![]() | ビリー・ジョエルの最高傑作はこれではないか。もちろん『ストレンジャー』も『イノ セント・マン』も『リバー・オブ・ドリームス』もいいとは思うけど、このアルバムの無 駄のなさ、というか要するに完成度は頭抜けている。シングル曲以外の曲がすご くいいし(「ザンジバル」とか「ロザリンダの瞳」とか)、スティーブ・ガットら凄腕を揃 えた演奏も素晴らしい。そしてビリーの歌、これがまたいいのである。曲毎に別人 かと思うほど表情を変え、声まで変えて迫ってくる。うまいな、とただ感心するのみ だ。しかも、ピアノマンというイメージは崩すことなく全曲に違った顔のビリーがい る、という趣向。本当に素晴らしい作曲家でありシンガーである。クラシックに転向 するなんて言わないで、こんなアルバムをもっと作り続けて欲しい。 |
![]() | エルトンの最高傑作にして、ビルボード史上初というアルバムチャート初登場第一 位、という偉業を成し遂げたアルバムである。しかし、そんな派手な話題やジャケ ットとは裏腹に内容はとても地味だ。少なくとも、70年代前半次々とヒットアルバ ムを作ってきた彼のイメージからすれば。このアルバムは、彼と相棒の作詞家バ ーニー・トゥピンの自伝的内容を持っているらしい。ただ、それ以上にアルバムに 収められた各曲に僕は今でも涙してしまう。どの曲も素晴らしく、詩情に溢れ、聴く 者の耳と心を引きつけずにはおかない。決してヒットを狙った訳ではなく、締め切 りに迫られて書かれた訳でもない、エルトンとバーニーの中から世に出るべくして 生まれてきた曲たちであるからこそ、今でもなお輝き続けるのだ。 |
![]() | 今となっては、あの騒ぎは何だったんだろうという気もするが、このKC&ザ・サン シャイン・バンドは、70年代半ばヒットチャートを席巻した。1975年の「ゲット・ダ ウン・トゥナイト」から1980年の「プリーズ・ドント・ゴー」までY1ヒットは5曲。他に もヒット曲多数。軽薄と言えなくもないが、何とかのひとつ覚えのようなキャッチー なリフの繰り返しと、単調とも言えるディスコビートは何故か身体が動き、心が浮 き立つような楽しさがあった。そういうバンドだったから、やはりベスト盤を聴くべ きで、このアルバムはヒット曲満載で浮き世の憂さを忘れさせてくれる。ワンパタ ーンだろうと何だろうと、これだけ楽しいのだからいいではないか、と開き直ってし まう魅力が彼らの曲にはあった。 |
![]() | 僕等の世代がロックを語る時、キッスを避けては通れない。好き嫌いはともかく、 ロックに触れるきっかけがキッスだったという人は多いはずだ。何せ、音楽以前に あのメイクで音楽誌のグラビアの常連だった訳だし。僕も最初はあのメイクを毛 嫌いしていた口だったが、大抵の人と同じように『地獄の軍団』を聴いてから、キッ スが好きになった。見た目だけで毛嫌いする人を納得させるだけのものが『〜軍 団』にはあったわけだが、これはやはりキッスには出来過ぎというべきで(バカに してる訳じゃありません)、日本でのデビュー盤となった『地獄への接吻』の方が僕 は好きである。単純だけど、とにかくカッコいい。「ルーム・サービス」なんか今聴 いても興奮してしまう。ハードロックはかくあるべし。 |
![]() | ツェッペリンというと、『U』でもなく『W』でもなく『聖なる館』が一番いい、などと言っ たりするから僕はへそ曲がりだと言われるのだろう。しかし、このアルバムはツェ ッペリンがハードロックから脱皮し、というよりもハードロックとしてくくられる枠を拡 大し始めた最初のアルバムなのではないか、と思う。ブルースからスタートしたバ ンドが、ファンクなども取り込みハードロックの概念を変えていっているのがよくわ かる。「永遠の詩」しかり「デイ・ジャ・メイク・ハー」しかり、「クランジ」なんか何やっ てんだかよく分かんないけど凄い。アマチュアがやるツェッペリンのコピーは、初 期の曲がほとんどで、後期の曲が少ないのも納得できる。アマチュアの理解度を 越えているのだ。誰にも真似出来ない、唯一無比の世界がここにある。偉大だ。 |
![]() | 映画『リアリティ・バイツ』のエンドタイトルロールに流れた「ステイ」が大ヒットし、 一躍有名になったリサ・ローブの満を持してのファーストアルバム。バンド名はサ リンジャーの小説から取ったらしい。なるほど、歌詞は分からないがどことなく文 学的な雰囲気がある。聴くだけで歌詞が重要なのでは、と思わせる音楽だ。ただ し音楽性は幅広い。「ステイ」のようなアコースティックなバラードもあり、「タフィ」 のようにグランジばりに轟音ギターが鳴り響く曲もある。どの曲もリサのやや繊細 な感じのボーカルと、妙に心地よい不思議な響きのコードで飽きさせない。ソング ライターとしても非凡な人だ。今後にすごく期待が持てる。アルバムタイトルを最 初に聞いた時、「物語」かと思ったら「尻尾」だった。このセンスもグッド。 |
![]() | オーストラリア出身のリトル・リバー・バンドは、今でも本国で絶大な人気を誇ると いう。彼らは70年代終わりから80年代にかけ、毎年のように全米トップ10ヒット を出していた。アルバムからの2曲目のシングルカットは必ず最高位10位、とい う妙なジンクスもあった。とにかく、良い曲が多かったのだ。このベスト盤は彼らの ヒット曲はほとんど収録されており、その珠玉のメロディにとことん酔いしれる事が 出来ること請け合いだ。本当に、なんでこんなにいい曲が作れるのだろう。オース トラリア出身ながらウェストコースト風のコーラスとサウンドもいい。イーグルスが やりそうな「遙かなる道」、ジャジーな「追憶の甘い日々」、ハードなツインギターが カッコいい「ナイト・アウル」、ムーディな「レイディ」等々名曲のオンパレード。 |
![]() | 「ホリデイ」がヒットチャートに登場した頃、マドンナという名前からして一発屋みた いに思っていたが、どうしてどうして続く「ボーダーライン(名曲!)」をトップ10入り させると、あれよあれよと言う間にスターダムにかけ上ってしまった。その後の活 躍ぶりは言うまでもない。スキャンダルさえ宣伝材料にしてしまうしたたかさは、ス ケールこそ違うが、松田聖子みたい。そのマドンナの原点であるファーストアルバ ムは今でも新鮮だ。ヒップホップ感覚のダンス系だけど、よく言われるようにストリ ートの感触がある。ストイックなまでに無駄な装飾のないビートにのっかるマドンナ のボーカルが魅力的だ。イメージで売る前の作品だけに、音楽で勝負しようという 決意が見える。もし、売れなかったら今頃はレアグルーヴの名盤だったかも。 |
![]() | ジョー・ウォルシュがギターを弾いている「ドント・ミーン・ナッシング」を聴いて、こ のアルバムを買った。昔のウェストコースト風の人かと思ったからだが、最初に 聴いた印象は、ロック色の強いAORって感じだった。しかし、サビで炸裂する曲 作りのうまさとか、演奏のノリの良さとが気に入ってよく聴いていた。その後、売れ たので、見る目の確かさを自画自賛したりしたもんです。でも、この人結局はデビ ューアルバムが一番出来が良いのでは。歌を聴かせるバラードと、カッコいいロッ ク曲とのバランスがすごく良くて、前者のお薦めは「エンドレス・サマー・ナイツ」、 後者のお薦めは「リメンバー・マンハッタン」といったあたりか。ハリのあるボーカ ルも魅力的。80年代型サウンドだけど、古臭くない。 |
![]() | これぞ名盤。ポールのビートルズ以後の作品では文句なく最高傑作だろう。曲の 出来、演奏、アルバムの構成、どれをとっても100点満点。ついでにジャケットも ○。グラミー賞受賞も納得の作品である。ポールのアルバムには他にもヒット作 はあるが、やっつけ仕事みたいな曲も入ってたりして、必ずしも満点とは言い難い 。しかも、80年代中期以降のポール・マッカートニーに全く魅力を感じなくなってし まった僕からすると、真にポールの名に恥じないアルバムはこれだけなのではな いか、と思ってしまうのだ。「ブルーバード」なんて、ほんと名曲。デニー・レーンが 歌う「西暦1985年」も素晴らしい。政情不安なナイジェリアで録音したそうだが、 全体に漂う緊張感はそのせいか。とにかく、名盤。 |