私選名盤100選

031〜040


031  FRANKE & THE KNOCKOUTS
       スイートハート/フランキー&ザ・ノックアウツ(1981)
FRANKE & THE KNOCKOUTS
これを見てる人で、このバンドのことを知っている人はまずいないだろう。彼らは
ボーカルのフランキー・プリバイトを中心に結成された6人組(ジャケットは5人だ
が実際には6人)で、デビューシングルが全米でトップ10に入るという幸先の良い
スタートを切ったのである。音の方は、当時主流となりつつあった産業系に近い
が、フランキーのソウルフルなボーカルのせいか少々AORっぽい感じもする。割
に売れ筋といえなくもないが、実際曲も良く聴きやすいバンドであったので、結局
3枚のアルバムを残して消えてしまったのは、あまりカッコ良くないバンド名と所属
レコードが弱小だったせいだろう。ファンとして残念だ。マニアの間では現ボン・ジ
ョビのティコ・トーレスが在籍していたことでも知られている(らしい)。


032  FREE LIVE!
       フリー・ライブ!(1971)
FREE LIVE!
最初、フリーはどうも暗い感じがして好きでなかったが、このライブ盤はひたすら
カッコいい。一気にファンになってしまう位だ。スタジオ録音を聴いて感じた重苦し
い雰囲気はなく、突き抜けた感じがある。このバンド、当時皆若かった割にはブ
ルースの求道者然としたムードがあり、それが重苦しい雰囲気につながっていた
のでは、と思うのだが、ライブだとやはり若々しい演奏ぶりでそこが仲々心地良い
。サイモン・カークのドラムはやはりいいし。スタジオテイクとは随分違う「オールラ
イト・ナウ」で始まり、「ビー・マイ・フレンド」「ファイア・アンド・ウォーター」など代表
曲の多いベスト盤的選曲も親しみやすい。スタジオ録音曲も収録しているが、ウ
ェストコースト風の音でポール・ロジャースの趣味だろうか。


033  SOUL SEARCHIN’/GLENN FREY
       ソウル・サーチン/グレン・フライ(1988)
SOUL SEARCHIN’
ドン・ヘンリーと共に、イーグルスの2枚看板だった人だが、僕はグレン・フライの
方が好きだった。いかにもヤンキーというキャラクター、酒場で女を口説いてると
いつの間にか女の亭主がやって来てツマミ出される、という情景が似合いそうな
ちょっと情けないプレイボーイ、といった雰囲気が音にも出ていて、リラックスして
聴ける。このアルバムもそんな飾らない雰囲気でいっぱいだ。この人はデトロイト
出身ということで、やはりR&Bが好きらしく、それ風の曲が多いのも楽しんで聴け
る要因と思う。AB両面のラストにそれぞれ入っているバラードなど、正に女殺しの
一曲だ。こういう味はドン・ヘンリーでは出せないだろう。上手いのかそうでないの
かよく分からないフライ独特のギターもたっぷり聴ける。


034  BORN TO DIE/GRAND FUNK RAILROAD
       驚異の暴走列車/グランド・ファンク・レイルロード(1976)
BORN TO DIE
ちょっとグランド・ファンクの扱いは冷たすぎるのではないか、と僕は思う。70年
代前半に多くのヒット曲を放ち(「アメリカン・バンド」皆知ってるよね?)、スタジア
ム級のライブを次々と成功させ、前座で出た時メインのツェッペリンを喰ってしま
た、とか、雷雨の後楽園での来日コンサートなど数々の伝説を持つバンドなのに
今では名前を知ってる人すらいない、CD化されてないアルバムも結構あったりす
るのだ。かく言うこのアルバムも未CD化である。確かに人気に翳りが見え始めた
頃の作品だし、それまでのイケイケ風から方向転換しつつあったこともあり、あま
り売れなかったのは事実だ。しかしバンドとして、もう一回り大きくなろうともがいて
いた時期の作品がここまで無視されてしまうのは、ファンとしてあまりに悲しい。


035  EXTRA TEXTURE/GEORGE HARRISON
       ジョージ・ハリスン帝国/ジョージ・ハリスン(1975)
EXTRA TEXTURE
ジョージ・ハリスンといえば、音楽史的に見ればやはり『オール・シングス・マスト・
パス』だろう。しかし、彼のキャリアの中で忘れられがちなこのアルバムには隠れ
た名曲が多く、ジョージのファンなら100%満足できる内容だと思う。「ホワイル・
マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」の続編とも言うべき「ギターは泣いている」、
スモーキー・ロビンソンに捧げた「ウー・ベイビー分かるかい」の他、「答えは最後
に」とか、とにかくあのちょっぴり線の細い優男的なジョージのイメージ通りの曲が
並んでいる。何故か聴く人を善人にしてしまうような、ジョージの優しい世界が満
喫できるのだ。これだけジョージ度の高いアルバムは意外とないのではないか。
新しいことはやってないけど、質の高いアルバムだ。


036  THE CRY OF LOVE/JIMI HENDRIX
       クライ・オブ・ラブ/ジミ・ヘンドリックス
THE CRY OF LOVE
周知の通り、これはジミヘンの死後出たアルバムである。だいたいミュージシャン
の死後、未完成テイクに手を入れて世に出た作品に熱心なファン以外の人を満
足させられる物など滅多にないのだが、このアルバムは例外であろう。何しろジミ
ヘンといえば「パープル・ヘイズ」くらいしか知らなかった僕が、すっかり感動してし
まったのだから。ジミヘンのアルバムを聴いたのだって、これが初めてだった。と
にかく、最初に聴いて感じたのは、ギタリストとしてのイメージが強かったジミヘン
が実は非常に優秀なソングライターであった、ということ。死の直前よくステージで
やってた「フリーダム」、ロッド・スチュワートがカバーした「エンジェル」等々いい曲
が多く、もし彼が生きていたら、といつも思わずにはいられない。


037  CRACKED REAR VIEW/HOOTIE & THE BLOWFISH
       クラックド・リア・ビュー/フーティー&ザ・ブロウフィッシュ(1994)
CRACKED REAR VIEW
妙ちきりんなバンド名はコミックから取ったらしい。そして、やっている音楽はルー
ツロック的なもの、とくればB級バンドとして片づけられ、忘れ去られてしまう所だ
ったのだろうが、このファーストアルバムが驚異的なベストセラーとなり(全米だけ
で1500万枚売れたらしい)、その危機は回避された。何故そんなに売れたのか
はよく分からないが、カントリー、フォーク、そしてゴスペルの要素を含んだ彼らの
音楽はとても魅力的だ。確かに、色々言われたように目新しいことは何もやって
いないけど、斬新ならいいという訳ではない。親しみやすい曲作りといい、ダリアス
・ラッカーの男性的な歌声といい、ただ良質な音楽を目指す彼らの姿勢は、もっと
評価されていいのでは。正にアメリカン・ロックの良心。


038  BETWEEN THE LINES/JANIS IAN
       愛の回想録/ジャニス・イアン(1975)
BETWEEN THE LINES
一時期、日本でのジャニス・イアンの人気はすごかった。ドラマの主題歌に使われ
て「ラブ・イズ・ブラインド」や「ウィル・ユー・ダンス」が大ヒットし、角川映画のメイン
テーマまで担当してしまった。でも彼女が日本で受けたのも分かる気がする。メロ
ディはシンプルだし、歌のテーマも分かりやすい。アメリカ人にしては小柄なのも
日本人受けしたとの説もある。このアルバムは、日本で大ブレイクする前に出た
物だが、アメリカでヒットした「17才の頃」をはじめ、本人のギターを中心にしたシ
ンプルな演奏とシンプルな歌が聴ける。自分が美人ではない、というコンプレック
スでもあるのか、失恋の歌とか男の子にダンスに誘って貰えないとかいった歌が
目立つが、決して湿っぽくない。自己陶酔タイプではないのだろう。


039  ADOLESCENT SEX/JAPAN
       果てしなき反抗/ジャパン(1978)
ADOLESCENT SEX
これはあのジャパンのデビューアルバムである。ジャパンが高い評価を受けるよ
うになるのは『錻力の太鼓』からだと思うが、そのずっと前にはこんな怪しげなハ
ードロック寄りの音楽をやっていた訳である。で、これが実にカッコいいのである。
噂では当時彼らは満足に楽器を弾けなかった為、デビッド・シルビアンのボーカル
以外はスタジオミュージシャンに依るものだということだが、そんなことはどうでも
よく、ファーストにしてこんな変形グラムのようないかがわしい世界を作り上げてい
ることは、驚異ですらある。何故かジャパンのメンバーはこのアルバムについて
は語りたがらないようで、そういえばCD化も遅れていた。個人的には、後のジャ
パンよりこちらのほうがずっと良いと思うのだが。


040  BLOW YOUR FACE OUT/THE J.GEILS BAND
       狼から一撃!/J・ガイルズ・バンド(1976)
BLOW YOUR FACE OUT
J・ガイルズ・バンドは、よくストーンズのアメリカ版みたいに言われていたような気
がする。R&Bをルーツとする音楽性が似ていたせいもあるのだろう。ストーンズ
程メジャーになれなかったのは、キャッチーなオリジナル曲が少なかったことと、ラ
イブバンドみたいに言われてスタジオ盤の評価があまり高くなかったせいではな
いか。確かに、この時期の彼らはライブ盤のほうが圧倒的に出来が良かったりす
るので、そういう評価も仕方ないのかも。という訳で、このアルバムだが、彼らにと
って2枚目のライブアルバムである。とにかくカッコいい。一曲目から引きずり込ま
れてしまう。決して上手くないんだけれど、ノリは最高。マジック・ディックのハーモ
ニカ、ピーター・ウルフのマシンガントークも含め、満点の出来。


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