私選名盤100選

041〜050


041  52ND STREET/BILLY JOEL
       ニューヨーク52番街/ビリー・ジョエル(1978)
52ND STREET
ビリー・ジョエルの最高傑作はこれではないか。もちろん『ストレンジャー』も『イノ
セント・マン』も『リバー・オブ・ドリームス』もいいとは思うけど、このアルバムの無
駄のなさ、というか要するに完成度は頭抜けている。シングル曲以外の曲がすご
くいいし(「ザンジバル」とか「ロザリンダの瞳」とか)、スティーブ・ガットら凄腕を揃
えた演奏も素晴らしい。そしてビリーの歌、これがまたいいのである。曲毎に別人
かと思うほど表情を変え、声まで変えて迫ってくる。うまいな、とただ感心するのみ
だ。しかも、ピアノマンというイメージは崩すことなく全曲に違った顔のビリーがい
る、という趣向。本当に素晴らしい作曲家でありシンガーである。クラシックに転向
するなんて言わないで、こんなアルバムをもっと作り続けて欲しい。


042  CAPTAIN FANTASTIC AND THE BROWN DIRT COWBOY
     /ELTON JOHN
       キャプテン・ファンタスティック/エルトン・ジョン(1975)
CAPTAIN FANTASTIC AND THE BROWN DIRT COWBOY
エルトンの最高傑作にして、ビルボード史上初というアルバムチャート初登場第一
位、という偉業を成し遂げたアルバムである。しかし、そんな派手な話題やジャケ
ットとは裏腹に内容はとても地味だ。少なくとも、70年代前半次々とヒットアルバ
ムを作ってきた彼のイメージからすれば。このアルバムは、彼と相棒の作詞家バ
ーニー・トゥピンの自伝的内容を持っているらしい。ただ、それ以上にアルバムに
収められた各曲に僕は今でも涙してしまう。どの曲も素晴らしく、詩情に溢れ、聴く
者の耳と心を引きつけずにはおかない。決してヒットを狙った訳ではなく、締め切
りに迫られて書かれた訳でもない、エルトンとバーニーの中から世に出るべくして
生まれてきた曲たちであるからこそ、今でもなお輝き続けるのだ。


043  GREATEST HITS/KC & THE SUNSHINE BAND
       グレイテスト・ヒッツ/KC&ザ・サンシャイン・バンド
GREATEST HITS
今となっては、あの騒ぎは何だったんだろうという気もするが、このKC&ザ・サン
シャイン・バンドは、70年代半ばヒットチャートを席巻した。1975年の「ゲット・ダ
ウン・トゥナイト」から1980年の「プリーズ・ドント・ゴー」までY1ヒットは5曲。他に
もヒット曲多数。軽薄と言えなくもないが、何とかのひとつ覚えのようなキャッチー
なリフの繰り返しと、単調とも言えるディスコビートは何故か身体が動き、心が浮
き立つような楽しさがあった。そういうバンドだったから、やはりベスト盤を聴くべ
きで、このアルバムはヒット曲満載で浮き世の憂さを忘れさせてくれる。ワンパタ
ーンだろうと何だろうと、これだけ楽しいのだからいいではないか、と開き直ってし
まう魅力が彼らの曲にはあった。


044  DRESSED TO KILL/KISS
       地獄への接吻/キッス(1975)
DRESSED TO KILL
僕等の世代がロックを語る時、キッスを避けては通れない。好き嫌いはともかく、
ロックに触れるきっかけがキッスだったという人は多いはずだ。何せ、音楽以前に
あのメイクで音楽誌のグラビアの常連だった訳だし。僕も最初はあのメイクを毛
嫌いしていた口だったが、大抵の人と同じように『地獄の軍団』を聴いてから、キッ
スが好きになった。見た目だけで毛嫌いする人を納得させるだけのものが『〜軍
団』にはあったわけだが、これはやはりキッスには出来過ぎというべきで(バカに
してる訳じゃありません)、日本でのデビュー盤となった『地獄への接吻』の方が僕
は好きである。単純だけど、とにかくカッコいい。「ルーム・サービス」なんか今聴
いても興奮してしまう。ハードロックはかくあるべし。


045  HOUSES OF THE HOLY/LED ZEPPELIN
       聖なる館/レッド・ツェッペリン(1973)
HOUSES OF THE HOLY
ツェッペリンというと、『U』でもなく『W』でもなく『聖なる館』が一番いい、などと言っ
たりするから僕はへそ曲がりだと言われるのだろう。しかし、このアルバムはツェ
ッペリンがハードロックから脱皮し、というよりもハードロックとしてくくられる枠を拡
大し始めた最初のアルバムなのではないか、と思う。ブルースからスタートしたバ
ンドが、ファンクなども取り込みハードロックの概念を変えていっているのがよくわ
かる。「永遠の詩」しかり「デイ・ジャ・メイク・ハー」しかり、「クランジ」なんか何やっ
てんだかよく分かんないけど凄い。アマチュアがやるツェッペリンのコピーは、初
期の曲がほとんどで、後期の曲が少ないのも納得できる。アマチュアの理解度を
越えているのだ。誰にも真似出来ない、唯一無比の世界がここにある。偉大だ。


046  TAILS/LISA LOEB & NINE STORIES
       テイルズ/リサ・ローブ&ナイン・ストーリーズ(1995)
TAILS
映画『リアリティ・バイツ』のエンドタイトルロールに流れた「ステイ」が大ヒットし、
一躍有名になったリサ・ローブの満を持してのファーストアルバム。バンド名はサ
リンジャーの小説から取ったらしい。なるほど、歌詞は分からないがどことなく文
学的な雰囲気がある。聴くだけで歌詞が重要なのでは、と思わせる音楽だ。ただ
し音楽性は幅広い。「ステイ」のようなアコースティックなバラードもあり、「タフィ」
のようにグランジばりに轟音ギターが鳴り響く曲もある。どの曲もリサのやや繊細
な感じのボーカルと、妙に心地よい不思議な響きのコードで飽きさせない。ソング
ライターとしても非凡な人だ。今後にすごく期待が持てる。アルバムタイトルを最
初に聞いた時、「物語」かと思ったら「尻尾」だった。このセンスもグッド。


047  GREATEST HITS/LITTLE RIVER BAND
       L.R.B.グレイテスト・ヒッツ/リトル・リバー・バンド(1983)
GREATEST HITS
オーストラリア出身のリトル・リバー・バンドは、今でも本国で絶大な人気を誇ると
いう。彼らは70年代終わりから80年代にかけ、毎年のように全米トップ10ヒット
を出していた。アルバムからの2曲目のシングルカットは必ず最高位10位、とい
う妙なジンクスもあった。とにかく、良い曲が多かったのだ。このベスト盤は彼らの
ヒット曲はほとんど収録されており、その珠玉のメロディにとことん酔いしれる事が
出来ること請け合いだ。本当に、なんでこんなにいい曲が作れるのだろう。オース
トラリア出身ながらウェストコースト風のコーラスとサウンドもいい。イーグルスが
やりそうな「遙かなる道」、ジャジーな「追憶の甘い日々」、ハードなツインギターが
カッコいい「ナイト・アウル」、ムーディな「レイディ」等々名曲のオンパレード。


048  MADONNA
       バーニング・アップ/マドンナ(1984)
MADONNA
「ホリデイ」がヒットチャートに登場した頃、マドンナという名前からして一発屋みた
いに思っていたが、どうしてどうして続く「ボーダーライン(名曲!)」をトップ10入り
させると、あれよあれよと言う間にスターダムにかけ上ってしまった。その後の活
躍ぶりは言うまでもない。スキャンダルさえ宣伝材料にしてしまうしたたかさは、ス
ケールこそ違うが、松田聖子みたい。そのマドンナの原点であるファーストアルバ
ムは今でも新鮮だ。ヒップホップ感覚のダンス系だけど、よく言われるようにストリ
ートの感触がある。ストイックなまでに無駄な装飾のないビートにのっかるマドンナ
のボーカルが魅力的だ。イメージで売る前の作品だけに、音楽で勝負しようという
決意が見える。もし、売れなかったら今頃はレアグルーヴの名盤だったかも。


049  RICHARD MARX
       リチャード・マークス(1987)
RICHARD MARX
ジョー・ウォルシュがギターを弾いている「ドント・ミーン・ナッシング」を聴いて、こ
のアルバムを買った。昔のウェストコースト風の人かと思ったからだが、最初に
聴いた印象は、ロック色の強いAORって感じだった。しかし、サビで炸裂する曲
作りのうまさとか、演奏のノリの良さとが気に入ってよく聴いていた。その後、売れ
たので、見る目の確かさを自画自賛したりしたもんです。でも、この人結局はデビ
ューアルバムが一番出来が良いのでは。歌を聴かせるバラードと、カッコいいロッ
ク曲とのバランスがすごく良くて、前者のお薦めは「エンドレス・サマー・ナイツ」、
後者のお薦めは「リメンバー・マンハッタン」といったあたりか。ハリのあるボーカ
ルも魅力的。80年代型サウンドだけど、古臭くない。


050  BAND ON THE RUN
     /PAUL McCARTNEY & WINGS
       バンド・オン・ザ・ラン/ポール・マッカートニー&ウィングス(1973)
BAND ON THE RUN
これぞ名盤。ポールのビートルズ以後の作品では文句なく最高傑作だろう。曲の
出来、演奏、アルバムの構成、どれをとっても100点満点。ついでにジャケットも
○。グラミー賞受賞も納得の作品である。ポールのアルバムには他にもヒット作
はあるが、やっつけ仕事みたいな曲も入ってたりして、必ずしも満点とは言い難い
。しかも、80年代中期以降のポール・マッカートニーに全く魅力を感じなくなってし
まった僕からすると、真にポールの名に恥じないアルバムはこれだけなのではな
いか、と思ってしまうのだ。「ブルーバード」なんて、ほんと名曲。デニー・レーンが
歌う「西暦1985年」も素晴らしい。政情不安なナイジェリアで録音したそうだが、
全体に漂う緊張感はそのせいか。とにかく、名盤。


前の10枚      次の10枚


「私選名盤100選」トップへ戻る