私選名盤100選

071〜080


071  GIVE US A WINK/SWEET
       甘い誘惑/スイート(1976)
GIVE US A WINK
若い人達には想像もつかないだろうが、このアルバムが出た頃のスイートの人気
は凄かったのである。「フォックス・オン・ザ・ラン」「アクション(デフ・レパードがカ
バーした)」といったシングル曲がラジオから流れない日はなかった、と言ってもい
い位だ。確かにパワフルな演奏にキャッチーなメロディ、というスイートの音楽は
親しみやすく、特にロックを知り初めしガキにはとても魅力的だった。かくいう僕も
その一人である。特徴あるコーラスがよくクイーンと比較されたりしたが、クイーン
よりは下世話で、不良っぽい雰囲気があり、男にも人気だったのはそのせいだろ
う。スイートは当初グラムロックのバンドとして認知されたが、このアルバム全体
に漂うケバい感じは、正にグラム出身というのが頷ける。


072  DECEPTIVE BENDS/10CC
       愛ゆえに/10CC(1977)
DECEPTIVE BENDS
10CCは、ビートルズ直系のポップセンスとイギリス人らしい諧謔趣味で優れたア
ルバムを発表し、高い評価を得ていた。その彼らが、方向性の相違から分裂し、
エリック・スチュワート、グラハム・グールドマンの2人組となって発表したのがこの
アルバムである。ちなみに、分裂したもう一組はあのゴドレー&クリームである。
名前くらいは聞いたことある人も多いだろう。10CCの名を継いだ2人はこれまで
どちらかと言えばポップセンス担当組で、このアルバムもいいメロディの曲が並び
素晴らしい出来映えだ。諧謔趣味がゼロになってしまったか、というとそうでもなく
以前ほどではないがそのユーモア精神は健在で、10CCは嫌いじゃないけどあ
のセンスについていけない、という人にはとっつきやすい内容になっている。


073  POWER IN THE DARKNESS/TOM ROBINSON BAND
       パワー・イン・ザ・ダークネス/トム・ロビンソン・バンド(1978)
POWER IN THE DARKNESS
70年代のパンクムーブメントから出てきたトム・ロビンソン・バンドだが、結局パ
ンクバンドという認識はされず、その結果正当な評価を受けることなく終わってし
まった、という感がある。最初からゲイだとカミングアウトしたのも、ゴリゴリのパン
ク支持者からは敬遠されることになってしまったのではないか。当時のパンクな
んて破壊衝動だけだったし。しかし、それではこのバンドがあまりに可哀想だ。曲
作りのセンスも良く、バンドサウンドも個性的でほんといいバンドだったのに。この
ファーストアルバムだって、ジャケットも含め、カッコ良く仕上がっている。「少数派
に力を」と歌うタイトル曲のように、普遍性のあるテーマも持っていたし、疾走感溢
れる曲が多くて、一気に気持ちよく聴ける。今聴いても、全然古臭くない。


074  TOTO
       宇宙の騎士/TOTO(1978)
TOTO
TOTOはセッションミュージシャンとして活躍していた人達が中心となって結成さ
れた。それまでは、セッションミュージシャンのグループというとジャズ系のバンド
が多かったが、彼らはロックバンドであり、その点がとても新鮮に感じられた。そ
してこのファーストアルバムは、彼らがセッションで培ってきた幅広い音楽性が十
分に生かされ、尚かつロックの醍醐味も味わえるという名盤である。この中からは
「ホールド・ザ・ライン」がヒットしたが、聴き物はB面一曲目の「ガール・グッドバイ
」だろう。シンセによるイントロからスリリングな演奏が展開される様は、彼らの技
術の高さと音楽センスが存分に発揮されている。楽曲のレベルも高く、3人のボー
カルによる個性の違いも楽しめる、飽きのこない一枚。


075  VOLUME ONE/TRAVELING WILBURYS
       ボリューム・ワン/トラベリング・ウィルベリーズ(1988)
VOLUME ONE
1988年夏頃、突如表れたこの覆面バンドのアルバムには、仲良しが好きな事だ
けやっている、という和気藹々としたムードが漂っていた。覆面バンドとはいえ最
初からメンバーはバレバレで、ジャケットの左からボブ・ディラン、ジェフ・リン、トム
・ペティ、故ロイ・オービソン、ジョージ・ハリスンの5人によるものである。この5人
で輪になってギターをジャカジャカ鳴らして作りました、という感じの曲がどれも楽
しくて良い出来だ。中心になっていたのはボブ・ディランのようで彼がリードボーカ
ルの曲が一番多いが、独裁という感じではない。とにかく、産業ロックが全盛だっ
た時代にこんなシンプルなサウンドにハーモニー、そしてカントリーやフォークの
楽しさを再認識出来るアルバムが出たというのも何やら象徴的な出来事だった。


076  YOU CAN’T ARGUE WITH A SICK MIND
     /JOE WALSH
       ジョー・ウォルシュ・ライブ(1976)
YOU CAN’T ARGUE WITH A SICK MIND
陽気なヤンキー・ギタリスト、ジョー・ウォルシュがイーグルスに加入する直前に出
したライブアルバム。FM番組のために録ったらしいが、これがとにかくカッコいい
のである。腕利きを揃えたバンドの豪快で迫力ある演奏をバックに、ジョー・ウォ
ルシュが歌にギターにノリまくっている。この人、上手いのか下手なのかよく分か
んないのだが、そこがまた魅力なのだ。選曲もジェイムズ・ギャング時代の曲やソ
ロアルバムからの代表曲を網羅しており、「ウォーク・アウェイ」や「タイム・アウト」
などはスタジオ盤より、こちらのライブテイクの方が数倍カッコいいくらい。豪快な
アメリカンロックが身上の人だが、何故かプログレ的展開を見せたりする分裂症
気味な所もたっぷり聴けるし、もう最高!! 言うことなしの快作。


077  MAKE IT BIG/WHAM!
       メイク・イット・ビッグ/ワム!(1984)
MAKE IT BIG
アイドル的な扱いをされていたワム!だが、ファーストアルバムでもその才能は
存分に発揮されていた。このセカンドアルバムは、その才能が底知れない物であ
ったことを思い知らされる力作である。3曲の全米Y1ヒットを出したが、その3曲
が全く違うタイプの曲というのもすごいし、ソウル風からオールディーズポップス風
の曲まで、様々なタイプの曲を書き歌ってしまうジョージ・マイケルはやっぱりすご
い。ただの傀儡ではないか、と疑われてしまったのも無理はない。この道何十年
という職業作曲家が腕によりをかけて作ったかのような音楽を、当時弱冠20才
そこそこの若造が作ってしまうのだから。カバー曲としてアイズレー・ブラザーズの
「イフ・ユー・ワー・ゼア」を取り上げるセンスも含め、脱帽。


078  READY AN’ WILLING/WHITESNAKE
       フール・フォー・ユア・ラビング/ホワイトスネイク(1980)
READY AN’ WILLING
ホワイトスネイクはこの頃が一番良かったと思う。ブルージーでファンキーでほん
とカッコ良かった。バーニー・マースデンとミッキー・ムーディのツインギターも息が
合ってたし、イアン・ペイスとニール・マーレイのリズム隊のノリも独特のスタイル
があった。デビッド・カバーデイルも絶好調で、そんな中で作られたこのアルバム
は当然名作なのである。「スイート・トーカー」「シーズ・ア・ウーマン」などのアップテ
ンポの曲は我を忘れるくらいカッコいいし、「キャリー・ユア・ロード」「ブラインドマン
」のような曲ではカバーデイルのボーカルが説得力たっぷりに迫ってくる。バッド・
カンパニーを彷彿とさせる所もあるが、ボーカルが似ているので仕方ないか。本
当の古き良きブリティッシュハードロック時代の最後の名盤と言っていいかも。


079  WILSON PHILLIPS
       ウィルソン・フィリップス(1990)
WILSON PHILLIPS
このグループは、ブライアン・ウィルソンの娘2人とジョン・フィリップスの娘1人とで
結成された。要するに二世グループである。その話題性もあってか、デビューから
2曲続けて全米Y1ヒットを出すという、これ以上ないスタートを切った。しかし、彼
女たちは単なる親の七光りではない、という事はこのアルバムを聴けばすぐ分か
る。自分達で手がけるという曲も粒揃い、心地よいハーモニーに3者3様のボーカ
ルスタイルも見事で、アルバムが大変質の高い物になっているのだ。特に、最初
のシングルとなった「ホールド・オン」など名曲で、「もう一日だけ頑張って」と歌う
歌詞も素晴らしい。打ち込み主体と思われる音だが、それを全く忘れさせる歌と
ハーモニーが圧倒的な存在感を誇る。やはり、ポップスは歌が良くなくちゃ。


080  FRAGILE/YES
       こわれもの/イエス(1972)
FRAGILE
ブリティッシュプログレの老舗、イエスがその人気と評価を確立したアルバム。今
聴いても、その斬新なアイデアと構成力は衰えない、というすごいアルバムなので
ある。前作あたりから大作志向が見えていたが、ここでは長い曲の間にメンバー
各々のソロによる小品を挟み込んでいる所が、斬新でありまた飽きさせない。要
するに聴かせ方がうまいのである。凡百のプログレバンドとイエスが決定的に違
うのは、ここではないか。長い曲でも最後まで聴く者を引っ張っていける様、あち
こちに工夫をこらしているのである。このアルバムは「ラウンドアバウト」「燃える
朝焼け」等ライブの定番曲を収録しているが、あまり有名でないA面ラストの「南
の空」も名曲だ。中間部のピアノとコーラスによる展開がプログレしている。


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