 およそ歌謡曲歌手のレコードとは思えなかった。クレジットによるとプロデュース は明菜自身となっているが、彼女がどういう意図でこんなアルバムを作ったのか は不明だ。ファン以外の人にも十分鑑賞に耐える出来であるのだが。 |
![]() | 北島健二、西村麻聡、山田亘の3人によるこのバンドのファーストアルバムは衝 撃的だった。音の基本はハードロックなのだが、打ち込みのビートと融合させたサ ウンドはネオハードロックとも呼ぶべきか、とにかく刺激的でカッコ良かった。北島 のややアナクロなギターがまた素晴らしく、ベテランによる古さと新しさを違和感な く兼ね備えたロックバンドとして、僕は夢中になってしまったものだ。打ち込みとい ってもデジタルな感触のものではなく、打楽器やハンドクラップをサンプリングした パーカッシブなもので、聴いていて血がたぎってくるような感じがする。所々シンセ を使ったアレンジも効果的。曲もよく出来ており、特に「Burn」「Faithia」の2曲が 素晴らしい。表現する言葉に困るほど完璧なアルバムだ。 |
![]() | この人達、元はフォークデュオだったそうだ。僕が初めて聴いたのはあの名曲「エ ンドレス・サマーヌード」で、その独特の和製ソウルのスタイルは確立されていたと 思う。そして、このアルバムを聴いた訳だが、最近死語になっているソウルという 言葉が一番似合うのではないか、と思える。倉持陽一は武骨で男っぽく、桜井秀 俊はややソフィスティケイトされて優しく、という2人の個性の違いはあるが、ブラコ ンなどという言葉で呼ばれるようになる前の、正にソウルと言っていい音楽がここ にはある。倉持の曲では何と言っても「RELAX〜OPEN〜ENJOY」がお薦め。 気恥ずかしいような歌詞を歌っても臭くないのが、彼の強みか。桜井の方では「メ トロノーム」が最高。頼りなげなボーカルがまたいい。 |
![]() | 80年代のユーミンはよく聴いていた。荒井由実時代と違い、したたかな大人の女 の歌という感じで良かったし、松原正樹、高水健司といった売れっ子セッションマ ンを配したサウンドも、当時としては最先端だった。もちろん、松任谷正隆の素晴 らしいアレンジも忘れてはいけない。中でも一番好きなのが、このアルバム。「真 珠のピアス」の歌詞世界が話題となったが、「フォーカス」「消息」など隠れた名曲 も多く、またバラエティに富んでいる。他にももっとパワーのあるアルバムはあるけ ど、さりげないセンスの良さ(曲もアレンジも)という点ではこのアルバムでしょう。「 昔の彼に会うのなら」のような、中華風レゲエ(?)とでも言うべき摩訶不思議な雰 囲気の曲が知らん顔して収録されてるのも、このアルバムの凄い所。 |
![]() | 南佳孝といえば、「ウォンチュ〜」の人か、と言ってたのは昔の話。今はその「ウォ ンチュ〜」すら知ってる人は少ない。その南佳孝が「ウォンチュ〜」より2年程前に 発表したのがこのアルバム。フィリップ・マーロウ・シリーズから取られたタイトル からも察せられるように、ハードボイルドな歌世界がスティーリー・ダン風のシティ サウンドに乗せて歌われる。作詞は2曲を除き松本隆で、この2人のハードボイ ルド趣味が全開だ。少々やりすぎ、って気がしないでもないが。ただ、サウンドは 完璧。細野晴臣、坂本龍一、小原礼らによる都会的雰囲気をたたえた演奏は絶 品だ。南佳孝自身も気持ち良さそうだ。デビュー時から、流行に背を向けて彼が 追求してきた音楽のひとつの到達点が、このアルバムである。 |
![]() | エイベックスが初めて手がけるロックバンドということで、デビュー当初話題になっ ていた記憶がある。1997年、テレビ番組の主題歌だった「ESCAPE」がオリコン の一位になってブレイクしたのは、皆さん御存知でしょう。この「ESCAPE」はサー フっぽいサウンドだったが、アルバムを聴いてみるとオーソドックスな、歌をメイン にしたバンドであることが分かる。ボーカルの佐々木収という人は、実に様々なス タイルの曲を書く人で、「ESCAPE」の次のシングルだった「アネモネ」は爽やかな ポップチューンだし、「微熱」はアメリカンロックタイプの曲だったりする。そういった 色々なスタイルの曲を上手くアレンジして、統一感を持たせているバンドのセンス も仲々のものである。1999年に解散してしまったが、実に惜しいバンドだった。 |
![]() | 現存する日本最古のロックバンドであるムーンライダーズ。デビューから20年以 上が経過しても、今なお衰えない創作意欲というか、バンドへのこだわりは素晴ら しい。若いバンドも見習うべきである。メンバーが各々バンド以外にソロ活動やプ ロデュース業などをして、適当にガス抜きをしていることが長続きしている要因だ ろうか。とにかく、これまでヒット曲こそないが、日本のロック界の重鎮とも言える ムーンライダーズを、不景気だからといってリストラしたりしない様、レコード会社 の重役の方々に切にお願いしたい。もっとも、当の本人達は重鎮とか、ベテラン とかいった意識は全然ないだろう。このアルバムは、5年間の沈黙の後出た物だ が、リラックスした雰囲気の大人の音楽。若いもんには負けてない。 |
![]() | 1980年、自ら出演したCMとタイアップした「RIDE ON TIME」のヒットでつい に山下達郎はブレイクした。この曲も都会的センスに満ちたカッコ良い曲だった が、このアルバムもまたすごい。初めて聴いた時、日本人が作ってるとは思えな かった。後に達郎ブランドとなるファンキーでメロウな路線が確立されているが、 これだけカッコ良く、歌謡曲臭さが全くなく、しかも日本語で歌われている、という サウンドはとてもショッキングであった。所々に彼ならではの洋楽的センスが見ら れ、ソロ楽器の選択などにもそれが窺える。例えば、「DAYDREAM」ではトロン ボーン、「SILENT SCREAMER」ではティンバレスのソロが聴かれ、結構驚い たものだ。彼が日本の音楽界に与えた影響は大きい。 |
![]() | 1970年代の日本のロック創生期に活躍した伝説のバンドが、この四人囃子であ る。ピンク・フロイドがディープ・パープルをコピーしたような(逆か)プログレサウン ドで登場し、そのテクニックや構成力から生まれた作品は、今でも色褪せない名 作ぞろいである。このアルバムは、ギターが森園勝敏から佐藤満に交代しての初 アルバムだが、本当に名盤の名にに恥じない素晴らしい内容である。プログレ的 なイメージは残しつつ、よりストレート且つシンプルになったサウンドは、ほとんど 洋楽オンリーだった僕のような人間の目を覚まさせるには十分過ぎた。曲もアレ ンジも演奏もハイレベルで、尚かつ毅然とした意志が感じられ素晴らしい。僕にと っての理想のロックバンドの姿がここにある。それは今でも変わらない。 |
![]() | 70年代終わり頃、フュージョンブームというのがあり、ジャズ系の人達によるイン スト曲がCMに使われたりして、結構売れていた。高中正義とかネイティブ・サンと か日野皓正とか、今では信じられないがあちこちでよく流れていたものです。現在 でも精力的な活動を続ける渡辺香津美も、フュージョンの枠で括られていたが、 僕自身は彼はフュージョンというより、もっと広い意味でのインストを追求していた ように思える。このアルバムは、坂本龍一をパートナーに迎え、村上秀一、小原 礼、本多俊之、といった一流プレイヤーを集めて制作された、ちょっと実験的なプ ロジェクトである。大所帯のバンドが圧倒的なテクニックとノリで迫るA面が特に 素晴らしい。フュージョンブームへの、彼なりの回答と言えるのでは。 |